魔法の発現
魔法、それは根源より溢れ出る魔力を具現化させる手段であり、能力である。
魔法の習得、幼い頃に突発的に使える人もいれば、成長しても使えない人もいるらしい。
どうやら俺にはその資格があるらしい。
「なんだこれ!?」
それはいきなり起きた、足場が悪い山道を歩いていた俺は木に手をかけた、刹那、手元に小さな魔法陣が描かれ、眩く光る。
目をやると触れたはずの木に穴が開いていた、いや、消えたというべきだろうか?そのせいで俺は無様に倒れた。
「今のは......魔法...か?」
転げ落ちた俺がその現象を理解するのに少しの時間を要した。
魔法を持つものを見ることはあるがここまで間近で見たことはないし、むしろ自分が使うなんて考えられなかった。
ややあって、俺は家に帰り、魔法について考えてみることにした。
「そもそもなんの魔法なんだ?」
木に触れた途端に触れていた部分が消えていた、そのことを考えると消滅魔法とでも考えるべきだろうか?
考えてるうちに母さんの声が聞こえる、晩ご飯ができたらしい。
居間に行くと香ばしい香りと共に頬の内側をくすぐるような感じがした。
「ゲイン〜、このお皿をテーブルに置いてきてくれない?」
「わかったよ母さん」
俺は忙しなく動いている母さんの手伝いをする、そして大体の準備が終わってきた頃に父さんが帰ってくる。
「お、今日も旨そうな料理が並んでるなぁ〜!」
「もう!お父さんってばいつも褒めてくれんだから♪」
この様子を見ればわかる通り、17の息子を持つ親にしてはラブラブなのだ、まぁ、悪いことではないのだが。
食事が終わってから俺はまた部屋にこもって考えた、しかし、食後ということもあり、すぐに寝てしまった。
次の日、目が覚めた俺はすぐに家の近くの小さな丘で魔法を試してみることにした。
「確か木に触ったときに出たよな......」
昨日の状況を思い出しつつ、俺は再び木に触れて魔法のことを頭に浮かべる、その瞬間、小さな魔法陣が描かれる。
「うおっ!?」
思わず眉を潜めてしまう紫紺の光。
目を開けたときに見えたのは昨日と同じく、消滅した木の腹、ようやく確信が持てた。
「消滅......魔法......」
ひとしきり使い、考え、わかったことがある。
まず、基本的にこの魔法は触れたものを触れた場所の半径10cmを消滅させる。
魔力の量を調節すると大きくしたり、小さくしたりも可能なようだ。
また、中身だけを消滅させることも可能なようだが、練習しないと成功しにくい。
「これが俺の魔法か......」
木や葉っぱなどで練習をしていると日が暮れていた、そろそろ帰らないと。
家に帰ってすぐに母さんと父さんに魔法のことを話した、最初は驚いていたがすぐに優しい眼差しで見つめてきた。
「あなたがこんなにも早く魔法が使えるようになるなんて、母さん嬉しいわ♪」
「うむ!ゲインは俺に似てたくましい男に育ったみたいだな!」
そう言って父さんと母さんは笑ってくれた、俺は良い親の子供に産まれてこれてよかったと改めて感じた、その時だった。
「ゲイン、少し......良いかしら?」
母さんがいつになく真剣な表情でこちらを見つめる、横にいる父さんも目を伏せている。
「どうしたの母さん?」
「あなたに伝えなければいけないことがあるの」
「伝えなければならないこと?」
「母さんたちね、もしあなたが魔法を使えるようになったら、旅をさせてあげようと思っていたの。」
「旅?」
「そう、あなたにはもっと広い世界を見てほしい、いろんな人と出会って、友達を作って欲しいの」
少し間を置いて母さんが言う。
「ゲイン、あなたには正義がある、何かを変えるための正義、何かを守るための正義が、母さんたちはそれをよく知っているわ、だからこそ、その正義を誰かのために使って欲しい、あなたの正義を掲げて欲しいの」
確かに、魔法を持った人はよく旅に出るというのを何かの本で読んだことがある、しかし俺にできるだろうか?魔法を覚えたばかりの俺が。
それに、「正義」ってなんなんだろう。
少し考えていると、目を伏せていた父さんが口を開いた。
「ゲイン、俺はな、旅をして母さんと出会った、だからお前にも旅をしてほしい、良い人と出会ってほしいんだ」
俺は考えた、そして導き出した答えは一つ。
「分かった、俺、旅をしてみる、そして出会いをしてみるよ!」
俺は旅をする決意をした。
〜1週間後〜
「ゲイン、忘れ物とかない?大丈夫?」
「大丈夫だよ、父さんにも昨日のうちに別れの挨拶しておいたし......」
今日、俺はこの家を旅立つ、母さんと父さんに貰ったポーションやら短剣を持って。
「母さん、そろそろ行くよ」
「うん!いってらっしゃい、ゲイン、たまには帰ってきてね?」
「分かってる、行ってきます、母さん」
俺は旅立った、この広大な世界に、出会いを探すために、自分の正義を掲げるために。
俺はまず、1番近くの街、最も安全な街と名高い「ペルシ」を目指して進んだ。
「ふぅ......この調子で進めば今日中には着けるか」
平原に座り込み、母さんが作ってくれたサンドウィッチを頬張りながら呟く。
視界の一面に広がる緑の大地、暖かい日差しが俺の身体を包み、優しい風が頬を撫でる。
少し眠くなってきた体に鞭を打ち、立ち上がる。
「さて、そろそろ向かわないとな」
まるで赤子を撫でるような優しい風を受けながら、俺はまた歩き出した。
ややあってペルシに着いた、石造りの門に多くの人々、街の賑わいを感じながら俺は歩みを進める。
「まずは宿を見つけておかなきゃな」
この街は外から来る人も多い故、宿は早めに決めておかなくてはならない、以前読んだ本にそのようなことが書いてあった。
俺は街の中心に近い宿を見つけ、中に入った。
子綺麗な内装に、おそらく宿泊している人も見える。
俺はフロントに向かい、部屋が空いているか尋ねる。
「1人なんですけど、空いてます?」
「一名様ですね、かしこまりました、少々お待ち下さい」
そう言って受付の人が部屋の確認に行く。
ややあって、受付の人が戻ってくる。
「お待たせしました、こちらお部屋の鍵となっています、日数の程はどれくらいでしょうか?」
「えぇと、取り敢えず3日間でお願いしたいんですけど」
「かしこまりました、では、ごゆっくりとお過ごしくださいませ」
「はい!ありがとうございます!」
俺は部屋に荷物を置き、一度街を歩いてみることにした。
「やっぱ賑わってるなぁ」
多くの人々が行き交う様は草原暮らしの俺にとって壮観だった。
「取り敢えずはこの街の冒険者ギルドに行ってクエストを受けてみるかな」
この世界の街にはそれぞれギルドがある、ギルドの役目は旅をしている人間、いわゆる冒険者にクエストという名の依頼を持ち込み、提供する。
そして、そのクエストでの報酬金を出したり、モンスターの落とすドロップ品の買取まで受け付けている。
冒険者はギルドでのクエストによる報酬で生計を立てているものが多い、そのため、街にきたらまずギルドに貼られているクエストを見る冒険者が多い。
「確かギルドはこの先に......お、あったあった」
街の中心部に行くと石レンガで建てられた存在感のある建物、冒険者ギルドが見えてくる。
「実際にギルドを見るのは初めてだなぁ」
淡い期待を込めつつ俺はギルドの扉に手をかけた。
はじめまして!
絮津海瀬織と申します!
初投稿なので文とか言葉がおかしくなってたらごめんなさい!