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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
1章 出会いと光
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少女の剣と少年の目覚め



 また光が見えた。


 でも違う、以前の光ではない。


 冷たい光、でも、どこか暖かい光。








 少女が紡ぎだした言葉。


 それは氷結の魔法、あらゆる生物の生命活動を鈍らせる最大の攻撃。


「やぁ!」


 リリーは自身の魔力を練り上げて作り出した氷塊を大蛇に穿つ。


「ギ、ギギギ、ギシャァァァァ!!!!」


 氷塊は大蛇の胴を貫き、その場で冷気を噴出し、大蛇の胴体を凍結させる。


 サーペント種と言っても大元は蛇と同じ、故に変温動物である蛇に対して氷結魔法は無類の強さを誇る。



「終わりにします!」



 リリーの体内を巡る魔力の濃度が急激に上昇する、駆け巡る魔力はうねり、混ざり合い、放出される。


 リリーの頭上に現れる大氷塊、その大きさ、質量ともに最大級の氷塊が形成、形状変化し、巨大な氷の剣へと変わり、少女の静かな声が響く。



『我は凍て付く女王なり、我が魔力は氷結なり、我が(やいば)は汝を貫き、永劫の眠りへと誘うであろう......』




久遠の氷剣(グラキエースグランス)!!!」




 凍てつく剣は少女の合図によって大蛇を斬り裂く、大蛇の傷口は出血することなく、負傷した箇所から冷気を纏い、凍りつく。


「眠りなさい、暗く冷たい闇の中で、永久に......」


 少女の冷血な声がルーム内に響く。





「ゲイン様......ヴェレーノサーペントは倒しました、ですが、貴方の傷はどうすれば......」


 リリーは壁にもたれているゲインに近寄り、問いかける。


 少年の体は醜い程にズタズタ、全身から血が吹き出ており、腕や脚などの関節はあらぬ方向に曲がっている、しかし、小さくだが呼吸はしている、文字通り虫の息だ。


「おそらくポーションをかけてもダメ......です、よね......」


 ポーションはある程度の回復はできるが万能薬ではない、傷の治療はできても骨の再生まではいかない。


「一体どうしたら......?これ、は?」


 リリーはゲインのポーチの中に、紫色の液体が入った容器を見つける。


「これは!エリクサー!?なぜゲイン様が!?」


 霊薬エリクサー、魔族の濃密な魔力とエルフの知能が産んだ万能薬である、ポーションと違い、経口摂取で骨の再生、失った血液の急生産など、致命傷に絶大な効果を誇る万能薬である。


「これゲイン様に飲ませればゲイン様の傷は治る......、でも、ゲイン様は飲めるほどの体力がない......、し、仕方ありません、えぇ、仕方ありませんとも、く、口移しで飲ませるしか......」


 リリーは小さい声で言い訳をし、半ば嬉しそうにエリクサーを口に含んだ。


(ゲイン様......失礼いたします!!)



ちゅぷ、とくとくとく



 ルーム内に水の跳ねるような音が響く。


 無事にエリクサーがゲインの喉を通り、全身へと巡る、停止しかけていた生命活動が再開し、治癒速度の暴走によって傷が塞がり、血液の急生産により心臓が忙しなく鼓動する。


 ややあって、ゲインの目が開く、全身の傷は治っているが、脳に痛みの感触が残っている、それがとれるまでは立ち上がれないだろう。


「ゲイン様!よかった!」


 リリーの強い抱擁、普段はなんともないが、今の状態だと脳に響く。


「ちょ、リリー!痛い!痛いって!」


 俺が制止をかけてもリリーは抱きしめる手を緩めない、むしろ強くしてくる、それほど心配をかけてしまったのだろう、後でしっかりと謝らなくては。


「リリー、助けてくれてありがとう、今度は俺が助けられちゃったね」


 冗談まじりに俺は笑いかける。


「では今度はまたゲイン様が私を助けてくださる番ですね?」


 リリーが眩しい笑顔で答える。


 そうだ、今度こそ俺がこの子を守る、まだ力が及ばないかもしれない、またこの子の手を借りてしまうかもしれない、でも、いつかは俺の力でこの子を守りたい、いや、守ってみせる。









「ゲイン様、もうよろしいのですか?」


 黒髪の少女が俺に心配を投げかけてくる、当然だろう、ついさっきまで全身ズタボロの瀕死だったのだから。


「あぁ、大丈夫だよ、少し歩くくらいなら大丈夫......痛っ!」


「ほら!やっぱり痛いんじゃないですか!あまり無理をなさらないでください!」


 リリーは俺に目くじらを立てて小さい体を揺らしながら叱りつける。


「あはは......本当にごめんね、リリー」


「まったく......こんなに心配かけさせたんですから、もう少し謝罪の意思を見せてほしいですね?」


「うっ、わ、わかったよ......、じゃあリリーがしてほしいことなんでもするよ?」


 途端にリリーの目が光りだす、言ってはいけない言葉を言ってしまった気がする。


「言いましたね?ゲイン様?その言葉、絶対に忘れないでくださいね!」


 少女は俺の方を向いていたずらっぽく笑う、長い黒髪がふわりと風に遊ばれる。



 そんなやりとりをしながら俺たちはペルシに帰る、足並みを揃えて、笑いあいながら。

第5話!いかがでしたか?


今回は前半がリリーの初戦闘、後半がゲインとリリーの変わらない日常的なのを描かせていただきました!

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