二章 第六十一話 対ファントム2
ギリギリ書き終わりました(汗)
このファントム戦では、ヒムラが考案したいくつかの陣形を回していくことで勝利を掴み取ろうとすることが重要だ。
攻撃開始の合図とともに、歩兵隊と騎馬隊が同時に進軍を開始する。
ただ勇敢にファントム軍に突っ込んでいるだけのように思えるが、実はそうではない。
ヒムラの考案した戦法がつかわれているのだ。
歩兵隊1万を一つ百人の小隊に分散させる。
そして一つの小隊につき五人ほど騎馬隊のメンバーが付いているのだ。
歩兵隊百人に騎馬隊五人で様々な戦法を繰り広げる。
もしファントム兵がクロノオの徴兵された兵レベルで弱かったら?
その場合ファントム兵と衝突したら、まず騎馬隊が相手を蹴散らす。
そして撃ち漏らしを歩兵隊が片付けていくのだ。
騎馬隊でも相手ができないような強者が現れたら、すかさず傭兵達が相手をし始める。
基本的には強い奴が蹴散らして行こうと言うものだ。
この場合にはファントム兵を砦から引き離す間も無く勝つことができる。
だが、ファントム兵がそれなりに強かった場合には、作戦は即座に変更される。
陣形を変え、歩兵隊が前に出ることになるのだ。
もちろん鍛えられていない歩兵隊がファントム兵とやりあえるはずがないが、防御陣形を組んで相手を寄せ付けないようにすれば、なんとか耐え切ることは可能だろう。
徴兵された兵にも一応陣形を覚え込ませているので、練度が低くてやられると言うことは少ないはずだ。
そして防御陣形をとり相手が攻めあぐねてイライラし始めた時、騎馬隊が遠くから矢を飛ばして確実に相手を仕留めていく。
攻めることも出来ず、ただやられるがままにされている。
相手のフラストレーションが溜まった時、クロノオの歩兵隊には少しずつ後ずさってもらう。
どんどん後退り、それをファントム兵に追撃させることによって砦から兵を引き離す。
砦の前でずっと居座られていては、追い詰めることも出来なくなるからだ。
そして、その作戦通りにことは進んだ。
ファントム兵は基本的に一般人レベルの弱さだったが、鍛えられている兵達もいて安心はできない。
騎馬隊が蹴散らすという第一の作戦は実行できそうにもなかった。
よって、歩兵隊が防御陣形を組み、次第に後ずさってく。
面白いようにファントム兵は誘導され、あっさりと砦から引き剥がせた。
少し簡単すぎやしないかとアカマルは不審に思ったが、答えはすぐに出た。
なんとファントム軍には指揮官らしき人物がいないのだ。
本来指揮をすべきペレストレインはどうやら砦に篭っているらしいし。
頭のいない軍など、どうとでも勝つことができる。
アカマルが勝利を確信していると、脇からクラリスが話しかけてくる。
「…どうやら強者が数名混じっています。我ら傭兵団にお任せください。」
「わかった。行け。」
どうやら一筋縄ではいかないらしい。
砦から引き離せば第二作戦へと移る。
数で負けているこちらが、囲まれてしまうのは時間の問題だ。
いくら指揮官がいないからと、横に入り込まれては自然と囲まれる。
故に、囲まれる前に中央突破を狙う。
今までファントム軍に囲わせないために薄く伸ばしていたこちらの軍を、一箇所に集めるのだ。
端に位置しているクロノオ歩兵隊小隊を後ろに移動させならが中央に移動する。
すると当然ファントム兵はこちらを囲いやすくなる。
だが、囲まれる前に内側からファントム兵を食い破るのだ。
ここが正念場である。
|ファントム軍|
|クロノオ 軍|
↓
フフフフフフ
フ ↑↑ フ
フ クク フ
クク
(フとクが見づらくてすみません。フがファントム軍です。そしてクがクロノオ軍です。)
ファントム軍に向かって正面突破を仕掛けるのだ。
騎馬隊が先頭で機動力をつけながら、側面攻撃には歩兵隊が対処する。
ファントムがこちらを囲い終わるまでにファントム軍後方に移動できたらこちらの勝ちだ。
すぐさま反転して後ろからファントム軍を攻撃するだけだ。
うまくいくかはどうか、時の運にかかっている。
だが、
「作戦終了!!第二形態へ変更!!!」
「「「うおーーーー!!!」」」
迷わずアカマルは命令を出したのであった。
「…なかなか骨があるじゃんか。クロノオも。」
必死でクロノオに対して攻撃を仕掛けるファントム軍の中で、ただ一人冷静に戦力分析をしている人物がいた。
滅多に部下を「人」として扱わないペレストレインが唯一重宝していると言える部下である。
名前はカテールという。
今回の戦に関してもペレストレインに「死んでもいいから勝て」ではなく、「どうやっても生き残れ」と命令を下された人物のうちの一人である。
もう一人はグルームである。
「一見ファントムが押しているように見えるが…。」
見たところファントムがクロノオを押しまくっているようだ。
だが、実際はファントム兵が砦から引き離されているのがわかる。
どうやらクロノオ側には優秀な指揮官がいるようだ。
「ならば、そろそろ俺が暴れる場面か。」
見たところクロノオ兵の練度は高いが余り強そうではない。
一瞬で蹴散らせるだろう。
蹂躙するために一歩踏み出そうとすると…
「あなたを戦場に入れるわけには行けない。」
「…へえ、俺が強いとよくわかったじゃんか。」
「様々な判断材料から推測することはできる。」
「ふーん。あんたも策士な訳か。」
踏み出そうとした先、一人の男が立っている。
赤茶けたローブをかぶった、いかにも流れ者のような風貌だが、よく見ると動きが一つ一つ洗練されているようだ。
相当な強者だと感じ取れた。
ローブの中からは白金の髪の毛となかなかにハンサムな顔がのぞいている。
「…こんな奴がクロノオにいたんだな。」
ペレストレインから聞いたクロノオの強者は藍色の髪のレイという少女とスカイブルーの髪と目をした軍師ヒムラの二名である。
こんな人物はいなかったはずだ。
「まあ何にせよ俺がくらってやるよ。」
「その奢り、せいぜいあの世で後悔するが良い。」
カテールの戯言を一刀両断すると、その男はこちらを向いて剣を構える。
形は普通の剣のようだが、かなりの業物であることが見て取れる。
カテールも背中から特大サイズの槍を取り出す。
こちらも見る人が見ればすぐに凄さが分かるほどの武器だ。
お互い武器を構えながら、
「ファントム国王副官、カテール。」
「流れ者の傭兵団のまとめ役、クラリーだ。」
どちらも偽名を名乗りながら、互いに武器をぶつけあう。
どうやらファントム側から確認された数名の強者は、「白竜の剣」の皆が対処してくれた。
驚いたのが、ほとんどの騎士が一瞬で帰ってきたことだ。
強者と言っても「白竜の剣」にしてみれば赤子に等しいらしい。
だが、クラリスがまだ帰ってきてないのをアカマルは心配していた。
クラリスはAほどの強さを持つ強者であるが、それでもてこずっているようだ。
少し心配であるが、アカマルは悩んでいてもしょうがないと割り切って、
「では、突撃だーーー!!」
一箇所に集まったクロノオ軍を前進させたのだった。
明日投稿できるかわかりません。
投稿できなかったらすみません。
今回の文章中で「えっ!?」となるところが一箇所あったと思いますが、ミスではないので悪しからず。