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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第五十七話 戦力配分

「まず、ファントムに向かわせる戦力だが…。」


「ヒムラ様、報告がございます。」


 俺が話そうとしていたところで急に影から出てきたロイが割り込んでくる。

 今までこいつは周辺国の調査に行っていたのだ。

 

 報告とはなんだろうか。

 悪い報告でないといいなと期待しながら、


「聞こう。」


「ハッ。先ほどヨルデモンド「白竜の剣」の団長であるクラリス・レートクリスからの使者から伝言を受け取りました。」


 クラリス・レートクリスか。

 確か白金色の髪の毛をした柔和な奴だった気がする。

 実力は相当高く、さすが「白竜の剣」団長と言われるだけある、という印象の人物だった。

 

 一体何の用だろうか。


 ロイにその伝言を話させる。


「「この度のファントム・エレメント戦に、ザガル様のご意向により、「白竜の剣」の騎士三百人ほどを援軍として派遣する。」という伝言でした。」


「なんだって!?」

「援軍が来るのか?」


 それは素晴らしい!!

 この切羽詰まった局面にヨルデモンド自ら援軍を出してくれるとは。

 しかも全員がBレベルの強さを保証されている。

 

 だが、ヨルデモンドが条約を結んでいる国と戦争をしたらヨルデモンドの権威が失墜しかねない。

 そこのところはどう考えているのだろうか。

 だが、続くロイの伝言で俺はさらに驚くこととなる。


「「なお、「白竜の剣」の騎士たちは流れ者の傭兵として戦争に参加することとなる。努努ヨルデモンドの存在を勘づかれることのないように。」だそうです。」


 ええっ!

 つまりヨルデモンドの「白竜の剣」が戦争に参加しているということがバレてはいけないということか。

 確かにバレてしまったら、ヨルデモンドの権威が失墜しかねない。

 

 何か特別な対策を立てる必要があるだろうか。


 …まあそこは「白竜の剣」の騎士たち自身がなんとかしてくれるだろう。

 今は戦力増強を喜ぶべきだ。

 

「何にせよ。助太刀は嬉しいぜ。」

「これで少しは楽になるでしょう。」


 ドルトバとメカルが安心したように頷く。

 

「では、改めてファントム戦とエレメント戦の兵の配分を決めようと思う。」


 俺の言葉に皆頷く。 

 

「まずファントム戦だが、徴兵された歩兵一万人と騎馬隊、そして「白竜の剣」の300人に向かってもらう。そして軍部メンバーでファントムに向かって欲しいのは、アカマル、ロイ、レイ、ドルトバの四人だ。」


「「ハッ」」

「わかりました。」

「承知いたしました。」


 おっと、なんの疑いもなく受け入れてくれたな。

 なぜそのような配分にするのかは聞かないのか。

 まあいいや、俺から説明しよう。


「大まかな作戦としては、まず決戦場と予想される盆地にファントムがつくまでにロイレイが奇襲を仕掛けて疲弊させる。そして盆地では徴兵された兵がファントム軍を足止めして、「白竜の剣」が攻撃役として敵戦力を減らす。そして騎馬隊は相手の騎馬隊や精鋭軍などの足止めだ。」


「なるほど、作戦は理解しましたが、一つ聞きたいことがあります。」


 俺の立てた作戦に頷きながらもアカマルは俺に問うてきた。


「「破壊」のグルームは誰が足止めするのですか?」


「ああ、それね。」


 確かにグルームの足止めは必須だろう。

 あいつ一人で戦況を大きく変えてしまうだろうからな。

 

「それはレイに任せるつもりだ。」


「…!!」


 レイは驚いているが、これは当然の成り行きだろう。

 なぜならファントム戦メンバーで一番強くて足止めできそうな戦闘力を持つのはレイ

くらいしかいないからだ。

 俺が出向いてもいいのだが、できれば俺とアカマルは分散させたい。 

 俺とアカマルが一緒に一つの戦線に向かうと、もう片方で指揮をできる人がいなくなる。

 そして俺はとある理由でエレメント戦に参加したいのだ。

 

 また、「白竜の剣」のクラリスなんかに頼むという方法もある。

 正直俺の見立てではクラリスとグルームだったらクラリスが勝つ気がする。

 

 だが、彼らをグルームの元、もっと言えばヨルデモンドについてある程度知っている人々に会わせてはいけないのだ。

 クラリスなど、何人かの優秀な「白竜の剣」の人たちは顔や戦い方も世界中に知られている。

 なので戦っている時に、グルームに「白竜の剣」だと勘づかれる可能性があった。 

 つまり、ヨルデモンド介入を悟られてしまうので、ザガルの命令に反することになってしまう。

 

 よって、適任はレイしかいないというわけだ。

 それに…、


「グルームと戦って、お前のお母さんを取り戻してこい。やり返すと決めたんだろう?」


「…そうですね。機会を与えてくださり感謝いたします。」


 そう言って、グルームの足止め役が決まったのだった。




 他にもファントム戦の細かい内容を詰めていき、話はエレメント戦についてに移って行った。


「エレメント戦はユーバ、俺、テルル、メカルが担当する。クロノオ志願兵歩兵隊に魔法隊でエレメントに勝つつもりだ。」


「え!」

「ちょっと待ってよー!」


 俺のこの配分にテルルとユーバが異議を唱えた。


「志願兵の歩兵隊は二千人。それに魔導隊は千人。合計三千人であのエレメントを倒そうっていうの!?」


 テルルの考えはもっともだ。

 エレメントはファントムと同じほどの国力を持つ国だ。

 当然軍事力もあると思ったのだろう。

 だが、実際のところは違う。


「エレメントは徴兵したり軍を持ったりはしていない。戦争が起こったら全て国が雇った傭兵に対処させているんだ。」


 つまり、エレメントは軍を増強すればするほど金がかかるというわけだ。

 最も、エレメントは金を持っているのでやろうと思えば大きな軍隊を編成することもできるのだが…。


「今回の戦でエレメントはあまり兵を用意しない。ただでさえファントムの対応に追われているクロノオがエレメントと戦えるわけがないと踏んでのことだ。エレメントは金をかけずに確実に俺たちに勝利するだけの兵しか揃えないだろう。」


 そして、俺の予想だと二千ほどの兵をエレメントは雇うはずだ。

 もし「白竜の剣」の参戦がなければその二千の軍に俺たちはやられていただろう。

 

 だが、「白竜の剣」の参加で俺たちは歩兵隊と魔導隊をエレメントに回すことができた。

 よってエレメントにも対処可能であるということだ。


「なるほどー。」


 ユーバは感心したように俺を見る。

 まあ実際はメカルに全て調べてもらったんだけどね。

 それによってエレメントが用意する兵力も全て筒抜けとなっている。

 

「…だけど、エレメントは魔法が発展しているでしょう?もしかしたらその他に魔法使いを雇っているかも。」


「その可能性は十分にある。」


 テルルの予想は正しいだろう。

 エレメントの魔法技術が発達しているということは魔法の研究員がたくさんいて優秀であるという証拠だ。

 そして戦争になったらその魔法の研究員が戦場に駆り出される可能性も高い。

 

 優秀な魔法使い隊の出来上がりというわけだ。

 

 テルルが思い出すように視線を彷徨わせ、


「…エレメントの魔法技術はすごいよ。ザン…だっけ。私たちに見せた空間を操る魔法も相当レベルの高い魔法だったし。私たちの魔導隊も訓練しているけど、さすがにあのレベルまで対応できるとは思えないし。」


「確かにそうだな。だが、こちらだって有利な点がいくつもある。」


「そうなの!?」


「ああ、まず相手の傭兵だが、雇われた兵だから連携の練習などを行なっていないはずだ。エレメントの魔法使いに関しては、おそらく体を鍛えてはいないだろう。一度魔法使い隊に兵がたどり着いたら、あとは簡単に相手の魔法使いを無力化できる。」


 単純にいうと、練度が相手の方が低いのだ。

 そこを突くように戦略を立てれば勝ち筋は見えてくる。

 

 つまり、


「相手の傭兵を中央突破で抜け、後方で待機している魔法使いたちを攻撃する。」


「なるほどー。」

「できるのかなぁ。」


 俺のあっさりとした戦略にユーバは納得してくれたみたいだ。

 だが、テルルは不安を拭えないらしい。

 まあ細かいことはこれから詰めていくので、そこで不安も解消されるだろう。


 その後俺たちはエレメント攻略に関する様々なことを話し合った。


 そして、一通り決め終わったところで、


「ヒムラ様。あの国はいかがいたしますか?」


「あの国って…ああ、あそこね。」


 メカルの進言の意味は分かった。

 だが、皆はまだ分かっていないようだ。

 ユーバはすでに話し合いは終わったとばかりに居眠りをしているし…。


「あの国とは?」


 アカマルはやはり考えてもわからなかったようだ。

 俺はそんなアカマルにニヤリと笑みを向けると、


「今回の戦のキーポイント、小国ルーンだよ。」



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