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光の魔法使い



「シャアァァイニングゥ!!!」


リアの右手が真っ赤に燃える。もとい、光る。

その手をおばあちゃんの膝に当てる。


おばあちゃんの膝は忽ち楽になった。


「リアちゃんの呪文は相変わらず、シャイニングの後に何か続きそうで続かないねぇ。」

「そうですねぇ」


渋い顔をするリアにおばあちゃんはふふふ、と笑ってお金を渡した。


「ありがとうね」

「まいど!」


14歳になったリアは自宅兼飯屋【父ちゃんの美人嫁ゲット飯】の軒先に椅子を置き、手から出る赤外線(だと思われる)で他人の膝や肩の痛みを治し、日々小銭を稼いでいた。

意外と遠くから来る客もおり、毎日10〜20人前後の客が来た。

30分馬に乗ってやってきて、肩を治して、30分馬に乗って帰る人は、家に着いた頃には、慣れない乗馬でまた肩が凝ったりしない?大丈夫?


リアは14歳という年齢による病のせいか、魔法の詠唱に気合いが入りすぎるところがある。

喉が痛くなってくるので、シャイニングは午前中で終わり。

それからご飯を食べて、ちょっと休む。

家の裏で畑いじりをしている母から、ちゃんと見える所で剣を振って、日が傾きかけたところで父と山に狩りに出掛けるのが日々の日課となっている。

なお、父の目的はキノコ、リアの目的はイノシシである。


ところで、お気づきだろうか、重さに拘りすぎてハンマーを振るしかなくなっていたリアが、剣を振っている事に。


そう。シャイニングで小銭を稼いだリアはこの度、鍛冶屋の偏屈じじいに背丈ほどの大剣を打ってもらったのだ!

巨大な面積のフラットな表面や、尋常で無い重量を誇るにも関わらず振り易いバランス感に、じじいの技術が詰まっている。


現在ローン返済中。


大剣と言っても、丸太だろうが岩だろうが超高熱で焼き切ることが出来るリアに刃は要らない。

実質金属塊である。

形は、菜切り包丁のような長方形の片刃包丁を厚く巨大にしたものとなっている。(但し刃は無い)

…金属塊である。

ただ、光の魔法を纏うイメージを上げる為、刃に当たる部分はピカピカに磨かれている。


それとは関係ない情報ですが、この鏡面研磨を施してくれた職人さんと、じじいの美人な娘がもうすぐ結婚します。

しょんぼり。


ローンの返済に行っても、もう会えないの。


しかも、身長は母より小さいまま止まって1年。もう諦めるしか無い。

悲しい事って、続くんですね。



かくしてリアはこの鉄塊を【聖剣ハダカ出刃包丁】と名付けた。

そのネーミングセンスに両親は苦笑いである。






ある日、リアが最後のシャイニングしていると、素敵な服を来た二人組が来た。


「リア・リトルスター、光の魔法使いですね?」

「違いますけど?」

「何で嘘吐くんですか?」


学園都市のスカウターだった。


正ヒロイン、リリア・リトルスターは家族で城市に遊びに行った際、馬車にはねられた子供に癒しの魔法を使い、それを見ていた学園都市関係者に見出される。


ーーもしかして、それが今日かな?


城市へ行かず、傷を癒さなければバレないかと思ったけど、普通にバレた。

自宅で五十肩を治しただけなのに。

歴史の矯正力ってやつかもしれない。



ーーそれにしても、


馬車にはねられる子は無事かな。

私がそこに居ない事でトリガーが引かれずに済むと良いが。


数日後ソフィア様は、光の魔法使いが見つかったうわさを耳にして「やっぱり存在するのね、リリア・リトルスター」とかオシャレなフラッシュの吹き出しで思うかな。

そして、アールデコとアールヌーヴォを混ぜたような、オシャレな花とかついてるフレームの中にロン毛の私の肖像画。


神絵師…!


「ふふ……」

「嬉しそうですね。」

「良かった良かった。」



さて、何故、学園都市は魔法使いを探すのか。


端的に危険なのだ。

危険なものは管理して上手に使わなければ。

真理である。

だから国は魔法使いに紐を付けたがる。

その管理を任されているのが学園都市。


危険なイレギュラーを一箇所に集めて、教育して、何名かは王立軍人となり、その他は元いた場所に返される。

ちなみに、リアの所へやって来た学園都市のスカウターさんも王立軍人である。学園都市のお掃除をする人や、売店の売り子さんなんかも魔法使いで一応軍人。

集められた少年少女魔法使いは学園都市で魔法の制御を学ぶ。


学園は魔法使いを育てるだけでなく、その人物の人間性や、魔法の特性を把握し、魔法で事件が起きたら即犯人特定という事に繋げていく狙いがある。


そんな感じなので、素敵な服のスカウターさんは平和を守る偉い人なのだ!


元いた場所に返された魔法使いは、日常生活に戻るが、一朝有事の際、国の招集に応じることになる。予備役の様な事だ。

その時は親も子も置いて、戦いに出る事になる。

魔法使いが大量に必要になる程の戦場ならばつまり、招集=命懸け。


母が嫌がるわけだ。


だから、魔法を使える庶民の女子は本当はもっといるけど、上手に隠して一般人のふりをしているんじゃあないかとリアは思っている。


ほら、女の子って賢いから…。


スカウターさんに魔法を見せるよう言われたので、肩にシャイニングしてあげたら喜ばれた。

初期の傑作魔法【アマテラス】も見せたが、あっハーイ。みたいな反応だった。


調書を盗み見たところ、


・治癒?肩こり限定

・物を燃やす←媒介が必要

詠唱:1〜3語


と書かれていた。


ーー物を燃やすって…!!その通りだけど、なんかもっと言い方ないの!?

ーー媒介が必要?…て事は何も無い所に火の玉出したりする奴がいるのか?


リアの火が出る系の魔法は、持ち物に炎を纏わせる、燃やす事に限られる。

触覚に依存し、空気に触っている、という"すり抜け"は出来ないので、自分から離れたところに火を出現させるのは無理。

火の方向のコントロールは出来ず、手から火炎放射を出して飛ぶ、みたいな事も出来ない。

それらは炎の魔法使いの魔法で、リアはあくまでも光属性ということか。


買い出しから帰ってきた父が、娘が役人に調書を取られている状況に驚いて、駆け寄ってきた。


「何なんだ、貴方達は!?猟の許可なら取ってますよ!!」

「お父ちゃん!そういうんじゃ無いから!」




存在がバレてしまった以上、学園都市への招集は避けられない。


が、学力不足は如何ともし難い。

という訳で、週に数日家庭教師が来る事になった。


この地域では寺院で読み書きを教えており、識字率は15歳でほぼ100%となる。

加えて、商売で鍛えた計算力と前世知識を持つ14歳のリアは、お貴族様的に10歳程度の国語と家督に絡む大人並みの算数が出来る。

理科も、この国ではそう重要視されていない為、かなり優秀、という事になる。

歴史は壊滅的。

マナーは絶望的。


文字の読み書きが出来ない魔法使いを集めて、お貴族様5歳程度からの勉強を始めるクラスも組まれるのだが、国語、算数、理科の知識に長けているという中途半端な学力を持っており、上にも下にも分類し難いリアには家庭教師が派遣される事になったのだった。


【リリア】は一体どうやって学力を身に付けたのだろうか?

生まれ故郷に頭のいい人でも居ただろうか…………



ーーあ、そう言えば家の看板の木工職人さん、字の読み書き得意だし、数学とか図形めちゃ強いわ。




体を鍛え過ぎたリアはリリアより身長が低い。

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