蒼い巨体と新たな剣
「お、おはようリリー、ソフィア」
「おはようございますゲイン様」
「おはよう......」
ソフィアが俺のことをじっと見つめてくる、その瞬間、ソフィアが俺の右腕に抱きついてくる。
「ちょっ!?」
「なっ!?」
俺とリリーの驚く声が響く。
「なっなななななにをやってるんですか!?」
リリーが甲高く声を荒げる。
「私も昨日、ゲインと一緒に寝た......これでリリーと同じ土俵に立った......」
「へ!?ゲイン様!それは本当なのですか!?」
ソフィアに挑発されたリリーがすごい形相で迫ってくる。
「え、う、うん、昨日の夜中にソフィアがベッドに入ってきて一緒に寝る形になったけど......」
「むむむむむ〜!」
リリーは子供っぽく頬を膨らませた後に俺の左腕に抱きついてくる。
「リリー!?」
「なっ......!」
「ふん!私だってソフィア様にゲイン様は渡しません!」
「望むところ......」
二人の間にバチバチと音が聞こえる......。
「ふ、二人とも落ち着いて!とりあえずギルドに行こう!」
俺は少し強引に二人を剥がす。
「うぅ......」
「あぁ......」
二人は少し残念そうに声を漏らし、渋々ギルドに向かう準備をする。
ギルドに着いた俺たちはクエスト掲示板の前に立ち、貼ってあるクエストを見つめる。
「今日はなんのクエストを受けようかな〜」
「そろそろ軽い討伐のクエストを受けてみてもいいかもしれませんね」
リリーがそんな提案をした途端にソフィアが一枚の依頼書を持ってくる。
「このクエスト......どう、かな?」
「リャーナ平原に大量発生したベビースライムの指定数討伐依頼?」
ベビースライム討伐の依頼
・ベビースライム 50匹
討伐数によって報酬金増額有
「そうだね、ベビースライムくらいだったら余裕で討伐できそうだ」
「ではクエストの手続きにいきましょう、丁度カペラ様が受付にいらっしゃいますよ」
リリーが受付の方を見ながら言う。
「そうだね、じゃあ行こうか」
俺たちはクエストカウンターに居る金髪のエルフの受付嬢、カペラの元へ向かう。
「ベビースライム討伐のクエストですね、手続きをして参りますので少々お待ちください」
「お願いします」
「ところでソフィアは何か魔法は使える?」
カペラが手続きをしてくれている間、俺はソフィアに魔法が使えるかどうかの確認をした。
「うん、一応使えるよ」
「どういう魔法ですか?」
「えっとね、私の持ってる虚数空間の中で作り出した武器を空間と空間を繋げて放つ魔法、亜剣魔法って魔法」
ソフィアは自身の魔法の性質を説明する。
「違う空間内で作った武器......その武器って強度とかを自分の意思で変えられるの?」
「うん、魔力量を変えれば大きくしたり小さくしたり、硬くしたり、しなやかにしたらもできる」
「凄い魔法ですね!」
「扱い方が難しくてまだ完全には使いこなせてないんだけど......」
ソフィアは顔をほんのり染めて照れ隠しをした。
ソフィアの魔法について話しているとカペラが手続きを終えてこちらに来る。
「お待たせいたしました、クエスト開始の手続きが終わりましたので、指定数以上を討伐次第クエスト完了の報告してください」
「はい、わかりました」
「では、気をつけて行ってらっしゃいませ」
俺たちはギルドを後にしてペルシの近くの平原、リャーナ平原を目指す。
「確かここから南東に進めばベビースライムの発生場所なんだけど......あ、ほらもう見えるよ」
現在地から500Mほど先の丘の上に大量の青い水の塊のようなものが見える。
「ほえぇ〜、ここから見ても凄い量いますねぇ......」
緑色の草原に青いスライムはとても目立つ、故に遠くからでも肉眼で視認できる。
そして丘に着きスライムの大群を間近で視認できるほどの位置まで近づいたときにソフィアが口を開いた。
「ねぇ、この辺りで私の魔法の試し撃ちしてみてもいい、かな?最近あんまり使えてなかったから一度試しておきたくて......」
「俺もどんな魔法か見てみたかったし、リリーもいいかな?」
「はい!私も見てみたいです!」
「ありがと......じゃあやるね」
そう言ってソフィアは目を瞑って言葉を紡ぐ。
「私の刄は魔の刄......善に仇なす者に制裁を、悪に縋るものに懲罰を、顕現するは無限の剣............」
「亜剣魔法!!!」
少女の紡ぐ言葉が途絶えた瞬間、少女の周囲の空間に亀裂が生じ、様々な形をした無数の剣が穿たれる。
「きゅぴぃぃぃぃぃ!!!」
穿たれた無数の剣がベビースライムを貫く。
「凄い......」
隣でリリーが口を開けて驚いている、俺もリリーもギルドで聞いてはいたが、いざ実際に見てみるとその光景に唖然とする。
「良かった......上手くいくか心配だったけどなんとかできた......」
ソフィアはそっと息をはいて胸を撫で下ろしている。
「ソフィア凄いね!俺も負けてられないな!」
「私も負けられません!」
俺とリリーはソフィアに負けじとベビースライムを討伐する。
「たぁっ!」
俺は魔法を使わず、短剣で1匹ずつ討伐する。
「氷結魔法!!」
リリーは魔法の練習も兼ねているようだ、ベビースライムを凍らして内部から砕くことによってベビースライムの核ごと砕いているらしい。
ベビースライムを討伐し始めてから数刻たったあたりで辺りに異変が起きる。
「凄い地響き......」
体の内側から震えるほどの地響きにリリーが言葉を漏らす。
「なに、あれ......」
あまりの巨体にソフィアも立ち尽くしている。
体長約10M、青い、いや、蒼い巨体の中心には赤く輝く核が見える、この特徴はおそらく......。
「蒼大女王!?」
スライムクイーン、スライムの繁殖期になると一部のスライムが急成長して進化すると言われている、おそらく今回のベビースライムの大量発生もこいつの影響だろう。
「ゲイン様!魔法を!」
「わかった!はぁっ!」
リリーが俺に魔法を使うように叫ぶ、俺はそれに同意し、地を蹴り、スライムクイーンの正面に迫り、左手でその柔らかな体に触れる。
「消滅魔法!!」
紫紺の輝きを放つ、消滅するスライムクイーンの体組織、しかし手応えはない。
「戻った!?いや、ベビースライムか!?」
まだ残っていたベビースライムが消滅したスライムクイーンの体組織となり結合する。
「ゲイン様!?ベビースライムはまだ大量にいます!このままではジリ貧です!一度撤退を!」
リリーが冷静に撤退の指示を下す。
「わかった!」
俺はその指示の通り一度撤退し、リリーとソフィアの元に戻る。
「どうする?俺の消滅魔法を最大出力で放っても核までは届かない、第一消してもすぐに結合するぞ」
「私の氷結魔法でもあの大きさでは......」
八方塞がりだと考えているとソフィアが口を開く。
「私に考えがある......」
「本当!?」
「うん、私が虚数空間で武器を作れることは話したよね......?」
「あぁ、言ってたね」
ソフィアが少し置いて続ける。
「私が今から虚数空間内で短剣を作る、ゲインにそれが使えれば多分勝てる、だからそれを作るための時間を稼いで欲しい......」
「どれくらいでできそう?」
「3分あれば作れる......」
「わかった、リリーもいける?」
「はい!もちろんです!」
リリーは元気よく返事をしてから、ソフィアの方を向く。
「ソフィア様、時間稼ぎはお任せください!その代わり、ちゃんとしたものをお願いしますよ?」
「うん、わかってる......」
リリーの言葉にソフィアは軽く微笑みながら返す。
「よし、行くよ!リリー!」
「はい!ゲイン様!」
俺とリリーが魔法でスライムクイーンの体を消し飛ばしながら時間を稼ぐ。
「凍てつけ!」
リリーは氷結魔法で周りのベビースライムを次々と凍らせていく。
「ハアァ!!」
俺も消滅魔法で少しずつスライムクイーンの体組織を消滅させる、リリーのおかげで回復速度が鈍くなっているためやりやすい、が、核に至るまではいかない。
そんな攻撃を続けていると防戦一方だったスライムクイーンが動く。
「な!?」
スライムクイーンは自身に取り込んだベビースライムの核を一つに固めて巨大な弾丸として放った。
俺はそれを紙一重で避けきる、が、体勢を崩し、落下する。
「がはっ!」
「ゲイン様!」
リリーが俺を抱えて下がる。
「ごめん、リリー」
「全く、無理はしないでくださいね?」
10Mほど離れたときにソフィアが叫ぶ。
「ゲイン!完成した!今そっちに空間をつなげるから受け取って!」
「わかった!」
俺の正面に白い亀裂が生じる、そこから現れたのは紫紺の短剣。
「これは......?」
「それは魔力伝達のいい素材で作った短剣、そこにゲインの魔力を流し込めば刀身に魔力が集まって消滅魔法で斬ることができるかもしれない!」
「消滅魔法で......斬る......わかった!やってみる!」
そう言って俺はソフィアが作った短剣を逆手に持ち、草原を駆け抜けた。
言われた通りに短剣を持つ右手に魔力を集中させる。刀身が紫紺に輝き、眩く光りだす。
「はぁっ!」
再びスライムクイーンの正面に飛び上がり、その紫紺の刀身を振るう。
「消滅刀剣!!!」
第7話!どうでしたか?
本当は今日中にもう一話出すつもりだったのですが、質が下がってしまうと思い、二話にしました、すみません!なので明日も二話投稿となります、よろしくお願いします!