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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第九話 ヘラクール商人組合

 さて、ザガルも去ったことだし、俺は食事という概念をさらに広めるため、ある問題を解決しようと思う

 それは、クロノオの食事生産に関して軍部が、もっと正確にいうとユソリナ一人が受け持っているということだ。

 もともと生産部というものがクロノオにはあったが、何故かそれが軍部に統合されたのだ。

 おそらく軍部が塩を作ったことにより、食に関しての信頼が軍部に寄ったからだろう。

 俺としても、自分の口が出せるところに食事生産に関しての部門があるのはありがたい。

 が、ユソリナ一人にそれを任せるのは流石にまずい。

 今だって、毎日塩工場に行って、塩を取引して、それをシネマ国に回すなんてことをやってのけているのだ。

 

 その解決策として考えたのが、食品生産に関して、ユソリナを筆頭とする組織を作るということだ。

 「食品部」や「食事改善部」など、名前は何でも良い。

 とにかくユソリナの負担を減らして、これから俺が開発したい食べ物を作ってもらえる部を作りたいのだ。

 決して、俺が食べたいわけではないぞ!?

 

 そういうわけで、俺は自分の部屋に引きこもり、新たな部のメンバーを見繕っていた。

 だが、今まで料理の概念すらなかったこの世界で、シェフなどいるわけがない。

 

 こういうときはあれだな。

 先輩に聞くのが一番いいだろう。




 俺は政治部の最高責任者、マルベリー・ニュートンの部屋に行った。


「マルベリーさん。いる?」


「どうした小僧。」


 扉をノックしながら呼びかけていると、出てきたのはマルベリーだった。


「聞きたいことがあるんだけどさ。」


 俺の頼みに、マルベリーはにっこりと微笑むと、


「いいぞ。」


 と快く部屋に入れてくれる。

 まだ30代ほどなのに、お年やかな雰囲気と気前の良さが際立つ善人。

 俺が目標にしている人物の一人だ。


「失礼します。」


 マルベリーの部屋は、至って質素だ。

 普通の机に、普通の椅子。

 普通のソファーが来客用として置いてある。

 

 俺はそのソファーに座って、一息つくと、


「今日相談したいことっていうのは、軍部に任された生産部のことなんだけど…。」


「ああ。そういえば軍部に統合されたんだったな。」


 そう、もともと生産部とは、この国で生産されている小麦や家畜の生産状況についてまとめる部なのだ。

 しかし、家畜や小麦などはたいてい生産者自身で食べるか、税として収めるかなので、税について司る徴税部がほとんど生産状況の調査を行なっていた。

 つまり、ここ最近は生産部は全くと言っていいほど活動しておらず、信頼は徐々に薄れていった。

 しかし、クロノオの新たな産業として美味しい塩が生まれて、貿易が始まると、それを行なっている軍部の方が生産部としての仕事を行なっているのではないか、という声も上がってきた。

 じゃあ軍部に生産部を組み込んじゃえば、と誰かが言ったのか知らないが、結局は生産部は軍部の管轄下になった。

 数年間怠惰を貪っていた生産部のメンバーは解雇となり、その代わりとしてユソリナ一人で働いているという状況になっている。


「今軍部ではユソリナ一人が生産部の活動全てを担っているっていうまずい状況なんだよ。だからユソリナを頂点とする生産・食事・貿易を担う下部組織を作りたいんだけど。」


「その下部組織のメンバーを探している、というわけか。」


 マリベリーは少し考えるそぶりをすると、


「もと生産部のメンバーを呼び戻すのはダメなのか?」


「ああ、生産部のメンバーは役に立ちそうもない。数年間仕事をしてこなかったやつらだ。」


 実際俺もその生産部のメンバーにあってみたが大抵は貴族出身で、働かなくても生活していける身なのだ。

 今更わざわざ働くために軍部の下に入ろうなんて考える輩はいない。

 

「しかも、食事や貿易に関しては今までなかった分野だ。探すのも大変だぞ。」


「んー良さそうな人材なら国を探せばいそうだが。」


 俺の愚痴にマルベリーが答える。

 居るのだろうか、そんな都合の良い人材。

 

「例えば?」


「例えば……商人とかは?」


「商人?」


「ああ、クロノオ商人は今まで非公式ながらもシネマの商人などと貿易をしていたんだ。物の取引などに関してはかなりのやり手だぞ。それに商人の中には塩や美味しいものに興味を持つ者も多い。ここは一つ呼びかけてみてはどうだろうか。」


 なるほど、商人か。

 確かに貿易の管理や生産状況の調査などは計算技術を必要としそうだし、それも商人なら得意分野だろう。

 問題は商人たちが了承してくれるかだが、


「まあ、そこは頑張るしかないな。」


 相手の利益となるようにうまく報酬などを調整しなければな。



 

 そういうわけで俺は、クロノオの商人の組合である「ヘラクール商人組合」を訪れていた。

 ヘラクールってなんか聞いたことあるんだよな。

 まあいいや。


「これはこれは軍師様。ようこそ商人組合においでになりました。」


 クロノオの繁華街の角にある、大きな屋敷。

そこでは商人組合のミスチレンという男が俺を快く迎え入れてくれた。


「ご案内致します。こちらへ。」


 俺はミスチレンの後に続いて、屋敷の中を進んでいった。

 にしても、本当に広いな。


 通された部屋は、豪華な装飾が施された部屋だった。

 おそらく最高の待遇なのだろう。


「これはどうも。」


「いえいえ、シネマ国戦での活躍は聞き及んでおります。」


 どうやら広まっていたらしい。

 まあ、商人ともなると、情報網も多いのだろう。


「じゃあ、今日来たのは他でもない。君たち、軍部の傘下に入る気はないか?」


「ありません。」


 あら、結構丁寧な対応をしてくれるからいけると思ったが、やはりダメだったか。

 

「何故か聞いても?」


「それはそうですよ。国の権力下に入らないように、自由に商売ができるようにこの商人組合は生まれたんですから。」


「国の権力下に入るなんてことはない。お前たちはそのまま商売を続けられる。ただ、貿易や生産管理を手伝って貰いたいだけだ。給料も出す。」


「そうは言っても、皆は納得しません。」


 はあ、やはりダメだったか。

 まあか此処までは想定内である。


「では、そちらの利益になる話をしよう。」


「いくら言っても考えを変えるつもりはありません。…………………まあ、とりあえず聞きましょう。」


 うまく掛かってくれたか。

 

「今、どうやら世界中を震撼させている塩のことなんだが、この利益が莫大なのは予想がつくだろう?」


 そう、何故かわからないが、どうやら塩のおかげで世界で食事ブームが舞い起こっているらしいのだ。

 各国の金持ちがクロノオの塩を買い集め、日々の食事に振りかけているらしい。

 いきなりどうした!?とこちらは言いたいのだが、儲かっているのも事実。


「塩の貿易における利益も出る。そして、あなた方の協力で塩の量産体制が整えば、さらにお金は入ってくる。塩だけじゃない、今軍部では様々な美味しい食事について検討中である。それを売り捌くことによって莫大な利益が出るだろう。」


 俺は畳み掛けるように言う。

 正直、軍部は特に美味しい食事について検討はしていない。

 まあこれからする予定なのでセーフだ。


 悩むミスチレン。

 決めあぐねている様子だ。

 

 まあ、相手は男だし、少し違う方向性で押してみるか。


「しかも、君たちの上司はな、相当な美人だ。ユソリナっていうやつなのだが…。」


「…え!?」


 驚くミスチレン。

 驚くようなことだろうか?

 

 ミスチレンがおどおどしながら聞く。


「その、ユソリナという女は、軍部の外交担当であるユソリナですか?」


「ああ、そうだが。」


 何をビクビクしているんだこいつは。

 ミスチレンは、ハッと周りをキョロキョロみると、


「ある人を呼んできます。」


 と慌てて出ていく。

 どうしたんだろうか。

 ユソリナってそんな偉い感じの人だったのか?


 やがて、ミスチレンが戻ってきた。

 一人の大柄な男を連れて。


 その大男はこちらを睨むと、


「俺はヘラクール商人組合、組合長ラーバン・ヘラクール。」


 と名乗る。

 そしてその男の、ラーバンから告げられた事実は衝撃的なものだった。


「クロノオ外交担当、ユソリナ・ヘラクールの父だ。」



 


商人組合の彼の名前は、某国民的バンドのもじりです。

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