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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
1章 出会いと光
13/18

余韻と感謝


「「かんぱーい!」」


 陽気な音楽と客の笑い声で賑わう酒場の一角、俺たちはランクアップの祝杯をあげていた。


「ゲイン様、改めておめでとうございます!」


「おめでとう、ゲイン......!」


「二人ともありがとう!」


 乾杯をした後にリリーとソフィアが改めてランクアップのお祝いをしてくれる。


「私たちもゲイン様の足を引っ張らないようにしなくては......」


「うん、もっと強くならなきゃ......」


 俺がランクアップしたことによって二人のやる気も上がっている。


「頼りにしてるよ、二人とも?」


「はい!」


「うん......!」


 そんな二人に激励を送り、飲み物の追加注文をする。




 少しの時間が経って、あたりが少し暗くなってきた、涼しげな風が空を仰いでいる。


「二人とも、そろそろ帰ろうか?」


「そうですね、宿に戻ってゆっくりしましょう」


「お風呂......入りたい......」


 宴もたけなわ、俺たちは酒場を後にし、宿へと戻る。





 宿に着いた俺たちはまず、汗と今日の疲れを流すために宿の温泉へと向かう。








「ソフィア様ってスタイルいいですよね......」



 リリーは隣で体を洗っているソフィアの水滴を弾く玉の肌と豊満な双丘を眺めながら言う。



「ふふ、リリー、羨ましい......?」



「なっ!わ、私だってすぐに育ちます!」



 そう言ってリリーが自分の物とソフィアの物を見比べているとソフィアが不敵な笑みを浮かべる。



「だといいけどね、ふふっ......」



「なんですかその笑いは〜!」



 二人しかいない浴場に少女の声が響く。









「ふぅ......やっぱり温泉はいいなぁ......」



 体を洗い終えた俺は自分しかいない湯船にじっくりと浸かって息を漏らす。


 爪先から体の芯、頭の中が惚けてしまうほど心地の良い湯に揺られ、温もりが思考を埋めていく感覚に身を委ね、星の輝く夜空を眺める。



「ランクアップ、したんだよな......」



 いまだに信じられない自身のランクアップ、冒険者として旅立って間もない田舎者の自分、そんな自分が冒険者としての階段を一つ上がった。



「リリーとソフィアにも改めて感謝しないとな......」



 何も一人で階段を登ったのではない、二人の少女の手助けがあってのものだ。


 自分一人では成し得ることのない小さな偉業。



「もっと強くなって、本当に二人を守れるようにならないと......」



 そう考えてから俺は勢いよく湯船から出る、肌からのぼる湯気が風に煽られ、陽炎のように揺れる。



「よし!そろそろ部屋に戻るか......」



 広々とした浴場に独り言を置き、脱衣所へと向かう。







 部屋に戻ると二人の少女が先に戻っていた。



「ゲイン様!少し長いお風呂でしたね?」



「うん、ちょっと考え方しててさ」



 トトトっと駆け寄って尋ねるリリーに微笑んで返しながらベッドに座る。



「ねぇ、二人とも、ちょっとこっちにきてもらえるかな」



 俺は二人の顔を見て手招きをする。



「どうしましたか?」



「......?」



 二人は少し困惑しながらこちらに歩み寄ってくる、俺は二人を見合わせてから二人の頭を優しく撫でる。



「ゲイン様!?」



「ゲイン......!?」



 二人は顔を赤く染めながらさらに困惑する、俺はそんな二人に頭を撫でたまま話す。



「俺がランクアップできたのは二人の助けがあってこそだ、ありがとう、二人とも」



「えと、あの、うぅ......」



「あぅ......」



 お礼の言葉まで言われた二人の少女はうまく言葉を紡げず、赤面したまま下を向いてしまう。


 そんな二人を優しく見つめてから俺はゆっくりと口を開ける。



「ねぇ二人とも、これから先、俺はまた二人に頼ってしまうかもしれない、どこかで躓いて、二人に助けてもらうかもしれない、それでも俺についてきてくれる?」



 二人は俺の言葉に驚いたような素振りを見せ、やがて破顔する。



「当たり前です!ゲイン様のおそばにいることが私の喜びですから!」



「リリーの言う通り、私もゲインのそばにいたい、ゲインの隣にいさせてほしい......な」



「もちろんだよ、二人とも、改めて、これからもよろしくね?」



「はい!」



「うん......!」



 俺は二人の心情を聞いた後、手をどけようとしたが、二人が無理やり手を掴んで頭においたのでしばらく撫で続ける羽目になった。


 正直腕が疲れたが、まぁ、二人が幸せそうなのでよしとしよう。




 ややあって二人のなでなでタイムも終わり、皆眠くなってきたので灯りを消し、ベッドに潜る。


 目を閉じて意識を眠気の海に投げようとしたところでまたモゾモゾと動く影が「二つ」。



「ちょっ!?リリー!?ソフィア!?」



「ソフィア様!なぜいらっしゃるのですか!」



「リリーこそ、なんで......?」



「私はただゲイン様に添い寝しようと......」



「私も同じ......」



 二人は顔を見合わせ、何かを思いついたのかこちらを向いてニヤリと笑う。



「え、なになに、どうしたの?」



「ゲイン様」



「え?」



「お邪魔、します......」



「え!?」



 そう言って二人の少女が俺の両脇にすっぽりと収まり、両腕をガッチリと抱きしめる。



「ちょ!?」



「おやすみなさい、ゲイン様〜......」



「おや......すみ......」



 俺の驚きをものともせず二人は眠りにつく。



(なんかどんどん悪化してる気がする......)



 二人の髪の匂いに胸が破裂しそうなほどに動いているが、俺は知らないふりをして必死に眠りにつく。

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