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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
蒼海都市と鳴動する洞穴
17/18

二人の逆鱗と静かな海


 潮風が吹き抜ける店内、装備の整った冒険者やガタイのいい漁師が酒を酌み交わし、絶えず笑い声が聞こえる。


 ゲイン達は海から少し離れた大きめの店に入り、港町ならではの海の幸を堪能していた。



「クラーケンの刺身美味い!身が甘い!」



「ん〜!お寿司もおいひぃれふぅ〜!」



「はむはむ......いい焼き加減、美味しい......はむはむ」



 ゲイン達は各々が頼んだ刺身や寿司、焼き魚などの新鮮な海の幸を頬張り、幸せそうな顔を浮かべる。


 ポルトでは町中の飲食店全てが水揚げされたばかりの魚、交易で渡ってきた珍しい魚などを扱っているため、鮮度もよく、味も絶品とのこと。



「はぁ〜......美味しい......これが新鮮な海の幸か......」



 山育ちのゲインが新鮮な海の幸に感動していると、奥の席から大柄の男がやってくる。



「なぁそこの貧弱そうな冒険者さんよぉ?ちょいと今晩そこの嬢ちゃん達を貸してくれねぇか?」



「は?何言ってんだ?」



 あまりに突然の事にゲインは呆れた顔で聞き返す。



「だからよぉ、俺たちのところが男だけじゃつまんねぇんだよ、なぁ、嬢ちゃん達、そんな貧弱そうな奴より俺らと楽しいコトしようぜ?」



 男がそこまで言うと、男の眼前に剣が現れ、両足が凍り付く。



「な、なんだこれ!お、おい!なんだよこの剣と氷は!?」



 状況がわかっていない男が情けない声で喚きだす。



「ゲイン様が......」



「貧弱、そう......?」



 二人の少女は怒りの感情を抑えることなく俯き出し、静かにそう呟く。


 そして二人の少女は男の方へと向き直り、鋭い眼光を突きつける。



「ひぃっ!」



 男はその凍て付くような眼光に萎縮する。


 二人の少女は鋭い眼光を突きつけたままたんたん



「二度とその汚らわしい顔でゲイン様のことを貶さないでもらえますか?」



「ゲインよりも弱いくせにしゃしゃり出ないで、気持ち悪い」



「うぅっ!」



 怖気付いた男はリリーが氷を解除すると同時に一目散に店を出て行ってしまう。


 男の連れも焦った表情で会計を済ませ、男を追いかけていく。



「ふ、二人とも大丈夫......?」



「はい!......まったく、ゲイン様の何を知っててあんなことを言うのでしょう......」



「ゲインのこと、悪く言うの、許せない......」



 リリーとソフィアは怒りの表情を出しながらテーブルに並んでいる食べ物をパクパクと食べ進める。


 そんな二人が心強いと思いながらゲインは刺身を頬張る。





 晩ご飯を済ませたゲイン達は食後の運動がてら浜辺に来ていた。


 夜空に煌めく星と月の光が海に浮かび、鏡合わせの夜空を眺めているかのような幻想的な景色が一面に広がる。



「綺麗です......」



「うん、綺麗......」



 リリーとソフィアはその美しい夜の景色を眺めて言葉を溢す。


 夜の帳が降りた海、昼とは違うゆったりとした流れの水面、寄せては返し、海水のぶつかる音が静かに響く。


 ゲインはその残響を耳に刻んでから二人の少女の方を向いて口を開く。



「肌寒くなってきたし、そろそろ戻ろっか?」



「はい!風邪をひいてしまうといけないですしね」



「潮風で髪の毛がべたべた......」



 ゲインの言葉に続いてリリーとソフィアが宿へと歩みを進める。





 ゲイン達は宿に戻り入浴を済ませ、部屋へと戻り、少しぐうたらしていた。



「はぁ〜お風呂上がりの布団ってなんでこんなに気持ちいいんだろう......」



「うん、わかる、すごくわかるよゲイン......」



 布団にくるまってるゲインとソフィアがだらけた口調で言葉を交わす、するとリリーが目くじらを立ててソフィアを起こす。



「もう!ソフィア様!お布団にくるまるのはいいですけど、ちゃんと髪をとかしてからにしてください!」



「むぅ、めんどくさい......」



「ダメです!女の子なんですから!」



「はぁい......」



 まるで小さな母親と子供を見ているような光景を微笑みながら眺めるゲインは布団から飛び起き、窓の外、まだ賑わっている町を眺める。


 町を彩る魔力灯の灯り、酒の席での笑い声、暗い空から一転して昼のように明るい町を眺めていると、リリーが呼ぶ声がする。



「ゲイン様、そろそろ眠りましょう、ソフィア様も限界のようですので」



「あ、うん、わかった」



 そう言われてふとソフィアの方に目をやると、すでにソフィアは眠りの態勢に入り、一瞬でも気を抜けば眠りについてしまいそうになっていた。



「じゃあ灯りを消すよ、おやすみ、二人共」



「おやすみなさい、ゲイン様」



「おや、すみ......」



 ゲインは魔力灯を消し、自分のベッドに潜り、二人が眠りについたことを確認してからゆっくりと目を閉じ、沈みゆく意識に身を委ねる。

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