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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第三十二話 ノクアレンvsヨルデモンド3

「ほう、今までは戦争ではなかったと。」


 とりあえず状況を理解したザガルはそう、ノクアシスに尋ねる。


「ええ、多数で少数をいたぶる。これのどこが戦争といえましょうか。」


「いたぶると言う割には、かなり苦戦したがね。」


「まあそれでも、そちら優位には変わりなかった。ですので、僕が手を加えたまでです。」


 そう言ってノクアシスは周りを見渡す。

 確かに、「白竜の剣」の中の強者100名ほどに、ノクアレン兵100名。

 ちょうど数は一致している。


「これから一対一で決闘をしてみてはどうでしょう。」


 そう、ノクアシスが全員に聞こえるように言う。


「もし、ヨルデモンド側の勝ち数が多ければ条約を飲んであげましょう。ですが、もしこちらが勝ってしまったら、天使国家には今後千年何かを押し付けることも命令することも禁止とします。」


「…なっ!」


 ザガルはその提案に驚く。

 明らかにヨルデモンド側に利のある決め事だ。

 ヨルデモンドがこの戦争に負けたとしたら、天使国家の脅威をまた焼き直すことになる。

 天使国家に命令したり押し付けたりする輩などでてこないだろう。

 わざわざ明言する必要も、賭けの材料にする必要もない。

「そうするとノクアレン側の利益は少ない。何か企んでいるのか?」


 ザガルはノクアシスにそう尋ねる。

 何か企んでいるのであれば暴き出さないといけないと、そう覚悟を決めて。

 だが、ノクアシスの答えは拍子抜けな者だった。


「何も企んではいませんよ。ただ、この戦いに興味があるだけです。」


「…そう言うことか。」


 ノクアシスの考えは単純明快。

 ただ、ノクアレンとヨルデモンドの対決を見たいと言う欲望で動いているのだ。

 ただの好奇心。


「なら、始めようではないか。」


 ザガルはそう言ってノクアシスに賛同する。

 ザガルは「白竜の剣」に向かって、


「貴様ら。必ず勝て!」


「「「ハッ!」」」


 「白竜の剣」の皆が決意を固めたように叫ぶ。

 幸い、この場にいる「白竜の剣」は全てAである。

 それに日々の戦闘訓練よりSに至ろうとする者もいる。

 十分以上にこのノクアレン兵とやりあえる。


 ノクアシスの方も配下に声をかけている。

 意外と配下を大切にするタイプなのかもしれないと、場違いにも思った。


 そして、両軍が向かい合う。

 ヨルデモンド対ノクアレン。


「始め!」


 今ぶつかり合う。




 ザガルは、不意打ちでノクアシスに斬りかかった。

 ノクアシスはなんでもないように質問する。


「あなたも戦うのですか?」


「ああ、部下が戦っている横で見ているだけじゃつまらない。」


「それもそうですね。お相手して差し上げます。」


「ありがとよ。それにしても、全く当たらないな。」


「申し訳ありませんが、加護の力なので。」


 確かにノクアシスにはナイフが当たったような気がするが、やはりすり抜けてしまう。

 全く手応えのない相手だ。

 なら、


「全力をぶつけるのみ。」


 ザガルはそう呟くと、背中にある大剣を引き抜いた。

 小さい頃から愛用していて、数多の敵を葬り去った剣だ。

 ハンデルによって魔力エネルギーが常時剣に纏っている、いわば魔剣だ。


 それをみて流石のノクアシスも唸る。


「なるほど、それがヨルデモンドの技術力。」


「今ここで、お前を切ってくれるわ!」


 ザガルはそう言うと、一気にノクアシスに斬りかかる。

 それをノクアシスは後方に軽くジャンプして避けた。

 そう、避けたのだ。


「まさか、魔剣は当たるのか?」


「当たらずとも遠からず、ですかね。」


 そう言ってノクアシスは笑って、空を飛んだ。

 だが、そこはザガル。

 幼い頃から持っていた『大空の加護』のよって、たやすくノクアシスに追いつく。


 そしてそのまま魔剣をノクアシスに向かって突き刺す。

 攻撃は当たる、防ぐ手立ては持っていない。

 確実に一発食わせられると思ったザガルは、次の瞬間起きたことを受け止められない。


「…はあっっ!」


 ノクアシスの掛け声。

 そしてノクアシスはその魔剣を殴りつける。

 すると、その魔剣が折れたのだ。


「なっ!」


 ザガルは驚きのあまり声を上げる。

 折れた魔剣の刃がザガルの胸にのめり込む。


「ぐあっはああ!」


 魔剣のキレ味はそれこそ国内最高レベルだ。

 心臓に到達しそうなほどに傷を深く抉られ、叫び声を上げるザガル。

 痛みに耐えかね、自然とザガルは『大空の加護』を切ってしまった。

 そしてそのまま、地面に落下。


 盛大に地面と激突。

 一気に世界が反転し、鈍い痛みと鋭い痛みの両方が襲い掛かる。

 折れた剣は以前ザガルの体に刺さったままで、その苦しさに吐きそうになる。


「ぐそっ!」


 血反吐を吐きながらなんとか立ち上がる。

 普段体を鍛えているのと頭から落ちなかったのが幸いし、なんとか死は免れた。

 誰か青魔法を、そう思って周りをみて、さらに絶望した。


 「白竜の剣」の皆がどんどんノクアレン兵にやられている。

 確かにノクアレン兵は強いが、それでも「白竜の剣」が勝つ見立てだった。

 それがなぜ?

 実力を隠していたのか。

 全くわからない。


 そして、ノクアシスも目の前に降り立った。


 その姿に戦慄する。

 先ほどの魔剣への打撃。

 あれだけで魔剣が折れることなど、ありえないはずだ。

 それをしてのけるノクアシスをみて、遅まきながら理解する。


 ノクアシスは、加護ばかりが全てのハリボテではないと。

 素手でやり合っても勝てるような相手ではないのだと。


 SがなんだSSがなんだ。

 全く基準が意味をなさない。

 ノクアシスは自分ではSSだと言っていたが、あれでも謙遜したのだろう。

 下手すれば最高レベルSSSまで届くほどの強者だ。


「そろそろ茶番は終わりそうですね。」


 ノクアシスはそう呟く。

 おそらく彼にとってみれば全て茶番だったのだろう。

 圧倒的な力の前には何が立ち塞がっても無力だ。

 

「この戦。我々の勝ちということで。」


 ノクアシスはそう呟くと、ノクアレン兵に声をかける。

 ノクアレン兵たちも少し退屈そうに戦いを続けていた様子なので、戦闘への感慨もなく戦闘を終了させる。

 そして、


「もう戦争は終わった。帰ってもいいぞ。」


 とノクアシスは大声で叫ぶ。

 すると、空から六つの影がノクアシスに向かって集まっていくのををみた。

 

「まさか!?」


 ザガルはその影の正体に思い当たり、これから何が起こるのかを理解する。

 その影たちは、


「ねえねえノクアレン。終わった?終わった?」

「ほらほらハナビ。ヨルデモンドさんたちが倒れているでしょう。無事勝利よ。」

「まあ確率は98.2%ほどでしたからね。絶対に勝てるというわけではないですがひとまずは喜ぶとしましょう。」

「もっと素直に喜べってんだよっ。」

「勝利か。」

「…。」


 七人の天使たちが、ノクアシスの元に集まってきた。


「皆おつかれ。」


 ノクアシスがそう皆をねぎらう。

 その様子を見ながらザガルは死力を振り絞って立ち上がり、問う。


「まさか今天使たちが揃ったってことは、俺たちを皆殺しにする気か?」


 今のタイミングで天使たちが出てきたということはそうだろう。

 後始末を彼らがやる予定だったのだろう。

 最初から嵌められていたと悔しがるザガル。

 だが、


「皆殺しなんてそんな物騒なことするわけないですよ。もう帰ってもいいですよ。」


「なっ!?」


 ノクアシスはザガルの考えを鼻で笑う。

 そうか、そういうことか。

 ザガルはやっとのことで全てを理解した。


 まず、そもそも嵌められたとかそういう前に、ノクアシスはこちらを脅威と捉えていなかった。

 ただ楽しむためだけに全てを用意したのだ。


 それを理解したザガルは、その場にへたり込む。


「では、条約には参加しませんので。」


 ノクアシスはそういうと、ノクアレン兵を引き連れて立ち去っていく。

 他の天使たちも自分たちの国の戻っていく。


 そして、


 あとは、無残にも負けたヨルデモンド兵が残されていた。




「…ってなわけで、「白竜の剣」はその二割ほどを失い、その他の兵も8割方最初のノクアシスの攻撃で吹っ飛ばされ死亡した。」


 ザガルはそう話を締めくくる。

 俺はそれを神妙に聞いて、一言。


「…バケモンだな。」


 

 


 


はい、二章の戦争一つ目が終わりました。

2、3話後に二つ目の戦争です。

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