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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第六十九話 対ファントム10

少し短いです。

 目の前にあるのはまた一段と威厳のある両開き扉だった。

 その扉をレイは睨むと、


「マーチ様。」


「承知。」


 扉の鍵がかかっているあたりをマーチが手刀を通す。

 それだけで鍵は真っ二つに両断され、ひとりでに扉が開く。

 そしてその先には、


「…うっ…っ」


 耐えがたい異臭が立ち込める薄暗い部屋があった。

 吐き気がこみ上げるかのようなこの匂いは、明らかに生モノが腐った匂いだ。

 さすがのマーチもその匂いの強烈さに顔を歪める。


 その薄暗い部屋を一周見渡し、レイは目的のものを発見する。

 一番右側の鎖に繋がれている手だ。


 その鎖には手だけが繋がれていた。

 手首のあたりで切断されていて、腕は下にポロリと落ちている。

 そして目線を辿ると、そこには想像を絶するものがあった。


 おそらく人体と思わしきモノがバラバラにされて転がっていたのだ。

 手が二つあり、腕は途中で一度切断されていて、四本あるのが見える。

 足もおよそそんな感じで、胴体はもっとひどい。

 幾重にも切り込みを入れられて、原型を留めていないのだ。


 そして、そのさらに奥には、


「…お母様…。」


 苦しそうな表情で固まっている、首から上しか残っていないレイの母親を発見した。




 マーチは扉の中から出てきたレイを見て、ため息をつくと、


「終わったか?」


「………ええ。」


 そういうレイの目は泣き腫らしたかのように赤く、見ていられないとばかりにマーチは目を背ける。

 親が虐殺された、そしてその主防犯は逃亡。

 レイの気持ちを推測することすらおこがましい。

 なんと声をかけて良いのかマーチにはわからなかった。


 だが、


「マーチ様、まだ戦争は終わっておりません。今すぐ下に戻りましょう。」


「…ん。ああ。」


 レイのその考えに賛同して、マーチ達は下に降りようと歩を進め、


「大丈夫か?レイ殿!」


 したから高速で階段を登ってくる人影が見える。

 それを見てレイは苦笑する。

 終わった後に最強のカードが来るとは、タイミングが悪いことこの上ない。


「大丈夫です。クラリス様。」


 かくして、この三人は集まったのである。




 戦争は呆気なく終了した。

 あの三人が来てから形成が一気に逆転したのだ。


 まず、レイの加護は大人数を酔わせたりすることができるので、それを生かして一瞬で2万の兵を無効化したのだ。

 そしてマーチがうまくクロノオ歩兵隊を誘導して、簡易的に包囲を完成させる。

 またクラリス達「白竜の剣」は派手に暴れることで相手の戦意を喪失させる。

 

 そして少しも立たないうちにファントム兵が逃亡し出したのだ。

 一目散に南側に逃げ出すファントム兵達。

 もしかしたらファントムの城側に戻る気なのかもしれない。


 籠城戦に持ち込まれたらいったん戦略を立て直さなくてはならない。

 アカマルはそれを懸念してすぐに追撃しなければならないと思い、追撃の指示を出そうとして、


「はっ、はっ、はっ、!アカマル様。」


 こちらを呼ぶ声がして、アカマルは振り返る。

 全身を黒色鎧を纏った兵、クロノオ兵なのは間違い無いが、心にいること自体が異常な人物である。

 それは、


「ユーザリア!志願兵達はエレメント戦に行っているのではなかったのか!?」


 志願兵の一人、最近は尊大な態度も改善されたと評判のユーザリアが、このファントム戦場に現れたのだ。

 志願兵歩兵隊は全員エレメント戦に参加しているはずだ。

 それに准士官の地位にいるユーザリアがこうも簡単に抜け出していいはずがない。

 エレメント側に何かあったのか?


 ユーザリアは焦ったようにこちらを見て、


「ヒムラ様から、至急エレメント本城に集まるようにとの要請が。」




 時は三日前。

 クロノオ志願兵歩兵隊、魔導隊がエレメント戦場となるであろう平原に向かっている。

 先頭をユーバが先導し、歩兵隊がその後続く。

 その後テルルと俺同じ馬に乗って進み、その後ろを魔導隊が連なる。

 メカルは最後尾で警備をしている。

 

 奇襲の可能性を考えて非戦闘員のメカルを一番後ろに置くのはどうかと思ったが、基本平原なので奇襲の心配はなかったようだ。

 それにメカルが一番情報収集に向いている。

 兵全員の視覚情報を見ることができるので、罠を仕掛けようとしてもほぼメカルに伝わるのだ。

 そしてメカルが危険を察知したらすぐに俺が向かうこととなっている。

 

 今や俺の必殺技となっている「次元一閃(ディメンションカット)」は基本的に全てを無に帰すことができる。

 この世界にあるのかわからないが爆薬があった場合でも、簡単に対処可能なわけだ。


 爆薬じゃなくても、魔紙のようなものがエレメントにあった場合、仕掛けをうまく施せば爆発させることができる。

 さすがにヨルデモンド並みの技術力を持っているかはわからないけど、油断ならないのがエレメントである。

 まあ、うちの軍は魔法的なものは効きづらいんだけどね。

 そのためにみな苦しい訓練を乗り越え耐性を獲得したのだし。


「ねえ、コレ座り心地変じゃない?」


「慣れてないからだろ。それに俺の馬をコレとかゆうなよ。俺の相棒なんだよ?」


「どうせ急ぎだったら加護で移動しちゃうのに…。この馬もかわいそうね。」


「…、ま、いいんだよ。」


 痛いところをテルルに突かれて、少し戸惑う。

 確かに俺が馬を使う意味はないのかもしれない。

 だが一番細かく動きができて速いのは馬だ。

 だから大丈夫だ、俺の馬!

 …馬に名前つけてやらないとな。

 まあそんなことはいいとして、もうすぐ戦場だと思われる小川に着く。

 ここまでの道のりは三、四日だった気がする。

 クロノオからエレメントは大体そのくらいで、ファントムへは七日かかるらしい。

 

 つまり、アカマルたちはまだ着いていないだろう。

 となるとレイ、ロイ達がファントムの砦についたくらいだな。

 ロイには別の仕事を頼んでいるので、ファントムの邪魔もそこそこにして早く仕事に取り掛かって欲しいものだ。


 そして、俺が一番ファントム側で心配しているのはもちろんレイだ。

 一番危険な人物であるグルームと戦うのだ。

 一応マーチに手伝うよう頼んだが、それでも勝てる保証はない。

 最悪クラリスがどうにかするだろうという投げやりな思考で俺はその心配を振り払う。


「ねえヒムラ。あれじゃない?」


「…む。あーいるな。」


 平原の小川の向こう。

 対岸に陣を張っている軍がいる。

 明らかにエレメント軍である。


 数は少ないが、強者が揃っている印象があるな。

 おそらく彼らがエレメントに雇われた傭兵なのだろう。


 そして、


今回の話でレイと母親の対面(?)場面が本来はあったはずなのですが、グロすぎるなと考え削除いたしました。

おそらく間話であげると思いますので、その時までお待ち下さい。

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