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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
1章 出会いと光
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魔法の応用とランクアップ


「ゲイン様、傷はもうよろしいのですか?」


「うん、もう充分に治ったよ」



 リリーに心配された俺は腕を振って大丈夫という旨を伝える。


「3日ぶりくらいのクエストなんですから無理はしないでくださいね?」


「わかってるって」



 そう、俺たちは今日からまたクエストに行く、とはいえ、俺はまだ治りたての身、無理はできない。


「ソフィアも準備できた?」


「うん、行けるよ......」



 ソフィアも準備ができたようなので俺たちはギルドへと向かう。






「今日はなんのクエストを受けようか......」


「ゲイン様のお体のことを考えて、採取クエストはどうでしょう?」


「それがいいと思う......」



 ギルドについた俺たちはクエスト掲示板を眺めながら話し合う。


「でもやっぱり討伐クエストが......」


「まだ完全に治っていないのでダメです!」



 討伐クエストを提案したがリリーに却下されてしまった。


「まったく、ゲイン様はもう少し自分のお身体を大切にしてください!」


「あはは......ごめんごめん」



 リリーには頭が上がらないな、そう思いながら掲示板を見ていると金髪エルフの受付嬢、カペラがこちらに近づいてくる。


「ゲイン様、貴方に昇格クエストの許可が降りました」


「昇格クエスト!?」



 昇格クエスト。


 名前の通り冒険者としてのクラスを上げるための特別なクエスト、これを受けてランクが上がると、これまでより難易度の高いクエストを受けることができる。



「どうなさいますか?」


「う〜ん......少し考えさせてください」


「かしこまりました、では、お決まりでしたら私の方までお越しください」


 そう言ってカペラはギルドカウンターへと戻る。



 俺は二人に昇格クエストを受けてもいいか尋ねる。


「リリー、ソフィア、俺は受けたいと思ってるんだけど、どうかな?」


「ゲイン様はまだ体の調子が万全ではありません、内容を確認してから決めるべきかと」


「私もそう思う......」


 二人は完全に否定はせず、まず内容の確認をすることを勧めてきた。


「そうだね、じゃあカペラさんの所へ行こうか」


「はい!」


「うん」






 俺たちはカペラさんのところへと向かい、昇格クエストの内容について尋ねる。


「カペラさん、昇格クエストの内容を教えてもらってもいいですかね?」


「はい、今回の昇格クエストはDランクへの昇格ですので、ボア10頭、リトルボア15頭の討伐となっております」


「ボアか......」


 俺は少し考え、二人の少女の方を向く。


「そのくらいなら今のゲイン様でも行けるかと」


「うん、ボアだったら大丈夫だと思う......」


 二人は少し考えてからそう答えてくれる。


「ありがとう、二人とも、じゃあカペラさん、昇格クエストの受注、お願いします!」


「承りました、では、少々お待ちください」


 クエスト受注の手続きを行うため、カペラは裏へとまわる。


「ゲイン様!く・れ・ぐ・れ・も!無茶はしないでくださいね!たとえ相手がボアだとしても!」


 受注手続きを待っているとリリーが目くじらを立てて釘を刺してくる。


「あ、あはは......わかってるよ、無茶はしない、約束する」


 俺はその圧に浅い笑みを零してから真剣な顔で約束を交わす。



 そんな話をして少し経つとカペラが手続きを終えてこちらに戻り、笑顔を浮かべて言う。


「お待たせいたしました、これより昇格クエスト開始となります」


「ありがとうございます!」


「あ、あと昇格クエストはクエストを完了したかどうかを判断する監視官が必要なので、今回は私が同行させていただきます」


「はい、わかりました!」


 そういうとカペラはカウンターから出てこちらに向かってくる。


「では参りましょうか」


「はい!」


 俺は初の昇格クエストに胸を躍らせてギルドを出る。





 俺たちはカペラ同行の元、リャーナ平原に来ていた、新芽の爽やかな香りと優しい風が肌を撫でる。


「ボアの主な生息地はこの辺りとなっております」


「わかりました、じゃあもう?」


「はい、ボアを確認次第討伐をしてください」


 カペラはバインダーを抱えながら淡々と話す。


 俺たちはその言葉を聞いた途端に戦闘態勢をとる、俺は短剣を構え、リリーは魔力を巡らせている、ソフィアは目を瞑って虚数空間内で武器を作り出している。



「来た!」


「私が先行させていただきます!」



 二頭のボアを確認した俺は声を上げて知らせる、すると即座にリリーが氷結魔法を繰り出す。



氷結魔法(グラキエスグラース)!!』



 ボアの足元が凍りつき、超速で突進していたボアの動きが止まる。



「次、私......」



 ボアの動きが止まったことを確認したソフィアが(ゲート)を繋げる。



亜剣魔法(グラディスパティウム)!」



 ソフィアの持つ虚数空間と繋げる(ゲート)が無数に発生し、空間の亀裂から虚数空間での作り出された無数の剣が放たれ、ボアの胴体を核ごと貫く。



「やっぱりソフィアの魔法すごいな......俺も負けてられない!」



 俺は地を蹴り、加速する、平原の風を己の身体で斬り裂くように走り出す。



「ハァッ!」



 俺は逆手に持った得物で素早くボアの身体を斬り裂く、鮮血を浴びることなく走り去り、次々と湧くボアを斬り裂いていく。



「ゲイン様!一度下がってください!」



「わかった!」



 リリーの合図で一度後衛へと下がる。



「ゲイン様、ボアは目標数討伐しました、あとはリトルボアです」


「リトルボアか、そろそろ出てくるんじゃないかな」


「というと?」



 リリーが首を傾げた瞬間に数KM先からおそらく50頭はいるであろうリトルボアの群れがこちらに向かって猛スピードで突進してくるのが確認できた。


「あれは!」


「うん、リトルボアは群れの中のボアが一定数倒されると一斉に向かってくるんだ、だから作戦がある、リリー、あのリトルボア全体を凍らせることってできる?」


 リリーは少し俯いて考えてから答える。


「もう少し数が減れば足元だけならいけます!」


「充分だ、ソフィア、あのリトルボアの数を少し減らしてもらえるかな?」


「了解、剣を作り直すから少しだけ時間が欲しい......」


「わかった、作り終わったら教えて」


 俺の言葉の後にソフィアは目を瞑って魔力を巡らせる。


「よし、リリーも定位置について魔力を貯めておいて欲しい、足元さえ凍らせてもらえればあとは俺がなんとかする」


「わかりました!どうか無理はしないでくださいね?」


「わかってる」


 そう言うとリリーはすぐに走り去っていく。


 リリーが位置についたのを確認して、俺も小高い丘の上へと登る。


「ゲイン、行けるよ......」


「了解、リリーはどう?」


「いけます!」


 二人の準備が整ったところで俺は一息置いて声を上げる。



「ソフィア!」



「任せて......!」



 俺の合図と共にソフィアがリトルボアの群れ付近に空間を繋げ、剣を放つ。


 リトルボアの数が少し減ったところでリリーに合図を送る。



「リリー!頼む!」



「わかりました!!」



 合図を受け取ったリリーは範囲内に入ったリトルボアの足元を急速に凍てつかせる。


 リトルボアの動きが止まったことを確認した俺は左手に溜めていた魔力を全て解放する勢いで振るう。



消滅魔法(ラディーレンルーク)!!!』



 振るわれた紫紺の輝きは手元に魔法陣を描かず、動きの止まったリトルボアの群れの真下に描かれる。


 リトルボアの群れが眩い光に包まれ、跡形もなく消える、地形を残して、小さい猪の群れのみを消し去った。



「うまく、いったぁぁ......」


 俺はリトルボアが全て消滅したことを確認して膝から崩れる。


「ゲイン様!」


「ゲイン!」


 二人の少女が俺の方へ駆けてくる、そしてリリーが俺に尋ねる。


「先程の消滅魔法はいったい?」


「あれはね、あの周囲の座標と地形の情報を軸に消滅魔法を移動させて遠距離での発動を試してみたんだ」


 俺は軽い特訓をしながら消滅魔法の応用について考えていた。


「ソフィアの魔法を見て浮かんでさ、なんとかできないかなって考えてやっとできたんだ」


 ソフィアの亜剣魔法のようにあらゆる場所に消滅魔法を使えないか、そう考えてから俺は練習をしていた。


「そんなことが......ゲイン様流石です!」


「ゲイン、すごい......」


「ありがとう、二人とも」


 そんな会話をしているとカペラが笑顔でこちらへと歩んでくる。


「おめでとうございますゲイン様、指定数討伐のためクエスト完了となります、一度ギルドへ戻りましょう」


「はい!」




 俺たちはギルドへと戻り、すぐにカペラがクエスト完了の手続きを終えてこちらへと向かってくる。


「改めておめでとうございます、ゲイン様、これよりゲイン様はDランクへと昇格いたしました」


「ありがとうございます!」



 俺はランクアップの喜びを噛み締めてギルドを後にする。


「ゲイン様!おめでとうございます!」


「ゲイン、おめでとう......!」


「ありがとう二人とも!」



 リリーとソフィアが賛辞を送ってくれる。


 するとリリーが笑顔で口を開く。


「ゲイン様!祝杯をあげにいきましょう!」


「そうだね......じゃあどこか酒場でもいこっか」


「はい!」


「うん......!」



 俺たちは祝杯をあげるために酒場へと向かう、笑いながら、足並みを揃えて......。

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