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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
蒼海都市と鳴動する洞穴
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蒼い水平線と新たな町


 馬車に乗ってから数十分が経ち、マルネ森の中央部に差し掛かると、周囲の気配が怪しくなる。



「リリー、ソフィア、ちょっとごめん」



「ふにゅう......」



「んっ......」



 ゲインは自分の肩に頭を乗せて眠っていた二人の少女に詫びの言葉を入れて立ち上がる。



「すみません、ちょっと止まってもらっていいですか?」



「どうした兄ちゃん、なんかあったか?」



 声をかけられた厳つい御者は馬車を止め、ゲインの方を向く。



「ここからすぐ先に魔物の群れがいます、先に行って撃退してくるので少しだけ待っていてください」



「別にかまわねェが、一人で大丈夫か?」



「はい、すぐに戻ってきます」



「気を付けろよ、兄ちゃん!」



 ゲインは御者に一礼をしてから大地を蹴り、森林の冷たい空気を全身で受けながら疾く駆ける。



「この辺りに気配が......!」



 気配を辿っていくと、そこにはゴブリンの小部隊が野営をしていた、火を焚き、簡易的なシェルターまで作ってある。



「ゴブリンか......あいつらは知能が高い、あんまり時間も無いし、練習がてらに魔法でケリをつけるか......」



 ゲインはゴブリンの野営地から少しだけ離れた所にある高木から見下ろし、魔力を練り上げる。


 右手に現れる紫紺の光、狙いを定め、野営地に目を向けると、ゴブリンたちは呑気に食事をしている、その食事が自分たちの最後の晩餐になるとも知らずに......。



消滅魔法(ラディーレンルーク)!!」



 放たれた紫紺の光は野営地直下に広がり、突然の出来事に何もできないゴブリンは情けない声を上げることなく消滅する。



「ふぅ......結構うまくいったな......」



 ゲインは少し呼吸を整えてから馬車へと戻る。



「おう!兄ちゃん!どうだった?」



「ゴブリンの小部隊がいました、取り敢えず撃退しておいたので、大丈夫だと思います」



「おう!若いのにやるじゃねェか!」



 厳つい御者はゲインの背中をバンバンと叩きながら言う、その後に手綱を持ち直してから大口を開けて言う。



「うし!早く乗れ!もう少しでポルトだ!」



「はい!」



 ゲインはすぐに屋形へと戻り、いまだに眠っているリリーとソフィアの向かい側に座る、すると馬車が動き出し、再び森の中を駆けていく。





 しばらくして、森を抜けて広い平原へと抜けると、大きな門に囲まれた街とその向こう側の壮大な海原が見える。



「リリー、ソフィア起きて!」



「ふ、みゅう......着きましたかぁ......?」



「うぅん......もう、着いた、の?」



 目を覚ました二人の少女は潮風が巡る草原、目の前に広がる緑と蒼のコントラストを眺め、寝ぼけていた目に光がさす。



「海です!ゲイン様!海です!」



「綺麗......!」



「本当だね〜!」



 果てしなく広がる水平線とそびえる海原の根に広がる都市を眺めながら馬車に揺られる。




 少ししてポルトの検問を通り、馬車を降りる。



「じゃあな、兄ちゃん達!しっかりやれよ!」



「ありがとう、おっちゃん!」



 ゲイン達はここまで乗せてくれた厳つい御者に別れを済ませ、まずポルトのギルドへと向かう。


 広い街路を歩いていると、ペルシでは見なかった水産物や、海でとれる鉱石を使ったアクセサリーなどを売っている店が多く見える。


 街全体が一つの大きな店かのように様々な物を売る店が街全体に設けられている。



「綺麗です......」



「うん、すごく綺麗......」



 リリーとソフィアは沢山のアクセサリーが並べられた店を見ている。



「まだ時間もあるし、少し寄って行こうか?」



「いいんですか!?」



「うん、いいよ」



 そう言ってゲイン達はアクセサリーショップへ入り、首飾りや指輪などを眺める。



「わぁ〜......素敵です......」



「この宝石、なんだろう......」



 リリーとソフィアは各々が気になるアクセサリーや宝石を眺めている。



「へぇ〜、この辺の海にはこんな綺麗な宝石があるんだ〜」



 ゲインはショーケースをながめながら感嘆の声を上げる。



「ん?この髪飾り......」



 ゲインはショーケースの中にある髪飾りに目を引かれた。


 銀色の羽を模した形の髪飾り、羽の根本部分に埋め込まれた少し大きめの蒼い宝石。


 髪飾りの数は二つある、ゲインは少し考えてから店員を呼ぶ。




「ゲイン様、遅いですね......」



「うん、どうしたんだろう......」



 リリーとソフィアはひとしきり眺めた後に店の外でゲインを待っていた。


 少ししてからゲインが店から出てくる。



「ごめん、待たせちゃって......」



「どうしたんですか?なにか良いアクセサリーでも?」



「うん、ちょっと待ってね......」



 そう言ってゲイン様は紙袋の中から先程の髪飾りを二つ取り出し、リリーとソフィアに手渡す。



「これは......?」



「プレゼント!丁度綺麗な髪飾りが二つあってさ」



 ゲインが笑顔でそう言うと、リリーとソフィアが驚いた顔で尋ねる。



「いいんですか!?」



「いい、の......?」



「うん!受け取ってもらえる?」



 再びゲインが笑顔でそう言うと、リリーとソフィアも笑顔で返す。



「はい!ありがとうございます!」



「ありがとう......!」



「どういたしまして!」



 二人は髪飾りをまじまじと見つめてから、リリーは右に、ソフィアは左に髪飾りをつける。



「うん、二人ともよく似合ってるよ!」



「えへへ、ありがとうございます」



「あり、がとう......」



 その後ゲイン達は店を後にし、ギルドへと向かう。

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