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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
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一章 第六話 軍師試験について

俺は明日あるであろう試験の為、情報収集する必要があった。


 なんとしても試験に合格しなければならない。

 というか、そもそも試験でなにが問われるのかも知らない。


 ここで、軍部の募集要項をおさらいしておこう!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 クロノオ王国軍部設立について。


 この度、クロノオ王国は軍部を設置することになった。軍事を司る重要な役職だ。試験を行うが、決して生半可な理由で参加しないように。選抜には、身分は問わないものとする。


軍部試験一覧

  軍師部門、将軍部門、歩兵隊長部門、騎馬隊長部門、魔法使い隊長部門、隠密部門、知識補佐部門、外交部門


試験は明日、日が昇る頃に行う。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 これを見る限り、部門ごとに試験があるらしい。


 軍師部門…まあ、俺に一番適している気がする。多分軍師って軍の奥の方で指揮するだけだろう。剣さえ振れない俺にぴったりだ。


 将軍部門…同じく俺に向いてそうな部門だ。奥の方にどっかり座ってそうだし。でも、おそらく試験では戦闘能力が問われるのだろう。自分には無理な気がする。


 歩兵隊長部門…将軍部門と同じで、戦闘能力のない俺には試験は超えられないだろう。それに前線に行きそうだし。


 騎馬隊長部門…まず馬に乗れなければ無理だろう。


 魔法使い隊長部門…魔法を使えなければ無理。というかこの世界に魔法なんてものがあったのか。そういえば村で使ってる人がいたような…。


 隠密部門…まあなんともいえない部門だ。戦闘能力も必要としそうだし。保留かな。


 知識補佐部門…これもまあ戦術のことに関していえばできるかもしれない。しかし、おそらく国家情勢のことなどに関しての知識なども必要としそうだし、この世界に慣れきっていない俺が試験を突破できるわけがない。


 外交部門…外交かあ。外交。正直俺は村を取り返しに軍部に入ろうとしているのであって、外交をする為に軍部に入るわけじゃない。却下だな。


 これらの事を顧みるに、軍師部門が一番性にあっている。


 前世の歴史教師、そして戦術オタクだった頃の知識も役立つだろう。


 試験は明日。ここでなんとしても俺はこの試験を突破しなければならない。

 だが、いくら歴史上の戦術を知っていたとはいえ、それがこの世界の戦術に適応されるわけではない。

 下調べはしなくてはならないというわけだ。


 というわけで、誰かに戦術のことについて聞きたいのだが…。


 周りを見渡す。

 

 買い物客が物珍しそうに商品を見ている。

 商人が大声を上げて、商品の宣伝をしている。

 あるとことでは喧嘩が起こっている

 またあるところでは男女がキスをしている…いや、それはやめといたほうがいいと思うぜ。


 まあ、見て分かる通り戦術に詳しそうな人は誰もいない。

 となると、やはり他のところに行って聞き込みをするしかないな。

 

 そう考えると、俺はこの街のさらに中心、王国の城の下、戦争の時には兵の集合場所となる、クロノオ広場に行くことにした。



 クロノオ広場、初代国王が建国を宣言した場所。


 今は真ん中に初代国王の石像が建てられている。

 その石像を取り囲むようにして、屋台が並んでいる。

 雰囲気は繁華街と同じだ。


 唯一違う点は、買い物客が国家関係者であるということだろう。

 そしてこの広場は俺たちのような身分の怪しい者でも入ることのできる。


 つまり、ここにいれば国を動かす幹部の者、重鎮、貴族、運が良ければ国王までにも出会えるかも、というわけだ。

 ここで、俺は軍の関係者に会えないだろうかと考えていたのだが…。


 広場に居座ってどれだけ立っただろう。


 太陽は沈みかけている午後5時(適当)。

 それらしき人には全く会わない。

 大抵が商人が平民だ。


 というか、俺が軍の関係者を見分けられていないのだろうか?

 軍部がないというし、関係者も軍服を纏わないのかもしれない。


 そうやって悶々と悩んでいる俺に、語りかける人がいた。


「これは…小僧ではないか。」


「あっ…また会いましたね。」


 そう、俺のもとに近寄って語りかけた人、先ほど俺に銅貨10枚をくれた人


「マルベリー・ニュートンさん」


 貴族、マルベリー・ニュートンその人である。




「ハハハ、小僧、軍師になりたいのだな!面白い。」


 俺は今、ニュートン家の屋敷の別館で、紅茶をすすっていた。

 なぜ別館なのかというと、マルベリーさんの親父が平民嫌いなので、本館にホームレスの俺を入れるわけにはいかなかったのだ。

 それにしても…


 このマルベリー・ニュートン。

 人が良すぎる。

 平民、身分が怪しい、ホームレスの三拍子揃っている俺に、お金をあげるだけでなく、家にまで招待させる。


 これがこの世界の常識なのだろうか。

 俺は前世の貴族のイメージに囚われているのかもしれない。

 

「まあ、軍師は才能で全て決まるとも言われる。というか、今回の試験では経験や知識は基本問わないらしいからな。」


「そうなんですか!それなら勝機はあります!」


 正直才能を測るとは言っても、あやふやなものだろう。

 自分に才能があるのかは分からないが、もしかしたらあるかもしれない。

 

「ふむ、本気で目指しているようだな。」


「ええ、まあ。」


「なぜそんなに軍師、引いては軍部に入りたがる。」


「まあ、端的にいえば復讐ですかね。」


 自分のこの気持ちは復讐心であっているのだろうか。

 

 剣が振れなかった後悔もある。

 親しい人が刺されたという恐怖もある。

 ホームレス生活の苛立ちもあるかもしれない。

 それは、俺にも分からない。


 でも、軍部に入って村を取り戻したいという気持ちはたしかで、それに従わない道理はない。


「まあよく分からんが、頑張れ小僧。」


「ありがとうございます。」


 そう言って俺は部屋を出ようとして、最後に振り返って尋ねる。


「なんで俺をここまで助けてくれるんですか?」


 そういうと、マルベリーは少し悩む素振りを見せたが、口を開く。


「もちろんお前が小僧だからというのもある。小僧が物乞いしてきたら気になるであろう。」

 

「まあ、そうですね。」


「もう一つ理由がある。」


 そういうと、マルベリーは自分の胸、心臓のあたりを指して、


「俺は加護持ちなんだ。」


 と言う。


 加護?なんだそれは。


「加護とは、神から与えられた能力のことだ。」


 マルベリーは言う。


 んー、まあゲームやラノベで出てくる加護と大差ないようだ。

 マルベリーの説明で納得がいった。

 つまるところ、チート能力。


「そして俺は『オーラの加護』を所持している。」


 マルベリーは言った。

 『オーラの加護』とは、相手のオーラを見ることができる加護である。


 って簡単に説明されても、分かるわけないじゃん!

 オーラってなんだよ。

 

 そんな俺の疑問に答えるが如く、マルベリーは続ける。


「まあオーラというのはな。つまるところ善意と悪意の話だ。天人が持っている善意、そして魔人が持っている悪意を見ることができる。」


 あーそういえば前に母親が言っていたような…。


 確か善意をこころに宿すものが天人で、悪意をこころに宿すものが魔人なのだとか。

 最も、それは個人の性格を指し示すものでは無いことは、俺も知っているが。


 で、マルベリーはそれを見分けられると言ったのか。

 纏めると、人を見ればそいつが善意と悪意どちらかを宿しているか、すなわち天人か魔人かが分かる、ということか。


「繁華街でその加護をお前に対して使ったのだよ。魔人の可能性もあったからな。」


「なるほど。」


 たしかに、俺が実は魔人の国の間者の可能性もある。

 天人と魔人は見た目では区別がつかないらしいからな。


「ただ、お前は違ったのだ。」


「違ったって?」

 

 俺は生粋の天人のはずだが。


「つまり、善意と悪意の両方を持っていたのだよ。」


 なに!?

 善意と悪意の両方を持つ。

 そんなことが可能なのだろうか。

 

 考えてみると、一つ、思い当たる節がある。

 異世界転生だ。

 俺は元人間だ。

 つまり、天人だが、心の中に人間の魂を宿しているかもしれない。


 マルベリーはおそらく、その人間の心を見て、善意と悪意の両方を持つと判断したのだろうか。


 つまり、人間は善意と悪意を両方もった存在、なのか?

 天人と魔人は人間から善意と悪意をそれぞれ取り出した?

 意味がわからないぞ!?


 一人悶々と悩んでいる俺を見て、マルベリーは言う。


「自覚がないのか。まあ、ともかく気をつけたほうがいい。俺と似た加護を持つ人がお前を見たら、魔人と判断されかねない。」


「あっ…ああ。」


 確かに、悪意があるかないかを見抜くことのできる加護、みたいなのがあったら、俺は魔人と判断されかねない。


 そして、天人にとって、魔人は忌むべき存在、すなわち討伐対象なのだ。


「気をつけます。」


「ああ、気をつけろ。あと、試験頑張れよ。応援する。」


「ありがとうございます。」


 天人と魔人について、善意と悪意について、人間について、転生について。


 考えることはたくさんあったが、ひとつ分かったことがある。


 やっぱマルベリーは善人だ。


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