表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

ソフィア様の夕べ



雨、降ってる時、魔法の授業どうすんの?


って、思うじゃん。


先生が上空にバリア張ってんの。

凄くない?

バケモノじゃない?

このレベルの使い手、1学年が全クラス同じ時間割で魔法の授業を受けてるわけだから、少なくとも4人は居るんだよ、この学園。

やばくない?


『やばいんだってば』


空に張られたバリアの向こうから、家庭教師のナターシャ先生が答えてくれた気がした。


先生元気かな?


「それで、癒しを使えない光の魔法使いは、どういう魔法を使うんですの?」


美しい声で現実に引き戻される。


「物を燃やす、爆発させる、光らせる、です。氷の魔法使いはどのような魔法をお使いになりますか?」

「物を凍らせる事と、氷の塊を出現させる事ができますわ。」


本日、リアとソフィアの仲良し(ただしなるべく立ち入らない)ペアである。


2人はドカドカと魔法を撃つ。


「空中に氷の足場を作る、みたいな事ってできないんですか?」

「重力に逆らって氷を浮かせるのは魔法でないのではなくて?わたくし、それは超能力だと思いましてよ。」


「ただ、」とソフィアは思考を巡らす。


「地面から階段を作れば似たような事はできましてよ。」

「じゃあ、最悪家が無くなっても、氷のお城に住めば良いですね。」

「あら!それは思い付きませんでしたわ!」


使用人達と、オルテスと、マリーと、自分が人里離れた氷のお城で楽しく暮らす様子を想像して、そんな没落なら全然有りだなぁ、とニッコリしてしまうソフィアだった。


リアは冗談だと言うタイミングを逃した。


「ところでリアさん、わたくし、先日ミリィさんから絵本をお借りしましたでしょう?直接お返ししたいのだけど、貴女の部屋にお邪魔して宜しくて?」

「いいですよ、ミリィ呼んでおきます。」





そして放課後。


コンコン。


「やあリアっちょ!勉強教えて!」

「あれ、ホライゾン?…良いけど。」


ホライゾン・バンダーウェイ。

ミリディを、待っていたら、別のクラスメイトが来た。


暫くしてまたコツコツとドアを叩かれる。


「リアっちょ!来たよ!!」


ミリディ。


「らっしゃいミリィ。」

「やあ!ミリィ。」

「あれー?何でホライゾン?」


2人がノートを広げたところで、またドアを叩かれる。


「リアっちょさん、勉強を、教えて欲しいです…。」


ピッピ・アストリッド・ニイマン。


「リアっちょー!お茶分けてー!」


アリス・ミラー。


「リアっちょ、お菓子食べる?食べよう?」


ミスティア・ダイニール。


卓にノートを広げるミリディと、ホライゾンと、ピッピ・アストリッド。

カップを準備するアリス。

クレープを焼くミスティア。


美少女がキッチンにいる時の海賊船みたいになってるじゃん?


「リアっちょ、あーし暇なんだけど、何か手伝う事無いか…あーっ!!みんな居るじゃん!!!」


ラニ。


「美少女がキッチンにいる時の海賊の行動そのものじゃん!」


部屋がかなりぎっしりしている。



コンコン。


「もーーー、あと来てないの誰ーーー?」



ソフィア様でした。




「何なんですの、これは?」


リアのCクラスメイトと思しき集団が、片手にお茶、もう片手にシロップで煮たクレープの乗った皿を持って、ソフィアとそのメイド?に注目している。


「私にもわかりません。ミリィ、誰かに言った?」


全員が首を横に振る。


「ですって。急にみんなやって来て。…あ、クレープ食べますか?ミスティアは本業、菓子職人ですよ。」


ミスティアがビシッと手を挙げる。

不思議な甘い良い香りがするクレープ。

とんでもなく食欲を唆る。


「夕食前なので遠慮しておきますわ。」


遠慮しつつも、ソフィアはごくりと生唾を呑む。


「香り付けにイシャイラズの皮とタネを使いました。体に良いので、気が向いたら仰ってくださいね!いっぱい焼いたので!」

「あー、ミスティア、さては山フィールド入ったな?不良じゃん!」

「あーーー!そういう事言うとラニはおかわり無しだよ!」


きゃっきゃとミスティアとラニがいちゃついている。


「あの〜、ソフィア様、せっかくなので質問コーナーでも、していきませんか?」


胡散臭いピンクカリアゲが胡散臭くニッコリ笑うので、ソフィアもニッコリと返す。


「せっかくの意味が分かりませんわ。」

「議政者には、庶民からの支持が大切だと思うんですよ。ファンサ大事。」

「議政者って…。」

「意外と的を射た発想ですね。」


ソフィアの前でリアに睨みを効かせていたマリーが意外にも納得している。

それで暫し逡巡して、「マリーが言うなら」と渋々ソファーに腰掛けるソフィア。後ろにマリーが控える。


「ソフィア様がみんなの質問に答えてくれるって!」というリアの言葉に、ソフィア様ファンの集いofC組(略してSFC)は、卓を挟んで向かいのソファーをセッセとどかし、かたまって床に座る。


「ハイ!」


そして、ビシッと勢いよく挙げられた手を、マリーが選ぶ。


「それでは、クレープ職人の貴女、どうぞ。」

「ミスティアです!今日は何の御用でここにいらしたんですか?」

「ミリィさんにお借りした本を返しに参りましたの。」


マリーが前に出て、ミリディに紙の包みを渡す。


「ごめんなさい、わたくし、絵本を落として傷を付けてしまって。新しい物を用意したのだけど、許して頂けるかしら?」

「ひっひぃぃーーーーっこッッ光栄です!!家宝にします!!!」


おお〜!ひゅー!やったじゃーん!とSFCが沸く。

ミリディがガチ泣きして、ホライゾンに介抱されている。


「ハイ!」

「貴女、どうぞ。」

「ぴぴぴぴぴぴっぴアストリッドです。ど、どうやったら魔法が上手くなるでしょうか?」

「そうですわね、魔法が上手い、の定義は人それぞれだと思いますけど、わたくしは、工夫して有効に使える事だと思いますの。ですから、あらゆる知識が魔法の上達に繋がると思いますわ。たくさん本を読んでね。」

「はっ!!はい!」


おおお〜

拍手が起こる。

ピッピ・アストリッドはポーっとしている。


「はい!!」

「ミリィさんを抱っこしている貴女。」

「はい!ホライゾンです!読書家という事でも有名なソフィア様ですが、お勧めの本はありますか?」

「この学園の本はまだあまり読めていないんですの。ですから、何をお勧めしたら良いのか…。好きなジャンルで宜しければ、息抜きに読むのは旅行記が好きでしてよ。」


おおお〜。

恐らく、明日からSFCに旅行記ブームが来る。


「ハイ!」

「では、貴女。」

「アリスです!お気に入りのお茶を教えてください。」

「今は水出しの緑茶に凝っていましてよ。色々試しているところで、まだお気に入りの銘柄は見つかっていませんの。」


おおお〜。

連続するおおお〜に、ちょっと気持ちよくなっているソフィアである。

庶民の飲み物の話題で親しみやすさを出していく主人の機転に、マリーも得意げである。


「ハイ!」

「リアさん、どうぞ。」

「ハルンハルト王子との馴れ初めが聞きたいです!」


おおお〜

ソフィアが何も言っていないのに、既に拍手が起きる。

「ご存知でしょうが!良い加減になさって!」と、SFCが居なければ怒っているところである。


「ご想像にお任せしますわ。」

「御成婚の折にはどうせ嫌と言う程語らされるのですから、練習だと思って。」

「食い下がりますわね。」


「なにとぞ!」と食い下がるリアの様子が、本当にふざけているとしか思えない。

聴衆の手前、顔には出さないが、イラッとするソフィアである。

しかし、


「一理あります。」

「マリーまで。」


SFCは痛いほど輝く視線をソフィアに向けてくる。


語るだけ語って、結婚しなかったら道化が過ぎるし、結婚もしないと思う。


だがしかし、道化師のように踊ったところで、ここに居る人間はいずれ、ここでだけの繋がりの庶民であるし、どんな道を選ぼうとも、自分で選んでそうなるならば、何を恥じる事があろうか。



ソフィアは観念して口を開く。


「お話しますわ。」








リア「ミリィ、ミリィ、ソフィア様がミリィに絵本返したいらしいから放課後、私の部屋に来て。(小声)」

ミリディ「ヒョエエエエエエエエ!!!!!!(高音)」




みんな、どうして感づいたのかさっぱり分かりませんね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ