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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第三十五話 クロノオシネマ連合軍vsデトミノ1

 アカマルたちはすぐに志願兵たちを集合させ、シネマの救援に向かった。


 そして、道中でアカマル、テルル、ユーバ、ドルトバは戦力について話し合っていた。

 それなりに高級な馬車の上で、アカマルは口を開く。


「確か、シネマが1万ほどの歩兵隊に魔導隊五百人。騎馬隊200人ほどだったはずだ。ただ、兵個人の戦力は確かお粗末なものだなものだ。」


「そうね、たいしてデトミノは悪魔の国だけあって個人の戦力はD相当。魔法使いも騎馬隊も一般人のレベルを超えているはずだわ。」


「シネマだけじゃ勝てないかなー?」


「ワハハ!だから俺たちがこうして向かっているのだろう。」


 天使と対になる存在としている悪魔。

 魔人の中でも力あるものが進化した存在。

 その国家の戦力も馬鹿にならない。


 天使や悪魔の国家は少々特殊な方法で、個々の戦闘力を上げることができる。

 よって、悪魔の国の民は全てD少々の戦闘力を有している。

 デトミノは民を1万名ほど徴兵したようだ。

 もともと個人の能力も強い上に、数も揃えているのであればシネマでは到底対抗できなかったであろう。


 戦闘訓練をしているクロノオの兵士たちなら、互角に渡り合うことができるはずだ。

 だが、


「こちらは千五百に対してあちらは1万。戦力が足りなすぎるよー。」


 ユーバが深刻そうな声で呟く。

 そう、数字だけを見ればクロノオとシネマが数を合わせても対抗できるかは怪しい。

 だが、


「俺たちには今まで訓練してきた作戦がある。」


 アカマルはユーバをそう励ます。

 そう、クロノオの兵士はここ一ヶ月の間、ヒムラが考案したいくつかの戦法を必死に訓練して身につけたのだ。

 それも全てヒムラが歴史上の有名な戦術を流用しているだけなのだが、勝つことが優先される戦場で、そんな事は気にしていられないというのがヒムラの言い分だった。


 アカマルはシネマ国から譲り受けていたシネマ内の地図を広げる。

 そして、デトミノ軍が行軍してくると予想されるルートの一つを指し示す。


「おそらく奴らは山脈地帯を迂回してこちらに向かってくる。平原を通ってこちらにくるはずだ。」


 シネマとデトミノの間には大きな山脈が横たわっている。

 しかし、この山脈は途中で途切れており、その先には真っ平らな平原が広がっていた。

 つまり、デトミノ軍は山脈を超えてまっすぐ進むのではなく、山を迂回し平原を進むと考えたわけだ。


 アカマルの考えに皆が頷く。

 

 クロノオをでて二日ほど。

シネマ軍との合流場所に到着する。




「おお!助太刀感謝いたしますぞ!」


「いえ、友好国を助けるのは当然のことです。」


 パラモンドの感謝の言葉に、笑って返すアカマル。

 彼の潜在的な人たらしの能力は、パラモンドにも有効だったようで、早速アカマルに対して好意的な笑みを浮かべている。

 だが、笑っていられないのも今の状況だ。


「では、早速会議を開きましょう。」


 パラモンドが音頭を取る。

 そして、パラモンドにカスタル王、アカマルとユーバとドルトバとテルルが地図を囲んで話し合いを始める。


「まず、真正面から戦ったら勝てる見込みは少ないと思われます。」


 パラモンドがとりあえず今の状況を端的に表す。

 状況は切迫。

 時間はない。

 戦力も劣る。


 つまりは、


「奇策を用いるしかない、と。」


「ええ、ですがその準備もあまり進んではいません。」


 アカマルの言葉にパラモンドが申し訳なさそうに項垂れる。 

 何せ宣戦布告からまだ四日しか立っていないのだ。

 パラモンドとカスタル王がヨルデモンドに滞在しているときに、デトミノから宣戦布告があったらしい。

 そしてパラモンドたちがシネマに戻る途中にそれを知らされた。

 もともと余計な従者はつけずに五人ほどでヨルデモンドに来ていたシネマ一行は、早馬で一日中走り続けてシネマに戻った。

 そしてカスタルについてすぐに兵を徴収し、今に至るのだそうだ。

 もともと前回の対クロノオ戦でまだ王都に残っていた兵士もいたので、なんとか1万人かき集めることができたのだ。

 1万人の兵を即座に徴収するというのは本来であれば不可能なわけだが、シネマは領土も少ない上に皆がパラモンドに対して好意的だったので、それが功をそうしたわけだ。

 そして1万の兵を率いて今デトミノとの国境にいるというわけだ。

 そして救援要請を受けたクロノオ軍が半日後に到着というわけだ。


 そして、肝心のデトミノ軍だが、おそらくあと一日ほどでこのシネマとデトミノの国境にくるだろうと予想されている。

 それまでに準備を全て完了しなければならない。


「では、まず改めて国境の地形を確認しましょう。」


 パラモンドはそういうと、クロノオの持っているものよりも幾分か正確な地図を広げる。


|デトミノ軍|

  ↓

))

))))

 ))))))

山 )))))))   平原

))))))

))))

))   |シネマ・クロノオ軍待機中|


「現在の立ち位置はこのようになっています。」


「…。」


 アカマルは地図を見て状況を把握する。

 アカマルはたまに抜けているとことがあるが、頭は回る方である。

 作戦を立てることもできるくらいには。


「この状況だと、デトミノ軍は必ず山を迂回してこちらにくる。そしてこの平原で戦うことになるのは間違いなさそうだ。」


「ええ、ですからこちらの戦場で戦うことができるわけです。それが唯一の利点と言ってもいいほど。」


 アカマルの言葉にパラモンドが頷く。

 そして、すぐさま一つの提案が思い浮かんだ。

 それは、


「デトミノ軍を包囲する。」


「ええっ!」


「包囲って、そんなの数も足りないし…。」


 アカマルの言葉にユーバとテルルが反対の声を上げる。

 そう、包囲殲滅とは自分の軍が相手より多くないと成功するのは難しい。

 それに仮に包囲できたとしてもシネマ軍の脆弱な兵士はあっさりと突破されてしまうだろう。

 だが、アカマルはそのこともしっかり考慮に入れている。

 相手を囲うことだけが包囲殲滅ではないと。


「だから、数が足りないのなら持ってくればいい。その場にあるのであれば利用すればいい。山を包囲するための一つの壁となってもらう。」


 そう言ってアカマルは地図に書き込みをする。


))

))))

 ))))))

山 )))))))   

))))))|デトミノ軍|←|クロノオ軍|

)))) |シネマ軍 |

))


「つまり概要はこうだ。まず攻めてくるデトミノ軍をシネマの兵で足止めする。そしてその間にクロノオの兵が側面から攻撃を仕掛ける。デトミノ軍は地図上の右に逃げようとするが、山に阻まれて逃げることができない。そしてデトミノの兵が後ろに逃げ始めたらこちらの勝ちだ。追撃して勝利する。」


「おお!」

「いい作戦じゃねーか。」


 ユーバとドルトバがそれを見て歓声を上げる。

 一見すると完璧な作戦だ。

 ヒムラに戦術を教えられているのは今のところアカマルだけだ。

 もしもの時にという備えのために教えてあったのだが、それが功を奏した。

 

 だが、


「一つ質問をよろしいでしょうか。」


「ああ。」


 パラモンドが不安そうにこちらに尋ねてくる。

 それを許可すると、パラモンドは咳払いをして、ある懸念を話す。


「アカマル殿の作戦は素晴らしいのですが、おそらくはクロノオ兵とデトミノ兵は互角。側面攻撃にも時間は要すると思います。その間にシネマの兵が食い破られる可能性は高いかと。」


「あっ、確かに。」


 パラモンドの見解にテルルが今気づいたような声を上げる。

 実際、シネマ兵はデトミノ兵に比べて幾分か弱い。

 クロノオの側面攻撃が滞った場合、シネマ軍がデトミノに中央突破される確率は非常に高い。

 だが、そのこともアカマルは織り込み済みだ。


「そのために罠を仕掛ける。落とし穴でもなんでもいい。少しでもシネマ不利を解消できるようにしよう。」


 罠を仕掛けるという、単純だが効果的な戦法。

 

 アカマルはとりあえずの打ち合わせは終わったというように立ち上がり、


「では、そのような手筈でいく。レイはクロノオに戻りお戻りになられたヒムラ様にことの顛末を伝えてくれ。」


「承知しました。」


「では、絶対に勝つぞ!!!!」


「「「おおっ!」」」


 


地形の理解をしやすくするために記号で地図を書いてみました。


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