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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
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一章 第八話 軍師試験本番

 俺はジョバンニ。

 いきなりだがよろしく。


 さて、俺は今日、グランベル国王の名にて軍師試験の試験管をしている。


 しかし、俺は辟易していた。

 なぜなら受験者の大抵が、子供。

 それも、「軍師ってカッケー!」というような人たちである。


 これを一人一人試験しなければならないのは面倒である。


 試験方法は、戦場におけるあらゆる状況を問題として提示し、対応策を答えてもらうというのような感じだ。


 最も、子供たちに対しては、試験の目的を訊いて、くだらないものだったら即返しているのだ。

 もちろんサボりではない。

 第一ビラに「生半可な理由で参加しないように」と書いてあるのだ。

 来る方が悪い。

 

 そう言いながらも俺は、次の受験者を呼ぶ。


「288番!」


「はい」


 子供の声だ。

 またかとガックリする。


 扉を開けて入ってきたのは、10歳ほどの男子だった。

 

 第一印象は、異様に臭い。

 そして汚い。

 もしかしたら、ホームレスなのかもしれない


 しかし、スカイブルーの髪から覗かせた顔は、いわば神秘的で、綺麗だ。

 眼には、子供とは思えない理性が伴っていた。


 ふむ。

 好奇心で受験した子供よりかは幾分か違うみたいだが、所詮子供だ。

 お決まりの質問を尋ねる。


「君、この試験を受けたのはなぜかね。」


 下らない理由だったら帰ってもらうぞ。

 そういう意志を込めた目でその少年を見ると、少年は、何もかもを見透かすような目をこちらに向けて、言う。


「俺は、先月襲撃された村の生き残りだ。」


「…そんなバカな。」


 先月襲撃された村、それはシネマ国に襲撃された村に他ならない。

 確か、剣士セキ様もいらっしゃったはずだ。


 生き残りはいないと訊いていたが、まさか。

 その少年は続ける。


「俺は村を取り戻したい。軍部に入って、指揮を担当することであの村を取り戻したい。」


「…なるほど。」


 分かったことがある。

 この少年は、決して好奇心で受験したわけではないと言うことだ。


「では、試験を始めよう。」




 なんだ!?なんなんだこの少年は。


 今まで10の問題をやってきたが、全てにおいて正解している。


 例えば…


「相手が包囲殲滅を狙って横に広げた陣形で構えている。自身の兵は少なく、相手以上に陣形を広げることはできない。この場合、どうすれば良いのか。」


「中央突破を提唱します。機動力に優れた騎馬がいるのであれば、一気に相手を突き破るべきでしょう。」


「ほう、では騎馬がいないのであればどうする。機動力は相手の歩兵とと同等とすると?」


「撹乱を提唱します。魔法を使って、相手の機動力を失わせ、その隙に突入します。」


「では、魔法使いも使えない場合は?」


「状況にもよります。相手との兵との差が少しの場合は、斜めに隊を並べるのも手かもしれません。しかし、兵力が歴然とした場合、撤退が望ましいかと。」


 うん、よくわかんねー。


 俺は戦術について詳しいわけでもない。

 ただの試験官。

 予め渡されていた答えと照らし合わせて、合ってるんじゃねとやっているだけだ。


 この日のために、少しだけ勉強をしたのも事実だが…。


 というか、俺の話をしている場合ではない。

 

 今まで、10問正解したものはいない。

 

 大抵が門前払いを食らっていて、そうでなくても、せめて5問正解がいいところだ。

 というか、このクロノオでは基本的にまだ戦術というものが広まっていない。

 今まで国王が全て指揮をしていたからだ。


 しかしこの少年は、10問正解しておきながらも、(これで終わりですか?)みたいな目線をこちらに向けてくる。

 

 それに、実力も確かなもので、常に的確な答えを出していて、さらに撤退を選択肢に入れている。


 どうやらとんでもない人材のようだ。




 俺は拍子抜けしていた。


 なんだ、こんなものか。


 どうやらこの世界の戦法は、前世の明治時代あたりで止まったいるらしい。

 基本的なことしか聞かれない。


 試験管も驚いているみたいだし。


 魔法使いというのが不確定要素ではあったが、予想した通り、錯乱や結界にしか基本使わないらしい。

 もっといい使い方があると思うんだけどな。


 そうすると、試験官はこちらをしっかりと見つめていった。


「おそらく君は試験合格だ。明日、またこの城にきてくれ。着任式を行う。」


 その眼には、初めに見せた、子供だとバカにするような眼ではなかった。

 

 それに気分が良くなり、俺は元気に


「はい!」


 と返事を返した。




 騎馬隊長部門


「122番!」


 そう呼ばれて立ち上がったのは、逞しさを身に付けた長身の男だった。

 上裸である。


 この部門の試験では流鏑馬が行われるのだが。


「なんだこいつは!」


 全ての的を、一寸の狂いもなく命中させたのだった。

 そいつの名は、ドルトバ。

 やがて、騎馬隊長となるもの


 外交部門


「うむ、躾も可愛らしさも問題ない。交渉も上出来だ。」


 そう試験官が褒め称えるのは、番号11番。

 彼女はおしとやかに笑って、


「ありがとうございます。」


 品良く礼をした。

 彼女の名はユソリナ。

 やがて、軍部外交担当となるもの。


 歩兵隊長部門


「あいつの指揮能力は素晴らしい。加護もそれにぴったりだ。」


 そう試験官に言わしめたのが、番号99番。

 彼の指先から出る光が、歩兵隊を誘導する。


「しかし…性格に難ありか?」


 これほどの才能を持ちながら、受験した理由は好奇心だけらしい。

 隊長という重い役職を引き受けられるのかは、定かではない。


 彼の名はユーバ。

 やがて、歩兵隊長となるもの。


 隠密部門


 隠密部門の試験は、一定時間内に試験会場の最奥にあるメダルを取ることである。

 道中には、様々なトラップ、それに監視員がいる。

 相当な腕前でないと試験は合格できないが…


「あれ、もう帰ってきたの?64番と65番。」

 

 そう試験官が呼びかけるのは、双子の少女たち。

 手にはメダルが握られている。


 この双子の名は、ロイとレイ。

 やがて、隠密を任されるもの。


 将軍部門


「俺は、このクロノオ軍、そしてこの国を引っ張っていけるような人になりたい。」


 将軍部門の試験はプレゼン。

 聴き手をどれだけ引き付けるかが鍵だが…。


「番号345番の俺に将軍という大役を、お与えください。」


 ただ住まいは素晴らしい。

 実力も高い。

 そして何より、イケメンだ。


 試験官が全力でそいつを推すのも、わからなくもない。


 彼の名は、アカマル。

 やがて、クロノオの将軍となるもの。


 知識補佐部門


「君、これは本当に加護を使ってないんだね。」


「ええ、もちろんです。」


 そう答えるのは、今60歳に差し掛かったところである、老人だった。

 番号1番、知識補佐部門の受験者。

 しかし、そのただ住まいに気品があり、そして何より、物知りだ。


 加護の力を使うことでその知識を手に入れていると思われがちだが、そうではない。


 彼の名はメカル。

 やがて、軍部の知識補佐役となるもの。


 魔法使い隊長部門


「おお!」

「なんだあの子は。」

「おい、中級魔法も使っているぞ!」

「ああ、結婚したい!」


 観衆がまだどよめく。


 その渦の中心にいたのは、美しい銀髪を持つ少女。


 彼女の名はテルル。

 やがて、魔法使い隊長となるもの。


 この8人、そしてヒムラは軍部としてクロノオを動かしていくことになるのだった。




「へぇヒムラはクロノオの軍師になったんだって?」


「ええ、そうみたいよ。」


「クロノオは確か北の小国。あそこの軍部か。」


「ええ、でもクロノオはいつ悪魔たちに滅ぼされてもおかしくない。」


「ああ、“嫉妬“あたりが攻めてくるかもしれない。」


「確かに、ヒムラの悪意は魔人に近いものがある。悪魔に取られるかもな。」


「まあ、その時は私がまた守ることになるけど。」


「お願いねー!」


「はあ、まあ頑張るわ。」

 




 




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