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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第二十七話 ハンデル研究室

 俺は王城の地下に案内された。

 何重にも鍵がかかった重い扉を開けて、さらに隠し扉を作動させる。

 そして、迷路のような道をくねくねと進んだ先に、それはあった。


「うわあ。」


 驚きのあまり声が出る。

 たどり着いた部屋は、簡単に言ってしまうと洞窟みたいなものだった。

 周りは全て石でできていて、全て「対魔法結界(AntiMagic)」「対物理結界(AntiObject)」「対認識結界(AntiFind)」が貼られている。

 全て緑魔法の下位魔法のA級魔法以上、「対物理結界(AntiObject)」に至ってはれっきとした中位魔法だ。

 

 これほどの高難易度の結界が幾度も張り巡らされていた。

 そしてその中には、様々な紙、本、インクが散らばっていた。


「ここはワシの研究室じゃよ。驚いたろう?」


 そう話すのはハンデル。

 まさかこの部屋全てこの婆さんのものなのだろうか。

 

 俺は散らばっている紙の一つを拾って、読んでみる。

 

「…」


 全くわからんぞ。

 ある程度テルルやメカルに魔法についての知識は教わったつもりだ。

 だが、この紙に書いてある理論は全く理解できない。


 すると、ザガルが怖い顔で、


「おいおい、その紙を見てしまったからには、生きては返せないな。」


 と脅してくる。


 って、冗談だよね!?

 問い詰めると、「冗談だ。」と笑いながら訂正する。

 よかったよかった。

 だが、ここにある魔法技術は一般的に知られていないものがあるのは確かだ。

 となると、やはりここが、


「そうじゃ。ここがヨルデモンドの魔法技術の最先端。ひいては天人国家最高の魔法研究所。ヨルデモンドの隠された秘宝、ハンデールである!」


 とハンデルが宣言する。


「お主の水道技術を現実のものにする技術なら、すでにこちらで取り揃えてある。」


 おお、ありがたい。

 確か、魔法が使えないものでも魔法が使えるようになる道具だったか?

 そんなものを作っているなんて。

 やはりヨルデモンドに頼んで正解だったかもな。


 そしてザガルは、


「いつこの研究所の名前がハンデールになったんだよ。」


 とぼやいていた。




「これは魔紙と言うものだ。」


 そう言ってハンデルが持ち出したのは一枚の紙。

 見た感じただの紙だが、何かが宿っているように感じる。

 

「まずヒム郎は魔力というものが何かわかるか。」


「ええ、確か魔法界という魔力に満ちた世界から魔力を持ってくるんですよね。」


「その通り。未だに謎の多い魔法界だが、推論では真っ暗闇の無の世界とされていて、中にあるのは魔力と呼ばれる不可解なエネルギーだけ。そしてそのエネルギーをこちらの世界に持ってくるのじゃ。」


 なるほどねえ。

 魔法界の真相は未だ不明なのか。

 未知のエネルギーだけど使えるから使う。

 なんか前世にもそんな感じの技術があった気がする。


 ハンデルは続ける。


「その未知のエネルギーじゃが、使い方はわかっておる。魔法陣によって、魔力を魔法界から吸い上げる。魔法界から吸い上げられたエネルギーは生物の体を通って魔法陣にたどり着く。生物の体を通るのは、生物の体が魔法界とつながっているからだ。そして魔法陣に書かれた術式が発動して、魔法が使えるという寸法だ。」


 ここまではテルルやメカルに聞いた話だ。

 

「つまり、魔法発動に必要な条件は、魔力を吸い上げる魔法陣と、魔法界とつながる物が必要だ。」


 そこで一旦ハンデルは言葉を切ると、例の謎の紙を取り出して、


「この紙には、魔法界とつながる術式が組み込まれている。要は魔力を抽出するためだけの魔法陣じゃな。」


「そんなものがあるのですか?魔法というのは赤、緑、黄、青、天使、悪魔系があると思うのですが、この魔法はどの系統なのですか。」


 ハンデルの言葉に疑問を抱かざるを得ない。

 俺がテルルから聞いた話では、赤魔法は物質の粒子運動に関わる魔法、つまり温度を操る魔法である。

 そして緑魔法は浮遊物質に干渉する物質だ。

 黄魔法は大地に、青魔法は生物の体内に干渉する。

 

 つまり魔力を抽出するためだけの魔法は一般的にはない。

 あまり知られていない天使系魔法と、使うこと自体出来ないとされている悪魔系魔法のどちらかにある魔法なのだろうか。

 その疑問に、ハンデルは驚くべき答えを返した。


「なるほど、系統か。まあ、そこに疑問を持つのは自明の理じゃな。じゃが聞いて驚くなヒム郎。この魔法界連結魔法、これはいわば“オリジナル魔法”という物じゃよ。」


「…オ、オリジナル、?」


「そうじゃそうじゃ。ワシが発見したから“ハンデル式魔法”とでもいうべきかのお!」


 自分の名前を入れることで何やら興奮し出したハンデル。

 だが、そんなことより驚きなのはオリジナル魔法の存在だ。

 そんな物があるのか、この世界には。


「魔法陣の中に描かれている術式はある程度法則性を持った記号の組み合わせなんじゃよ。それを解明できれば、記号を独自に組み合わせてオリジナル魔法が作れるというわけじゃ。」


 なるほど。

 ここで説明しておくと、魔法陣の構造とは、大きく分けて実部と連結部に分かれている。

 実部というのは円のことで、その中に先ほどハンデルが言っていた記号がたくさん描かれている。

 そして連結部というのは円の外に取り付けられている鍵爪のことだ。

 この鍵爪には、魔法の威力や方向を決める補助魔法陣を引っ掛けたり、別の魔法陣を組み合わせて合成魔法を作り出したりできる。


 今回はその中の実部の話だ。

 実部の中にある記号はどうやら、ある法則性を持った物らしい。


「その法則にはまだまだ解明できていないところが多いのじゃが、解明できているものもある。例えば「火力弾(FireBall)」には温度上昇の記号に燃焼物創造の記号、粒子熱操作の記号や部分範囲結界などなど、様々な記号が組み合わさっている。」


 ふむふむ。

 つまりは様々な記号を組み合わせて「魔法陣から火の玉を生み出し放つ」という動作を完成させているのか。

 興味深い。


 ここまで話すとハンデルは笑って、


「少し話がずれてしまったのお。つまり、記号の組み合わせ次第では魔法界へ接続するためだけの魔法陣も作れるわけじゃよ。それは無色透明な魔法陣だが確かに存在している。それが書いてある紙が魔紙というわけじゃ。」


 なるほどねえ。

 つまり魔紙というのは生物の体のような役割を果たすのか。

 

 すると、ハンデルは一枚の紙ををテーブルに置くと、魔法陣を書き出した。

 俺も知っている魔法陣だ。

 確か「大炎炎円陣(FireCircle)」だったはずだ。

 ハンデルはその魔法陣を描き終わると、その紙と例の魔紙を重ね合わせる。


 すると、紙が光った。

 魔法陣が赤く輝きだし、徐々に魔力が流れていく。

 そして、ハンデルがその紙を地面に置くと、


「危ないから離れるのじゃ。」


 と言う。

 まさか、この洞窟の中で発動しちゃうの!?

 紙はさらに赤く輝き、やがて眩しくなる。

 そして、


ゴオオオオウウウゥーーーゥァァァアアアッ!


 魔法陣から特大級の炎が出て、辺りを焼き尽くす。

 紙に書いた魔法陣から、飛び出すように炎が溢れる。


 炎は一瞬で収まった。

 紙は黒く焦げ、魔紙はなぜか消失していた。


「魔紙は一回限りのものじゃ。それに魔紙に書いた魔法陣の強さによって使える魔法も変わってくる。今のは相当威力の高い魔法陣を組み込んだから、下位魔法A級が使えたのじゃ。」


 一回限りか。

 

 だが、紙に魔法陣を描くとき、ハンデルは何も特別なことはしていなかった。

 ただ筆で魔法陣を描いただけだ。

 と言うことは、


「そう、魔紙さえあれば魔法は誰でも使えるようになると言うわけじゃ。お前さんの水道計画にも役立つはずじゃぞ?」


 なるほど。

 これなら魔法使いを雇わなくても魔紙さえあれば普通の人でも水の浄化ができる。

 さらに言えばポンプの役割も魔法で担おうとしていたので、好都合なのだ。

 

 ああ、クロノオで魔紙が生産できたらなあ。


「あの、その魔法界へ接続する魔法陣って…?」


「あ、教えるわけなかろう?ワシの研究技術の末に開発したものじゃ。この研究所と魔紙の存在を教えているだけでもよっぽど太っ腹じゃぞ?」


 まあそうだよね。

 となるとヨルデモンドから魔紙を輸入しなければなるまい。

 そこらへんはユソリナに頼んで交渉してもらうか。


 よし、これでどうにか水道を作れる目処が立った。

 技術の進歩という観点では外せない水道。

 これを作れるのは素直に嬉しい。

 

「ありがとうございます。ハンデル様。」


「なんじゃ。いきなり様呼ばわりかこのちびっこが。さんでいいぞ堅苦しい。」


 怒ったようにハンデルが訂正する。

 

 すると、それを横で聞いていたザガルが、いきなりとんでもないことを言い出した。


「終わったかお二人さんよ。この後ヒムラは俺と決闘しなければなるまいのだ。もういくぞ。」


「申し訳ありませ…決闘とは?」


 



 

 


魔法の英語名間違ってるかもしれません。

気付いたら直します。

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