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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第十話 ラーバン・ヘラクール

 そういえば、ユソリナの本名はユソリナ・ヘラクールだった気がする。

「ヘラクール商人組合」ってどこかで聞いたことがあると思ったけど、ユソリナの苗字だったか。


 まあ、そんなことはいいとして、ユソリナの父が商人組合の代表だったとは。

 当然お金はたくさん持っているのだろう。

 ということは、ユソリナは富豪の娘ということなだろうか。


 そんなことを俺が考えていると、ラーバンは口を開く。


「お前が、軍師ヒムラか。」


 と睨む目は本気で、少しビビってしまう。

 

「ああ、そうだ。」


「やはり貴様が、娘を、娘を誑かしたのかああーーーー!!」


 怒って壁を殴りつけるラーバン。

 どうしたどうした!?

 娘を誑かしたって、俺そんなユソリナを騙すようなことはしていない。


 ラーバンは怒りで顔を真っ赤に染めながら言う。


「思えばあの時からおかしかったのだっ!いきなり軍部の試験を受けてくるとか言って、

そのまま親に連絡も取らずに…!お前が、お、お前がユソリナを誑かして、軍部に入れさせたのだろ!!」


 とんだ誤解だ。

 というか、ユソリナはほぼ家出みたいな感じで軍部に入ってきたのね。

 落としやかという印象とは裏腹に、意志の強い人なのかもしれない。


 まあ、そのせいでとばっちりを受けた俺としては、文句の一つくらい言ってやりたいけど。


「待ってくれ!俺は別にユソリナを誑かしたわけじゃ…。」


「じゃあなんだというのだ。ユソリナはこのヘラクール商人組合を引っ張っていけるほどの才能があったのに…!」


 ありゃダメだ。

 人の話を全く聞かないモードに入っているかもな。

 

「今更許しを乞いにきたってもう遅い!ユソリナを誑かした罪は、その首で償ってもらおうぞ!」


「いや、だから…。」


「会長様!!」


 俺が困っていると、脇に控えていたミスチレンがラーバンを一喝する。

 お前意外と言う時は言うキャラなんだな。

 

 ミスチレンの必死の宥めによって、なんとか落ち着きを取り戻したラーバンは俺を睨んで、


「で、なんの御用向きなんだ。軍師様。」


 と、機嫌悪そうに言う。

 これじゃ受け入れられづらいかな。

 そう思って俺はことのあらましを説明する。


「ふむふむ。利益のある話ではあるが…。」


「あるが…?」


「俺たちは国家権力に屈しないために商人会を作ったのに、その国家権力の傘下にくみするなど!」


 とまあ、意見は変わらないらしい。

 仕方がない。

 他を当たるとするか。


「ユソリナにもまだ話してないしな…。」


 俺がそう呟くと、ラーバンはハッとこちらを向く。

 

「今、俺の娘の名前を出したな。」


「あ、言ってなかったっけ。ユソリナの下で働いてもらう手筈だったんだけど。」


 そう説明すると、ラーバンはさらに必死の形相で俺に掴みかかってくる。


「つまり、この話に頷けば、娘にも会えると言うことか!?何年間もろくに口を聞いてくれなくて、半年前くらいからは会ってさえいないユソリナと会えるのか。」


「…え、ああ、まあ。」


 そんなに親父さんが嫌いかいユソリナくん!?

 

 ラーバンは改めて椅子に座り直すと、


「その話、受けようではないか。」


 と言う。

 この変わり身の速さはなんだろうか。

 娘に会えると言うだけでこんなに嬉しいものなのだろうか。

 

 …まあ嬉しいんだろうな。

 何年もろくに口を聞いていないようだし。


 ミスチレンが


「しかし、皆の了承は取れるでしょうか。」


「心配するな。金になる話には皆目がないし、国家権力の傘下に入ると言うのも、誤魔化せば済む話だ。ついてこないやつは放り出せばいいんだしな。」


 と、どんどん話が進んでいく。

 というか、勝手に誤魔化さないでほしいのだが。

 ラーバンは俺に向けて、先程とは打って変わって親しみやすい笑顔を作ると、


「じゃあ軍師様。そのような手筈でお願いします。」


 と言う。

 

 ま、まあ当初の目的は達成したんだし、いいんじゃないかな。

 このラーバンを見て少しだけ不安を覚えたのだが、まあいい。

 

 ようやくこれで人材が確保できそうなことに、今は一安心しておくことにした。




「というわけで、君の部下だ。」


「えっと…お父様?」


 ユソリナが戸惑った表情を浮かべるのも無理はない。

 

 ここは軍部の広場。

 そこにいるのは総勢200名の「ヘラクール商人組合」の人たちだ。

 ユソリナにとっては幼いころから側にあった組合なのだろう。

 

 それが今、ユソリナに向かって跪いている。

 

「ヒムラ様?これはどういう…?」


「ユソリナの部下として連れてきた。好きに使っていいぞ。」


 と俺は言う。

 ユソリナも毎日多忙なようだしな。

 

 ユソリナはまだ混乱していた。


「えっと、商人組合はどうするのですか?というか、国家権力の傘下に入ってはいけないんじゃ…。」


「ユソリナよ。」


 ユソリナにラーバンが力強く呼びかける。

 

「大丈夫だ。商人組合も続ける。軍部で一生懸命働くユソリナの手助けができないかと思ってここにきたのだ。」


「お父様…。」


 ユソリナが少し嬉しそうにする。

 

 その後、なぜ家出をしたのかと聞くと、別に親父さんが嫌いだからではないらしい。

 

「私は将来、お父様に商人組合の跡を告げと言われてきました。そのこと自体に不満はなかったのですが、国家権力の傘下に入らないという頑な姿勢は良くないと思ったんです。だから私は、商人組合とクロノオ国家の橋渡しができるようにと、軍部に入ったのです。」


 と説明してくれた。

 なるほど。

 衝動的に家出をして、軍部に入ったわけではないのか。


 ラーバンも感激しているようだし、ひとまずは一件落着なんじゃないか。


 ユソリナも商人組合の皆をしっかり見つめ、


「では、軍部で働いてもらいましょう。」


「「「うおーー!」」」


 商人たちが歓声を上げる。

 自分たちのトップの娘のもとで働くってどんな気持ちなのだろうか。

 案外嬉しいのかもしれない。


「では……」


 ユソリナがどんどん仕事を割り振っていく。

 そのユソリナの口から出てくる仕事量を、今まではユソリナ一人でやっていたなんて。

 凄いな、ユソリナ。

 ちなみに、ユソリナと一緒にいられる仕事を希望しているラーバンは、塩の製造工場に飛ばされた。

 「ヒムラ様〜」と泣きついてくるが、俺には関係のないことだ。


「では、そのような手筈でお願いします。」


「「「ハッ!!ユソリナ様」」」


 一斉に散らばる商人組合の人々。

 

 さて、一段落着いたところで、ユソリナに頼みたいことがあるのだ。

 というか、この頼み事のためにわざわざユソリナの部下を探していたと言っても過言ではない。


「ユソリナ。」


「はい、なんでしょうかヒムラ様。」


「新しい食べ物を見つけてみないか?」

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