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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第五十四話 テルル対ロイ

 次はテルルとロイだ。

 お決まりのヘルナのテンションが高いアナウンスが鳴り響き、試合が始まる。


 開始と同時にロイが消えたかと思うと、テルルの足元から顔を出し、足を攻撃する。

 ちなみに武器は、ドルトバを葬ったあの凶悪な短剣のままだ。

 テルルの足が切り飛ばされると思ったが、


「えいや!」


「!!」


 ロイの不意打ちを察知していたかのようにジャンプするテルル。

 タイミングも全て把握していたかのようだ。

 

 自分の攻撃が避けられたことに驚いたロイだが、すぐに納得したようだ。


 …俺にはどうしてテルルが避けられたのかわからないから教えてもらいたい。

 単純な反射神経ではないはずだ。

 人よりは鍛えられているがテルルも魔法なしでは非戦闘員だ。

 ロイの不意打ちを避けられるはずがない。


「あなた、私の動きが見えてるわね。」


「なんかわかっちゃうのよねー。」


 ロイの指摘に首を傾げながらも肯定するテルル。

 なんと、影に潜っているロイの動きがわかるだと!?

 

 勘か?それともスキルか?

 

 俺が首をうんうん傾げている間にも戦いは進む。

 ロイがまた影に潜ると、テルルはロイがいるであろう場所を当て続けて魔法を放つ。

 レイほどの俊敏さはないロイがテルルの魔法を交わすのは至難の技だ。

 いつもすれすれで避けている。


 まあ結局避けることができるのがロイの凄いところなんだけどもね。

 たまにロイも攻撃を加えるが、テルルがすぐさま「障壁(Barrier)」を張ることで対処してしまう。

 攻撃力をあまり持たないロイにとって、防御の硬いテルルはやりづらい相手だろう。

 

 そして、何度かの打ち合いの後、試合は終わりへと向かっていった。

 痺れを切らしたロイがナイフを5本取り出した。

 どのナイフも凶悪なもので、肉を抉り取るような形をしている。


 そしてそれを、ロイは5回投げた。

 一つは正面から、二つは左右、二つは上へ。

 

 くるくると回転するようにテルルに迫るナイフは、レイほどではないが速い。

 

 そのナイフを見て、テルルは目を閉じると、


光鋼鎧(ShineArmor)!!」


 一瞬で魔法陣を出し、一瞬で魔力を注いで魔法を完成させる。

 無数の魔法陣から柔らかな光がテルルを包み込み、鎧をみに纏わせた。

 

 そしてできた輝く鎧は頭以外の全身を覆っている。

 

 正面のナイフを体で受け止め、左右のナイフは手で弾き飛ばした。

 そして、上に投げたナイフのうちの一つはテルルの頭上を超えると、バックしていきテルルの背中を狙う。

 鎧をしていなかったらこの不意打ちにやられていただろう。

 

 だがナイフはテルルの背中の鎧に当たっただけで、そのまま地面に落ちてしまう。

 

 それと同時に「光鋼鎧(ShineArmor)」の方にも限界が来たのか、テルルの鎧がはじけて消えた。

 テルルはこれでナイフが全部だと安心しているようだな。


 だが違う。

 ロイが上に投げたもう一本のナイフが、テルルの頭上へ向かう。 

 

 不意打ちを二度重ねようとするのはさすがとしか言いようがない。


 テルルが気づいた頃にはナイフはもうテルルに迫っていて、そのままテルルの肩に突き刺さ…


障壁(Barrier)


 らなかった。

 すぐさまテルルが緑の壁を張っていたのだ。

 気づいたのが一瞬前だと言うのに、もう対応しているのか!?

 さすがにありえないレベルの反射能力だ。

 やはりテルルには隠された才能があるのか!?


 だが、重力によって速さを増したナイフは、「障壁(Barrier)」を絶やすく切り裂いてしまう。 

 そしてそのままテルルに突き刺さろうとする。

 しかしテルルが「障壁(Barrier)」を張った狙いは、ナイフを止めることではなくて、一瞬の隙を作ることだ。

 

 すぐさまテルルは後ろに飛ぶと、もともとテルルのいた場所に短剣が深く突き刺さる。

 間一髪だ。

 テルルはロイの全てのナイフに対処した。


 そしてロイは、


「もう私は武器を持っていない。負けよ。」


 負けを認める。

 その瞬間、志願兵からの大歓声が起こった。


「さすがは我らがテルル様だ!!!ナイフの猛攻を全て受け流し、見事勝利を勝ち取りました!!!」


 どうやら今の攻防は志願兵からしてみても凄まじいものだったらしい。

 確かに最後のテルルの動きは素人にできるものではない。

 一体どんな手品を使ったのやら。


 俺は帰ってきたテルルに聞いてみる。


「え!?なんで影に潜っているロイちゃんが見えたのかって?知らないわよ。なんかわかっちゃうの。」


 と、実際は勘だったらしい。

 だが、テルルはロイの位置を一回も外さずに見破った。

 さすがに感というには無理があるんじゃなかろうか。


 まあいいや。

 それともう一つ。


「最後のナイフはどうやって避けたんだよ。」


 あの反応速度は常人ではなかった。

 テルルの才能が開花したか、もしくは、


「もともとナイフに気がついていたか。」


「それが正解よ。あのナイフには微量だけど魔力が込められていた。だからわかったのよ。「障壁(Barrier)」を突き破ったのだって、おそらく魔力が上乗せされていたからよ。まあそれ込みの私の華麗な回避だったんだけどね。」


 ドヤ顔を見せつけるテルル。

 だが、なるほど魔力か。

 魔力を感知することなんてできるのだろうか。

 少なくとも俺は気がつかなかった。


 それに、ロイは魔法使えたんだっけ?

 確かあいつ、魔法の才能はからっきしだったはずだ。

 それがどうして…。


「なあテルル、さすがに勘だとは思えないんだが、何か加護を持っているんじゃないか?」


 隠された才能というよりかは、隠してあった加護というか。

 そういうものがあるんじゃないだろうか。

 

 だが、そこでテルルは初めて笑顔を消した。

 不意に目の焦点が合わなくなり、ぼんやりと何かを呟いている。

 …どうしたんだ?


「テルル。」


「……っ……」


「おい!」


「…っ!どどどうしたのよそんな大声で!」


「お前こそどうした?さっきから意識が飛んでたぞ。」


「へ。え、ああ。ああ!なんでもないわよ。」


 慌てたようにテルルは首を横に振り、次の試合の準備をしようと魔導隊のもとに行く。

 なんか変なんだよな。

 

 思えばあの時からどこか様子がおかしかったのだ。

 制度変更の式の前の日あたりから、どこかテルルの自信がなさげだった。

 急に俺にいろいろ教わりたいとか言ってくるし、不意にぼうっとすることもあった。

 魔導隊を引っ張る自信をなくしたのか?

 いや、テルルはよくやっているし、慕われてもいる。


 それに俺に頼りだすというのもなんだかあいつらしくない。

 前までは俺を目の敵にしているようだったが、最近はそんなこともなくなった。

 単純に仲良くなったと言えばそうなのだが、不自然な気がする。


 …まあいいや。

 くるべき時がきたらこのわかだまりも解決する。

 俺は前世の時から楽観主義なのだ。

 

 さて、次の試合は


 レイ対テルルだ。

 テルルの魔法の威力は馬鹿にできないものがあるし、俺だってテルルに負けた身だ。

 レイが敗北することもあるかもしれない。

 

「ではではでは!やってまいりました決勝戦!我らが女神、テルル様!対するは前回の試合で異常なまでの戦闘力を見せつけたレイ様!一体どちらが勝つのでしょうか!!」


 二人は闘技場の中心で向かい合い、周りは歓声であふれている。

 レイは前回のユーバ戦で強さを見せつけたので、もう格下と侮られることもなくなった。

 

 二人がお互い睨み合い、


「レイちゃん。私は優勝を目指しているのには、理由があるの。」


「…?テルルさん?それは聞いてもよろしいのでしょうか?」


「…私が負けたらね!」


 言葉を交わし合う。

 優勝を狙う理由か。

 そんなものがあるのか。

 

 っていうか、俺たちはなんでこんな大会を開いたんだっけ。

 …まあいいや、忘れてしまったのなら仕方がない。


 実はたった一つの菓子の所有権を巡ってなどと言ったしょうもない理由を、その頃の俺はとっくに忘れていたのだった。

 ただ、この二人の勝敗をこの目で見たい。

 それだけが今の俺の思いだ。

 

 静寂の後、それを突き破るように、


「始め!!!」


 ———試合が始まる。

 


少し書き溜めが怪しくなってきたので、もしかしたら一日休むかもしれません。

明日は投稿いたします。

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