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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
1章 出会いと光
7/18

新たな仲間と変わらない日常


「ソフィア、立てる?」


 白髪の少女、ソフィアに手を差し伸べて尋ねる。


「うん、ありがとう......」


 ソフィアはしなやかな手で弱々しく俺の手を握り、ゆっくりと立ち上がる。


 横でリリーが不満そうにしているが、少し我慢してもらおう。


「あの......私の事、どうする......の?」


 ソフィアはまだ少し震えながらか細く尋ねる。


「えっと、ソフィアはどうしたい、かな?」


「え......?」


「いや、これから行く所はあるのかなって、もしあるならそこまで送るし......」


 俺は怯えさせないように優しい口調で話す。


「でも、もしどこにも行く所がないなら......」




「俺たちと一緒に来ない?」


 白髪の少女は翠玉色の瞳を丸くして俺を見つめる、リリーが呆れながら口を開く。


「ゲイン様はそういう性分なのです、まったく......これではライバルが増えてしまうではないですか......」


 途中から何を言っているかわからなくなったが、呆れていることだけはわかった。


 リリーに軽く悪態を突かれながら再びソフィアに目を向けて尋ねる。


「どう、かな?ソフィアが良ければ、なんだけど......」


「いい、の?私、迷惑かけちゃうかも、だよ?」


「構わないよ、逆に俺の方が迷惑かけちゃうかもしれない、でも、君のことを守れるように努力するよ」



「だから、俺たちと一緒に来てくれ!」



 ソフィアの震えが止まる、弱々しく握っていた手に力が入り、ソフィアの顔が明るくなる。



「うん......!一緒に、行く!」



 少女は元気な声でゆっくりと返事をする。






 新たな仲間を迎えた俺たちはとりあえずまた服屋に来た、なんかデジャブ感があるけど......気のせいだろう、多分。


「どう、かな?似合ってる......?」


 試着室のカーテンが開いた、また天使がいた。


 フリルのついた白いワンピース、太ももまで伸びる黒のソックス、足首の部分に黄色いリボンがあしらわれた白いブーツ、ワンピースの腰部分には大きめの青いリボンが結ばれており、首元には紺色のフリルの襟、そして黄色いリボンが結ばれており、白く滑らかな髪に留めてある暗い色の四つ葉の髪留めが映える。


「すごく似合ってるよ!」


「あ、ありがと......」


 ソフィアは顔を赤く染めながら小さくお礼を言う。






 服屋を後にした俺たちはペルシの宿屋に戻り、もう一つ上の広い部屋を借り、日数の更新をした、流石に二部屋借りたいと意見を申した所二人の少女から却下された為、仕方なく諦めた。


「結局3人部屋か......」


 俺は昨日のようなことが起きないように祈りながら二人の少女と共にペルシの商店街に向かった。




「すごい、いい匂い......」


 ソフィアが目をつむって商店街に並ぶ屋台から香る食べ物の香りを感じている、すると二人分の(・・・・)可愛らしい音が聞こえる。


「「あ」」


「ぷふっ」


「ゲイン様!笑わないでください!」


「笑わないで......!」


「ご、ごめんごめん、お詫びに好きなもの食べさせてあげるから、ほら、行こ?」


 二人は頬を膨らませながら俺の両隣を歩く、妹ってこんな感じなのかななんて思いながら俺も歩みを進める。




 ひとしきり食べ物を買った俺たちは道の端にあるベンチに腰掛けて各々の買ったものを食べる。


 俺はサンドウィッチ、なかなかに分厚く、ハムやレタスのサンドウィッチはもちろん、ボアの肉を油で揚げたものを挟んだサンドウィッチなど、種類は様々だ。


 リリーはパンケーキ、ふわっふわの生地が三段重なっており、トロトロのメープルシロップに数種類のベリー、真っ白のクリームで飾られている。


 ソフィアはワイバーンの串焼き、ドラゴン特有の硬い肉を串に刺して焼いただけのもの、しかし焼くことによって肉本来の味や脂が楽しめるらしく、満足感も大きい、小さな口ではむはむと苦戦しながら食べる姿は小動物のようで可愛らしい。


 腹ごしらえを済ませた俺たちは、宿屋に戻って温泉に入ろうという話になり、宿屋へと歩みを進める。


 落ちる陽が微笑むように俺たちの背中を照らす。









「良かった......この部屋はベッドが三つある......」


 宿屋の温泉から上がり、部屋に入った俺は不安の種であった人数分のベッドを確認して安堵する。


「ゲイン様と一緒に寝られませんね、残念です......」


 隣でリリーが少し残念そうにしている。


「リリー、ゲインと一緒に寝たの?ずるいよ......」


 反対側でソフィアがリリーに嫉妬している......。


「あれは仕方のないことだったから......」


 ソフィアをなだめつつ就寝の準備をする、窓の外を見ると闇の世界に光る街の灯りが星々のように輝いていた。


「じゃあそろそろ寝よっか」


「そうですね」


「うん......」


 二人がベッドについたことを確認して俺は魔力灯の灯りを消し、静かに布団に入り目をつむる。



 目をつむってからしばらくすると布団に誰かが入ってきた、またリリーか?と思い目を向けるとそこに居たのは長い白髪の少女、ソフィアだ。


「ちょ、ソフィア!?」


「リリーだけずるいから、私も......」


 リリーが起きないよう小さな声で喋る。


 ソフィアは俺の背中に腕を回してガッチリと抱きつき、そのまま眠ってしまう。



(結局こうなるの〜!?)



 心の中でそんな叫びが響いた。

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