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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第二十九話 牙王と軍師

 開始早々、俺は『神速の加護(ゴットアクセル)』を使用する。

 刀を構えて、走る。

 「思考加速」を最大限に引き伸ばして、ザガルの元に辿り着くと、刀を振り下ろす。

 ザガルは無防備だ、必ず当たる。

 

 が、


「生憎貴様の切り札はグランベルから聞いてしまった。」


 大きな剣を俺の刀に当てて、跳ね返す。

 その反動で俺は後ろに飛ばされる。


神速の加護(ゴットアクセル)』解除。


 着地し、前を見据える。

 ザガルは余裕の笑みを浮かべて、


「では、切らせてもらおう。」


 ザガルは刀を振り上げ、地面に突き立てる。


斬・大地喝采(ヘヴィーグランド)!」


 ザガルが叫ぶ。

 同時に、ザガルが剣を突き立てた場所を起点に地面が捲れ上がった。

 直後、地震のような揺れが起こり、足場が不安定になる。


 これが、ザガルの技か。

 だが、『神速の加護(ゴットアクセル)』を再使用し、神速で大地の津波を横に避けた。

 そのまま体勢を低くし、俺はザガルに向かって飛び込む。


 ザガルが体勢の低い俺を迎撃しようと、剣を地面に突き立てる。

 また、「斬・大地喝采(ヘヴィーグランド)」だ。

 大地の津波というべきか、だが、それを俺は高くジャンプして回避。

 そして、ザガルの真上を取る。


 マーチとの練習で編み出した切り札を切らせてもらおう!


 俺は体勢を逆さまにする。

 ちょうど地面に顔が向く感じだ。

 そして、


空気固定(AirHarden)!」


 緑魔法を発動。

 俺のすぐ上、つまり足のすぐ上に魔法陣が作られて、次の瞬間空気が固まり足場が生成される。

 そして、跳躍。

 

 加護をまだ使用していたので、まるで弾丸のような速度でザガルに向かっていく。

 重力加速度にジャンプ力、それを300倍。

 そして俺は剣を構える。

 ザガルの左肩を真上から引き裂くイメージだ。


 だが、


「バレバレだ。」


 ザガルは異常なまでの反射神経で、刀を剣で受け止めた。

 俺はその勢いのまま弾き飛ばされる。


 やはり、圧倒的強者だ。

 俺の神速を見破り、俺のただ一つの不意打ち技も止める。

 異常なまでの反射神経だ。


 そして、ザガルはまだ一歩も動いていない。

 その重い石像のようなザガルを動かすのは難しいように思えた。


 ザガルはこちらを見据えると、


「では、見せてやろう。俺が牙王と呼ばれる所以を。」


 そう言って剣を構える。

 そして、横なぎの一閃。

 だが、それは俺には届かず、空振りに終わると思われた。

 だが、


「っ!」


 腹のあたりに鋭い痛みを覚える。

 見てみると俺の腹には一本の横棒が刻まれていた。

 そして、その傷からツーと血が流れる。


 まさか、


「我が生み出した斬・空刃喝采(ヘヴィースラッシュ)は、刀の軌道と空気を巻きつけて、風の刃を生み出す。遠距離は苦手と踏んだのなら、それは甘い。」


 ザガルはそう言ってニヤリと笑う。

 風の刃か。

 しかも見えない。

 これに打ち勝つのは至難の技かもしれない。


 だが、やるしかない。

 俺は立ち上がると、刀を構える。


「…っはああっ!」


 『神速の加護(ゴットアクセル)』で再びザガルの目の前にたどり着くと、加護の力を切り剣術で対抗する。

 ザガルもその大きな剣を振り回して、こちらに応戦する。


 剣と刃が打ちあう。

 鋼の音が響き渡り、会場がそれに合わせて熱気に包まれていく。

 だが、形勢はこちらが不利だ。

 打ち合うとき、ザガルの方が威力が大きい分、こちらにダメージが溜まりやすい。

 いつか必ず隙が生まれ、やられてしまう。


 なら、全身を使って短期決戦に持ち込むのみ!


「むう。」


 ザガルが唸る。

 なぜなら俺はその身体能力にものを言わせて、剣技の間に蹴りや拳を入れ始めたからだ。

 相手がパワーで押すなら、こちらは手数で勝負だ。


「―がっ、ああ!」


「くっ。」


 蹴りをもっと早く、もっと正確に。

 俺はカツを入れ直すため声を上げ、さらに動きを加速させた。

 たまに俺の攻撃がザガルの脇腹に入り、ザガルが呻き声を上げる。


 そして、


「『神速の加護(ゴットアクセル)』――!!」


 加護を再使用。

 ザガルが生み出した一瞬の隙を体当たりする。


 ザガルは後方に吹っ飛ぶ。

 初めてザガルを動かせた感慨に浸る間もなく、俺はさらにザガルに追い討ちをかけようと走る。

 ザガルは見えない刃と大地の津波で応戦するが、種が割れた今は避けることもできる。

 飛んで、避けて、飛んで、下をすり抜ける。

 そのまま、跳躍。

 そしてザガルの上をまた位置取ると、真下に向かって急降下する。

 

 先ほどの攻撃と同じ、だが一つ違うところがある。

 今回は足を下にしてザガルに向かっている。

 ザガルを踏み潰すような形だ。


 だが、ザガルも一度成功したことはヘマしない。

 刀を俺に向けて突き出すと、俺を跳ね除けようとしてくる。

 だが、予想通りだ。


風刃瞬爽(SpeedBlade)!」


 魔法で風の刃を生み出し、ザガルの手を攻撃する。

 さすがに体を鍛えているからか、切断はできなかったが、怯ませるくらいのことはできた。


 俺は剣を足に絡めて、くるりと反転させる。

 そしてそのままザガルと剣を分離させる。


 ザガルは手にダメージを負っていて、まともに剣を握れていない。

 すぐにザガルは剣を手放してしまった。

 

 これでザガルは剣を触れない。

 つまり俺の勝ちだ。

 

 そしてそのままザガルの目の前に着地し、刀を一閃。

 ザガルはその攻撃に驚き、そのまま攻撃を受け…なかった。


「…は?」


「驚いたか?」


 ザガルがニヤッと笑う。

 俺の刀は、ザガルの手に握られた小さなナイフによって受け止められていた。

 いつの間にそんなナイフを。


 ザガルは俺に蹴りを入れる。


「ぐっ…はっ。」


「ここまでやるとは、見直したぞヒムラ。お礼に我の最高の一撃を受けてみよ。」


 くそっ。

 ザガルの蹴りが鳩尾に入ったので、まともに動けないのだ。

 刀だって遠くに飛ばされてしまい、今手元にない。


 そしてザガルの周りには、光の粒子が集まっていた。


「我は魔法の才能はないと、婆に散々言われたが、努力で一つだけ魔法を覚えることができた。」


 そういうとザガルの周りには魔法陣が出現した。

 それは全て金色に輝いていて、眩しいくらいだ。


「天使系魔法の中で一番簡単な魔法だが、それでも威力は高い。」


 魔法陣がいくつも出現。

 ザガルの周りに、6つだろうか。

 全て俺に向けて狙いを定めている。


 俺はすぐに悟った。

 あれを受けたらやばい。

 だが、動けない。


「受けてみよ!」


 魔法陣と光の粒子が融合、そして太陽の光もその魔法陣に収束して、ザガルの周りに影ができる。

 そして、


光粒子砲(LightGun)!!」


 六つの魔法陣から光の奔流が溢れ出す。

 そしてそれらは収束し、一つの光となって俺を貫く。


「やば…」


 い、と言い終わる前に、俺はその光に食い尽くされる。




 見上げるとそこは、白い天井だった。


「ここは、部屋?」


「お目覚めですかヒムラ様!!」


 すぐ傍に、ユソリナが顔をのぞいてくる。


 これは、俺寝てるのか?

 起き上がろうとすると、全身が痛い。

 火傷のような痛みが肌にこびりついていた。


「…やられた、か。」


 あの最後の攻撃はやばかった。

 威力を感じ取る前に意識を刈り取ってしまった。

 そして、太陽の光を収束させている。

 おそらくそれが天使系魔法の特徴なのだろう。

 完敗だった。


「起きたか、ヒムラ。」


 部屋に入ってきたのはザガルだった。


「貴様もよく耐えたなあ。あれを受けたものは基本的に死んでいる。」


「死ぬ…!?」


「大丈夫だ。貴様なら耐えうると思って放った一撃だ。安心せい。」


 そう宥めてくるが、もし死んていたらどうする気だったのだろう。

 

「ハンデル婆が慌てて飛び出てきて、上位魔法の青魔法をかけていったから、もう安心だ。」


 上位魔法って、相当効果の高い魔法だな。

 確か聞いた話によると、死にかけの人を治せるくらいの効力だった気が。

 ってか、そんな上位の魔法を使わなきゃいけないくらい俺って瀕死だったの?

 危ないったらない。


 ザガルは俺を見つめると、


「やはり貴様には才能がある。」


 いきなり何の話をしているのかわからないが、それをザガルに言われても皮肉にしか思えないだろうよ。

 だが、ザガルは至って真面目だ。


「我は貴様を認めた。そこで一つ、我の…いや、俺の経験談を語ろう。」


「えっと、いきなりどうしたのですか?」


「いや、これから貴様には必要になる話だ。弱者に語っても意味がないのでな。見極めさせてもらった。」


 そう神妙に言うザガル。


 そして、唐突に語られるその経験談は、たしかに俺にとって重要な話だった。

 そう、天使について。

 


 


次話から2章の戦争の一つ目が始まります。

乞うご期待。

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