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消滅魔法で正義を翳す〜悪だと思う?正義はあるよ?〜  作者: 姫宮涼明
1章 出会いと光
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強大な悪と敗北の味


「レイズ......」


「あぁ!レイズだ!俺は光を求めて来た!眩しいくらいの正義の光を持つお前を塗りつぶしてやりたくてよぉ〜!」


 レイズと名乗る男はニヒルな笑みを浮かべながら両手を広げて言う。


「言っている意味がわからない、お前は何がしたい?」


 俺は言葉の意味が理解できず、睨みつけながら問う、するとレイズは笑っていた顔から一変して真顔になる。



「だからよぉ、言っただろ?光を潰すってよぉ、何度も言わせんなッ!」



 刹那、レイズが右手で持っていた赤い槍をこちらに向けて投げる。



「ッッ!!」



 俺はその槍を間一髪でよけきる、が、槍の風圧で少し耐性を崩してしまう。



「おらァ!」



 敵はその隙を見逃すほどヤワではないらしく、よろけた俺の脇腹に素早く拳をねじ込んでくる。



「がはっ!」



「ゲイン様!」


「ゲイン!」



 岩を砕くようなパンチをまともに食らってしまった俺は空気を吐き出す、少し離れていたリリーとソフィアの悲痛な声が周囲に響く。



「なんだぁ?正義の光っつうもんはそんなによわっちぃ光なのかぁ?」



「ふざ、ける......な......ごはっ」



 肺がやられたのかまともに息が吸えない、叫ぼうとしても声が出てこない、言葉が出ない。



「はっ、まぁいい、今回は挨拶をしに来ただけだ、次に会うときにゃまともな戦いができるくらいにはなってろよ、じゃねぇと()にどやされるからよぉ......」



「ま、て......」



「じゃあな、正義の光」



 その言葉を最後に男はまた飛び立ち、俺の意識は暗い闇の中へと沈む。




 暗い闇の中、俺の体だけがある、何も見えない、俺は歩く、暗い世界をただ一人で。



「ここは......」



 歩いていると何かが見えてくる、眩しい......光、優しい、二つの光。



「....ン......ま!」



「ゲイ......さ...!」





「ゲイン様!」



 目が覚める、眩い光が目に入り、ぼやけていた視界がゆっくりとはっきりしていく。



「リ、リー?」



「ゲイン様!」


「ゲイン!」


 二人の少女が抱きついてくる。


「ここは......宿、か」


 俺は二人の頭を撫でながら周囲を見渡す。


「何が、あったんだっけ......っ!!」


 思い出した、レイズと名乗る謎の男に、負けたんだ。


「よかった......ゲイン様、丸一日寝ていたんですよ?」


 リリーが俺の胸に顔を埋めながら言う。


「ごめん、また心配かけちゃったね......ソフィアにも......」


「本当に、心配した......このまま目覚めなかったらどうしようって......」


 ソフィアもよほど心配させてしまったのか、目に涙を浮かべて下を向いている。


「本当に、ごめんね」


「いえ......ゲイン様が謝ることではありません、あのとき、とっさに私が魔法を使っていれば、少しは変わったかもしれないのに......」


「私も......動くのが遅かった......動けなかった......」


 リリーとソフィアが自分のことを責め出す、俺は二人の頭を再び撫でてゆっくりと言う。


「いや、あの男の強さだったら二人が援護してくれても俺はやられてた、むしろ二人に被害が及んでいたかもしれない......だから、二人が無事でよかったよ」


「ゲイン様......」


「ゲイン......」


 俺は二人の無事を安堵し、少し寝るよう伝えた。




 それから俺はベッドの中で少し考えていた。


 レイズと名乗る男の強さは本物だ、加えてあいつが去り際に言っていた『()』とは一体、アイツの裏にまだ誰かがいるのだろうか......。


 そこまで考えたところで部屋のドアが開き、リリーが入ってくる。


「ゲイン様、お身体は大丈夫ですか?」


「うん、だいぶ楽になったよ」


「それはよかったです!」


 リリーは無邪気な笑顔で市場で買って来たらしい果物をテーブルの籠に置いている。


 そんなリリーを少し眺めた後、俺はゆっくりと口を開く。


「ねぇ、リリー」


「どうしました?」


「リリーとソフィアに迷惑かけちゃったからさ、明日はクエスト休みにして、二人の行きたい場所に行かない?」


「良いのですか!?」


「うん」


 二人にも相当な心配をかけてしまった、だからせめて俺にできることをしよう。





 翌朝、体の調子も良くなりつつある俺は早めに目覚めた、まだ陽が昇っていない様な早朝、俺がこの時間に目覚めたのには理由がある。


「よし、行くか......」


 まだ眠っている二人を起こさない様に静かに部屋を出た俺は、リャーナ平原へ向かう。


 朝露の滴る草原の香りで頭が冴え、冷えた空気が俺の顔を撫でる。


「さてと......」


 俺は軽い特訓をする、魔法の、剣技の、駆け引きの特訓をする。


 まずは触れずに消滅魔法を扱えるかどうか、これに関しては練習すればいけるかもしれない、現時点で3M範囲なら意図した場所の物を消滅させることができる。


 剣技、短剣の扱い方はそれとなくできているが、やはり急な攻撃に対応できない、二頭のボアを相手にしたときに、一頭に集中してしまう為、視野を広く持たねば......。


 駆け引き、こいつは人間相手でしかほとんど使わない、が、現にレイズに襲われている、アイツはもう一度来る、その時のために対人での駆け引きを練習しておかねば......。



 特訓をしていると陽が昇ってきた。


 朝陽が世界を茜色に照らす。


「そろそろ戻らなくちゃな」


 二人が目覚める前に部屋に戻らないと、また心配をかけてしまう。


 朝陽に照らされながら俺はペルシへと向かう。

第10話です!


なんかここのところゲインくんよく負けてる気がしますが......


まぁ、ここから勝ってくれるでしょう!

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