二人の少女と沈む夕陽
「ふんふんふ〜ん!」
黒髪の少女は鼻歌まじりに俺の横にぴったりとついて歩いている。
「随分とご機嫌だね、リリー?」
「当たり前です!ゲイン様とデートしているんですもの......」
少女は頬に手を当ててわざとらしく横揺れする。
「私もいるんだけど......」
白髪の少女が反対側から不満そうに声を漏らす。
「むぅ、ゲイン様と私の二人きりの方が良かったのに......」
「ソフィアも仲間なんだから、三人仲良く、ね?」
「わかってますよぅ......」
こちらも不満そうなリリーをなだめながら俺たちはペルシの大通りを歩いている。
昨日約束した通り、お詫びとして二人の行きたい場所に行くことになった。
「まずはリリーの行きたいところからいこっか、ソフィアもそれで良い?」
「うん、いいよ....」
ソフィアは少し不満そうだがとりあえずは良いらしい。
「じゃあ、リリーはどこに行きたい?」
「はい!私、あそこのアクセサリーショップに行きたいです!」
元気よく返事をしたリリーはすぐそこのアクセサリーショップを指差し答える。
「了解、じゃあ行こっか」
「はい!」
アクセサリーショップについた俺たちはショーケースの中にある指輪やネックレスを眺める。
「わぁ〜、すごく綺麗です......」
リリーも嬉しそうに眺めている。
「............」
「ソフィア?」
ソフィアが見つめる先には青い宝石が埋め込まれた銀の指輪。
「欲しいの?」
「い、いいよ......高そうだし......」
俺は少し考えてリリーの方は向かう。
「リリーはお気に入りの物見つけた?」
「はい!これなんですけど......」
リリーが指差す先にあるのはソフィアが見ていたものと対照的とも言える赤い宝石が埋め込まれた指輪。
「確かにすごく綺麗だね」
「はい!いつかこの指輪をつけてみたいです......」
俺は再び考えてから二人を呼び出す。
「リリー、ソフィア、先に店の外に行っててくれるかな?少し用事があって......」
「わかりました!」
「あんまり遅くならないでね......?」
俺は二人を一度店の外に行かせてからレジに向かう。
「お待たせ、ごめんね?」
「いえ、そこまで待っていませんよ、ところで、何をしていたのですか?」
リリーが首を傾げて尋ねる。
「えっと、二人とも、右手を出してもらえるかな?」
二人は俺の言葉に戸惑いながら右手を出してくる。
そして俺はソフィアとリリーの右の人差し指に指輪をはめる。
「これって......」
「私が見てたやつ......」
リリーとソフィアが自分の指にはめられた物を見ている。
「俺からのプレゼント、喜んでもらえると嬉しいんだけど......」
「はい、はい!とても嬉しいです!」
「うん、すごく嬉しい......!」
二人とも喜んでくれている、これなら俺も買った甲斐があったという物だ。
「でも、よろしいのですか?その、お金は......」
「気にしないで、十分手持ちは持ってきてたし、二人の喜ぶ顔が見れるなら、ね?」
俺は微笑みながら二人に言う。
「もう......そういうの、ズルイです......」
「ゲイン......ずるい......」
「えぇ〜......」
二人とも頬を膨らませながらぷいっとそっぽを向く。
「次はソフィアの行きたいところだけど、どこかある?」
俺はソフィアに向かって尋ねる。
「どうしよう......とくに、無い......」
ソフィアは口に指を当てて俯く。
「どこでもいいよ?」
俺はソフィアに優しくいうと、ソフィアが顔を上げる。
「じゃあ......」
俺たちはソフィアの導くままに歩いていると、リャーナ平原の小高い丘に着いた。
「ここ......」
「ここがソフィアの行きたい場所?」
「うん......」
ソフィアは頷き、風に揺れる髪に触れながら立っている。
「風が気持ちいいです!」
平原をめぐる涼しげな風を全身で感じながら楽しそうにリリーが言う。
「本当だねぇ〜......」
「ここ、ここで座って待つ......」
俺がリリーの言葉に頷いているとソフィアが足元を指差して座る。
俺とリリーも言われた通りにその場で座る。
しばらくすると陽が沈み出し、平原一帯を茜色に染めて行く。
「わぁ......綺麗です......」
「一面赤色に染まってるね......」
俺とリリーが感傷に浸っているとソフィアがゆっくりと口を開く。
「ここ、私のお気に入り......」
「いいところだね」
「うん......」
そんな言葉を交えてから三人で落ちる夕陽を眺める。
すると俺の膝に重みを感じた、下を見てみると夕陽に照らされて煌めいている白髪の少女、ソフィアだった。
「あの、ソフィア?どうしたの?」
「少し、甘えたい......ダメ?」
「だ、ダメじゃないけど......」
涙目のソフィアにたじろぎながら反対側を向くと、顔を真っ赤にした黒髪の少女がいた。
「もぉ!ソフィア様ばかりずるいです!私もゲイン様のお膝で寝たいです!」
「早い者勝ち......行動の遅いリリーが悪い、ふふ」
「もー!もー!」
勝ち誇った顔をしながら俺の膝に顔を擦り付けるソフィアに煽られるリリー。
そんな二人を眺めながら俺は沈む夕陽に想いを馳せていた。