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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第六十七話 対ファントム8

「マーチさん。頼みがあるんだけど。」


「…む、ヒムラか。どうした。」


 ファントムエレメント戦の前日。

 ヒムラは事前にマーチと話をつけておいたのだ。

 ちなみに俺とマーチはもうすでに日々の特訓で仲良くなり、タメ口でも話せる関係である。


「ファントム戦でレイがグルームを倒すのを手助けして欲しいんだけど…」


「グルーム、…「破壊」か?」


「ああ。」


 おそらくレイにはグルームは倒せない。

 レイの気持ちにも考慮したいが、どうしたってそれは無理だろう。

 全力の俺でも結構危なかったしな。


 というわけで、マーチに助けを求めたわけだ。


「…俺にはグランベル様の護衛という役目がある。残念ながらそれは無理だ。」


 まああっさり断られてしまうわけだ。

 だが、それを説得するのが今回俺がここにきた目的なのだ。


「グランベル様なら大丈夫だ。軍部で一番護衛に向いている加護を持つ奴がいてな、…」


 まあグランベルの安全を条件に俺はマーチを戦場に呼び出せたのだ。

 単体でBほどの強さを持つマーチ。

 全力でファントムエレメントを相手にするのなら必要なカードだろう。

 



 グラム砦最上階の中心。

 そこでグルームvsレイ、マーチの戦いが始まった。

 

「奴は本来拡散するはずのエネルギーを一点に集中させてあり得ないほどのパワーを出している。」


「…そういう加護を持っているということでしょうか。」


「その可能性はあるが、おそらくは彼の努力の結晶なのだろう。よって…。」


「対処可能ということでしょうか。」


「ああ。」


 そんな最低限の会話をした後にグルームとの戦いは再開されるが、形勢は何と一変した。

 レイとマーチがうまく連携をしてグルームを追い詰めているのだ。

 基本的にマーチは“静”、レイは“動”であり、そのそれぞれの戦闘形態がうまく噛み合ったのだ。

 グルームの猛攻は全て正面でマーチが受け流し、その間にレイが四方八方から攻撃を加える。


 人の腕とはどんなに頑張っても二本しかない。

 つまり人数が多ければ必然的に手数が多くなるわけで、守りきれなかったらどんどん攻撃が当たっていくのだ。

 

 マーチがグルームの手二本に対処することで、レイは反撃を考えず攻撃態勢に移れる。

 『朧空間の加護』をフル使用し、全力の攻撃を多角度から放つレイ。


 普通であればそのままレイの攻撃をくらってノックダウンなのだが、そこはさすが二つな持ちというべきか。

 グルームは驚くべき方法でこちらの攻撃を対処する。


 こちらが後ろから攻撃しようとすると、グルームは飛び上がりながら足でレイに向かって蹴りを放つのだ。

 その蹴りはこちらを殺せるだけの威力を悟った時、レイは改めてグルームの異常性を確認する。

 空中で浮きながら高威力の蹴りを放つのは常軌を脱した攻撃だとしか思えない。

 やはり「破壊」と呼ばれるだけあるな。

 何とかそれを受け流し、レイはまたグルームに攻撃を再開した。


 それほどまでに並外れた戦闘力を持つグルームだが、だんだんと疲労が溜まってきたようだ。

 みるみるうちに攻撃が鈍くなってきた。

 それも当たり前だと言える。


 全身を使ってこちらの攻撃に対処し、それで疲れないのなら正真正銘の怪物だ。

 肩で息をして、苦しそうにこちらを睨むグルーム。

 勝敗は決したように思えたが、


「ペレさ…ん。さすがにきつういからあ、本気出していいい?」


 どうやらまだ本気出していなかったようだ。

 確か、本気出したらこのグラム砦が壊れるといってたような気がする。

 さすがに今まさに使っている大切な砦を破壊する許可をペレストレインが出すはずが…


「やむを得ない。このグラム砦を破壊する許可をやろう。今は何万の兵より貴様の命だ。」


「!!!」


「ありがとおう。じゃあ、いくよ。今まで散々バカにされてきたからねえ。全てやり返してやるよおお!!」


 何と驚くことにこの砦を壊す許可をペレストレインが出したのだ。

 それをきいてグルームがニヤリと嗤うと、そのままこちらに突進してきた。

 今までとは別格の動き。

 蹴り出した地面が爆発し、グルームの通ったところの空気が破裂音を立てる。

 グルームが握った拳には今まで以上のエネルギーがこもっている。


 何よりも、グルームを取り囲むオーラが豹変した。


 これはヤバいと、レイの本能が全力で警報を鳴らす。

 受け流すことができるかどうかすらも怪しいほどだ。

 そのまま脊髄反射的にレイは進路の脇に避ける。

 見ると、マーチも避けたようだ。


 グルームはそのまま柱に突進して、激突する。

 普通であればグルームの方が衝撃に耐えられなくなって爆発する。

 だがなぜか、グルームのぶつかった柱の方にヒビが入り、そのまま柱が崩壊した。

 その衝撃波で周りの数本の柱もヒビが入り、今にも崩れそうだ。


 これが「破壊」のグルーム。

 Aレベルにも届くほどの強さ。

 なるほど一人では勝てないわけだとレイは悟った。

 もし避けることができず柱にレイが押しつけられていたら、そのままミンチとなっていただろう。

 

「さあ、どんどんいくよお。」


 グルームは余裕そうにこちらを見て言うが、その顔には鼻血が垂れていて、全身にいくつもの傷がある。

 どうやら何度も使えるものではないらしい。

 それならばまだ勝機がある。

 

 レイとマーチは互いに目を見て頷くと、攻撃を再開する。

 基本的には今までと同じように、マーチがグルームの攻撃に対処し、レイは様々な方角から攻撃する。

 やはりグルームは辛そうだったが、それ以上にマーチが辛そうだった。

 何度かグルームの攻撃が入り、顔を歪めながらそれに耐えている。

 マーチも長くは持たなそうだなとレイが思ったその時、


「もう終わらせるよおお!!!」


 グルームがマーチに接近する。

 そしてそのまま拳を後ろに引いた。

 何かくる。


「マーチ様!!」


 レイが叫んだ時にはもう遅かった。


「「破滅の一撃(コラプス)」!!」


 グルームはそう叫ぶと、引いていた拳を前に突き出す。

 ただそれだけの動作なのに、マーチはそれを受け流しきれず、後方に吹っ飛んだ。

 マーチはそのまま背中から地面に受け身を取れずに落下する。

 そして最も驚くべきことは、グルームが殴った方向の延長線上の柱が破壊されたのだ。

 グルームのパンチの衝撃波が柱を破壊した、ということだ。


 そして、


「マーチ様!!!」


 相当な重傷を負っているマーチのもとに駆け寄ったのだった。




「問題…、な、い。」


「大丈夫ですか!?私はどうすれば…。」


「俺の懐…の魔紙を、俺に当て、…てくれ。」


 マーチはそう言うと、自身の腰あたりをさす。

 レイは必死にその紙を探すと、マーチの体に当てた。

 するとみるみるうちにマーチの傷が治っていく。


 まだこんなものがあったのか。

 ヒムラの用意周到さにレイは改めて舌を巻いていると、マーチは立ち上がる。


 グルームはその光景を見てつまらなそうに、


「…その紙。何か知らないけど、つまんないよなあ。回復されるとやりがあいがないわけえよ。」


「ふっ。安心するがいい。もうこの魔紙はない。先ほどのが最後だ。」


「こっちを安心させてくれえるなんてすごおく優しいんだあね。」


「これから殺す相手に向ける温情は持っているつもりだ。」


「…じゃあ僕も君たちに優しくしなあいとお。」


 マーチは会話を終えると、レイを見ると、


「アレは真正面から倒せない。」


「はい。」


「だから、少し策を練ろうと思うのだが…。」


「…。」


 二人は小声で作戦会議を始める。

 戦場ではあまりにも無防備な行動に、しかしグルームはそれをニヤニヤとしながら見る。

 おそらく確実に二人に勝つつもりでいるからだろう。

 グルームが少し追い込まれているのを見てそわそわしていたペレストレインも、そんなグルームの様子を見て、安心したように椅子に座る。


「…待たせて悪かった。」


「…作戦会議は終わったかあな?まあ何をしても無駄だと忠告しておくよお。」


「それは忠告ではなく驕りと言うものです。」


 グルームの言葉にレイが厳しく反応する。

 その言葉を聞いたグルームは少し呆気にとられたような顔をすると、すぐに嗤って、


「そう!僕たちは驕っているのさあ!世界を手に入れるのはあ僕たあちでああると!全ての負の感情は僕とペレさんがしはあいするのさ!だから…。」


 グルームは拳を構え直し、


「「破壊」のグルーム。まずは君たちの悲しみを味わせてよ…。」


 一気にグルームのオーラが増す。

 名を名乗ると言うのは、全力で戦うと言う意思表示でもある。

 そして、それを聞いたマーチは手刀を二つ構えると、


「グランベル様一の忠臣、マーチである!」


 そして、レイはナイフを八本、指と指の間に挟むと、


「クロノオ「隠密」、レイ。この名にかけて、改めてあなたたちに鉄槌を下します。」


 お互いの全力をかけた一手が始まる。


 


実はここ最近17時台に投稿しているのですが、ギリギリ16時に書き終えてそのまま投稿をしている状態です。

もしかしたらこれから少し投稿時間が遅れたり、投稿が一日開く可能性があります。

申し訳ありません。

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