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カバリファング



一般的なイノシシである。

単にイノシシと言った場合はこれである。


畑を荒らす厄介者で、人間を恐れない。


所謂地球でいうアカカワイノシシの様な姿に、ゾウのような牙が上向に生えている。

牙はあまり綺麗な色ではないが、加工が比較的容易で、(やじり)に使えるため、武器屋にあげると喜ばれる。

2本渡せば生のフルーツがモリモリ乗ったケーキの一切れくらいなら買える、くらいのお小遣いになる。



何故、そんな話を今、出すのか。

イノシシが1年生女子寮の中庭に入ってきたからだ。


学園都市の敷地内には訓練と食糧調達を兼ねた山フィールドがあり、その向こうが海である、というのは前述の通り。

そして、広大な面積を占める。

なので、野生動物は多い。


とは言え、イノシシが出れば、普通は寮まで来る前に何処かで食糧に変えられてしまう。

しかし、時間帯の問題なのだろうか。


イノシシ、一年生女子寮の中庭で、チビ大剣使い&健康体操メイドさんと相対する、朝。

リアもニコレットもイノシシから目を離さず、イノシシは、一気に2人を仕留めるためか、突進のタイミングを狙っているようだ。


「やっちゃっていいですか?」

「何をですか!?」


リアはニコレットから素早く距離を取る。そして、


「オーイ!こっちですよ!」


ぱんぱんと手を叩いてイノシシの注意を自分に向けさせる。


イノシシがリア目掛けて突進する。

突進を始めるタイミングは読めないが、これだけ距離があればインパクトのタイミングは、


計れる。


インパクトの瞬間に


「シッ!!!!」


鋭く息を吐きながら牙を掴み、体のバネをフル活用して力の向きを逸らす。

イノシシの突進力を利用して、斜め後ろに跳ね上がって、空中で半回転。

頭から


落とす!!!


ドムッ!!!

着地と共に鈍い音がして、イノシシは気絶した。


この倒し方を練習しようとおもったら、最初は追突されても、最悪重傷で済む、オスのウリボー(カバリファングの子供)で練習するといいよ。

メスのウリボーは牙が短くて掴めないからね。

メスのウリボーに会ったら全速力でジグザグに逃げよう。

ジグザグは大きめに。


正ヒロインおねえさんとの約束だよ!


「やりましたか?」


ニコレットがリアに駆け寄る。


「まあ、はい。このまま川に運んで捌いてしまいたいんですけど、ナイフとかあります?」

「いえ。今はお嬢様がいらっしゃらないので携帯していませんね。」


……あ、うん。

お嬢様がいる時は武器携帯という事は、やっぱりバトルメイドなんだね。

ただ、朝の体操をする健康オタクじゃないんだね。


突然。


リアの足元に大振りなナイフが刺さる。


「うわ!!!!ビックリした!!!」

「大丈夫ですか?」


ニコレットは流石というか、飛んできたナイフから距離を取っていた。

恐らく、2人の様子を見ていた誰かが、ナイフが無くて困っていると気付いて貸してくれたのだろう。


「ひえー。怖ぁー。」


地面に突き刺さったナイフを抜く。リカッソの部分に、向き合った2羽のデザインが違う鳥が彫金されている。

この家紋、絶対に見たことがある。絶対に。

家紋を持っているような高貴な家柄の学園生といえば、BクラスかAクラスか。

Aクラスの学園生とは一応顔馴染みではあるが、家紋というのは滅多やたらに使う物ではなく、授業外で関わるような間柄でもない限り、基本的に見る機会は無い。

あと、仲良しといえば、Cクラスの貧乏田舎貴族・プンプンだが、彼女の家紋は鳥では無い。


前世知識やらSFCからもたらされるソフィア情報やらで知っている家紋はあるが、


ーー誰ん家の家紋だっけ?上級貴族はドラゴンだし、プンプン家は確か蝶だし、ライザ様は…知らないなぁ……


ニコレットはじめ、各家のメイド達にも所属を示す持ち物があるだろうとは推測できるが、見た事は無く、


「あ、」


リアは思わず、ちょっと光った。


見回したところで、本人は姿を見せないのだろうし、大声を張って礼を述べても、まだ寝ている人もいるだろうし。

コの字のコで言ったら2画目の棟の方を向いて会釈した。



なお、処理したイノシシを食堂に持って行ったところ、小銭に変わる事は無かったが、イノシシの処理が適切だった事により食堂のみなさんの好感度が上がった。


「何たってリアっちょは食堂の後継ぎですからね!」


食堂の手伝いに来ていたミスティアは自分の事のように得意気だった。






ニコレット「学園都市での生活や、遠征の際。…使用人がその所属を代表して主人に付き添う場合は家紋入りの万年筆を携行しているのが一般的です。

 学園都市の中では使用人のドレスのデザインで所属を見分ける事ができます。そう思って見ると意外と違う物ですよ。

 華やかな場に付き添った使用人が着飾る場合、家紋の入った短いグローブを利き手とは逆の手に着用しています。これで仕様人である事と、利き手が分かるので、お互い給仕の邪魔をしないよう気を配るのです。」


リア「他人ん家の制服を覚えて……利き手を判断して……た……大変すぎる……」


ニコレット「安心してください!それが出来なくても(やしき)付きの使用人としては充分やっていけますから!」


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