二章 第四十一話 共演NG
今日は1話分多く書き終わったので、急遽一日2話投稿となりました。
そして、先ほど「投稿時間を12時にする。」と書いたのですが、訂正させていただきたいと思います。
投稿時間は16、17時前後とさせていただきますので、よろしくお願いします。
クロノオ軍事棟のエントランス。
軍部の九人とエレメントの少女と老人、ファントムの青年二人が対峙していた。
一週間後に会談の約束をしたエレメント。
二週間後に会談の約束をしたファントム。
だが、実際はなぜか二国同時に訪問してきたのだ。
二週間後に来るはずだったファントムが一週間早くきている。
おそらくはわざと。
何が狙いなんだ?
「ファントムの会談は一週間先だったはずだ。なぜ来たんだ?」
「ファントム国王である俺に対してたかが小国の軍師である貴様が、タメ口を聞いて良いのか?」
「約束を反故にし、その上自分の立場すらもわかっていない人に言われたくない。」
ペレストレインの言葉に言い返す俺。
別に怒っているわけではないが、何が狙いなのかを探るために高圧的な態度を取るしかないのだ。
「約束を破ったのはすまないとはおもっている。」
おっ?意外と反省しているのか?
だが、申し訳なく思っているならそもそも来るなという話だ。
何か裏があることは間違いない。
「なぜ一週間も早く来た?正直なところ、迷惑極まりない。」
とりあえず直球で尋ねてみた。
その言葉をペレストレインは鼻で笑うと、
「ふっ。こうもハブられることは、ファントムは一度や二度ではない。会談を拒否、先延ばしにされ、今までまともに会談した国は少ない。だからこうやって無理やり押しかけてくるのが普通なのだよ。クロノオもどうせ、結論が出ないと言ってファントムとの会談は先送りにするつもりだったのだろう?」
ええと?
つまりは、今までいろんな国に散々相手にされてこなかったし、約束の日にきてもこなくても変わらないから今きたということか?
なんて自分勝手なのだろうか。
そしておそらく今まで相手にされてこなかったのは間違いなくファントムの怪しさゆえなのだろう。
ますます信用が置けなくなってきたぞこの国。
まあクロノオは別に延期する予定もうやむやにする予定もないので、俺はペレストレインに、
「なるほど。だが我々も会談はきっちり二週間後に行うと約束しよう。」
「そう言って今まで騙されてきたんだ。それに今回はエレメントを先に招待するなんて、完全にエレメント贔屓じゃないか。俺たちはクロノオと仲良くしたいと思ってこうやって手紙まで出して対等な交渉だってしようとしているのに、ひどいんじゃないか?」
ペレストレインがますますヒートアップして言い散らす。
対等な交渉だって?
塩の製造方法と何であるかさえもわかっていない品を天秤に乗せておいて、対等な交渉だと!?
馬鹿げている。
とりあえず追い返そうかと思った時、脇で静かに聞いていたグルームがペレストレインの前に出て、
「えっとお、ペレさんの要求と飲まなあいと、僕が暴れ出してたあいへんなことになあるよ。」
と、こちらを脅してくる。
確かグルームはファントム最強の戦士だったはずだ。
強いのは確かだろう。
だが、ここにいる軍部の皆で押さえ込めば何とかいけるんじゃないか?
そう思って皆を見てみると、皆ブンブンと首を横に振っている。
どうやら俺の目が「こいつ皆で押さえ込んだらいけんじゃね?」と、雄弁に語っていたようだった。
それを皆全力で拒否した形だ。
それにしても、そんなに強いのか?
まあいい、皆が危険だというのなら危険なのだろう。
仕方ないが提案を飲むことにした。
「わかった。ファントム側の提案を飲もう。今日会談とする。」
「わあい!」
「やっと了承してくれたか。まさかグルームをけしかけてやっと話を聞いてくれるだなんて、野蛮にも程があるよ。」
不本意ではあるが、今日は三国同時会談となったのだった。
「というか、グルームってそんなに強いのか?」
「ええ強いですよ。」
ユソリナが皆を案内している中、アカマルにグルームの強さを聞いてみると、こう返ってきた。
アカマルはため息をつくと、
「グルーム・オーヴェンチャイルズ。ファントム最強の戦士にして、「破壊」の二つ名を持つ者。彼の戦闘力はヒムラ様と同程度だとは思われますが、彼が戦うと周りの被害が大きくなるのですよ。」
なるほど。
だから二つ名が破壊なのだろう。
「だから先程止めさせてもらったのですが、」
「ああ、ありがとな。」
あの時止めてくれなければ、グルームと戦っていたかもしれない。
勝ち負けはともかく、軍事棟を破壊される可能性があるので、その選択肢は取らなくてよかった。
まあ俺があの時追い返しても追い返さなくても、あのしつこさならばまたくるに違いない。
今ここで会談をしてしまった方が後々楽だ。
逆にエレメントも交えることで無理難題を押しつけられる事も減るのではないだろうか。
今はポジティブにとらえるしかないだろう。
「皆様お集まりいただきありがとうございます。では、これより「クロノオエレメントファントム三国合同会談」を始めさせていただきます。」
ユソリナがそう宣言し、会談が始まる。
自分の国が一番最後にあることにペレストレインは不平を言っていたが、自業自得だ。
今回の会談は、極論で言えばクロノオと二国の交換交渉といったところだ。
こちらが差し出せるのは、ファントムに対してはクロノオの塩の製造方法。
エレメントに対しては貿易権だ。
俺もエレメントと貿易をしたいと思っているので、権利を与える側となるのが少しへんな気分なのだが…。
まあエレメントがどれほどこちらに誠意を見せてくれるのかが重要だな。
仮にエレメントが大国という権威を振りかざして高圧的に接してくるようであれば、つっぱねるだけだ。
「では、まずは我らとクロノオに関しての会談ということで大丈夫ですかな。」
エレメント側に座っている老人、先程ザンと名乗った人物が、こちらにそう確認をとる。
俺が了承しようとすると、すぐさまペレストレインが、
「待て、そちらの会議は長引くだろう?薄汚れた薬品臭いエレメント如きが、高潔なファントムより先に交渉を行うつもりか?我らとクロノオの交渉は、確認作業をするだけだ。なぜなら了承してもらえることが確定だからな。わかったのなら先を譲れ。」
「ふん。自国を馬鹿にされて、黙っておられるものがいるか!ヴィルソフィア様もさぞお怒りですぞ!貴様らは約束を反故にしてきたのだろう。正当な権利を有するのは我らじゃ。文句を言わんでさっさと譲れ!」
「薄汚れたマッドが!下品で貧相な目をこちらに向けるな!」
「何を…!」
なぜか言い争いを始めるザンとペレストレイン。
何なんだこいつら。
仕方がないのでアカマルに『扇動の加護』を使わせて、この場を収める。
言い争っていた二人も、加護の影響下に入ると、渋々と言い争いをやめた。
あれだな。
こりゃ仲悪いな、ファントムとエレメント。
同席させてはいけないタイプだった。
あれか?共演NGみたいなやつか?
必ず喧嘩をするというやつか?
まあいいや。
きてしまったものは仕方がない。
アカマルには『扇動の加護』を常時発動させ、お互いに気が向かないように仕向けなくてはな。
というか、何で俺たちがこんな気遣いをしてるのだろうか。
…まあ、この会談を実りあるものにするためだ。
仕方ないと割り切って頑張ろう。
ペレストレインを放り出したい気持ちでいっぱいだが、大丈夫!
何とかその場を収めた俺は、会談を再開させる。
実はこれは、後に大きな問題に発展する重要な会談なのであった。