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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第五話 軍事会議〜制度変更〜2

「では、魔導隊について報告します。」


 とテルルが言う。

 

「まず、魔法学校に在籍している生徒が402人。そしてその中の354人が志願しています。また、いま魔導隊に在籍しているものは988人です。その中で913名が志願しています。」


 かなりの高確率だ。

 これは、この世界の女性の状況と魔導隊志願兵の待遇が原因だ。

 

 この世界の既婚女性は、子育てをしたり家事をしたりと忙しい。

 しかし、未婚の女性はこの仕事らはないのだ。

 そして魔導隊の大半は未婚の女性だ。

 女性の進む道は主に二つあり、一つは結婚をして、男性を支えて、子育てをするという道だ。

 しかし、魔法の才能が認められた女性にはもう一つの道が用意される。

 それは、10代の頃に魔法学校に入り、そのまま魔導隊として国のために尽くすという道だ。

 つまり、魔導隊に既に入っているか魔法学校に通っている女性のほとんどは軍に入ることを志願しているに等しい。

 今更志願兵になったとしても、実際はあまり変わらない。

 だからそのまま志願兵になるという人が多いのだ。


 そして、魔導隊から志願兵になって変わること、つまり待遇の変化も兵たちに利益のあるものとなっている。

 魔導隊に所属する女性のほとんどが、いつもは村で畑仕事の手伝いをしたりしている者なのだ。

 つまり、徴兵のたびにわざわざ首都まで出向かなくてはならない。

 しかし、志願兵には寮が与えられる。

 徴兵のたびに面倒なことをする必要がなくなったのだ。

 首都での暮らしをしながら、兵士として活躍できる。

 これほど魅力的なことはないだろう。

 それに、給料も出るし、休暇も設けることにしている。

 村に閉じこもって男と共に畑を耕すより魅力的な提案だ。


 この二つの理由から、魔導隊、魔法学校にいる者のほとんどが兵を志願したのだ。


「あとは男性の受け入れについてはどうなった?」


 アカマルが聞くと、テルルは嬉しそうに答える。


「はい、魔法学校における男性の受け入れは次年度から開始することになりました。あと、魔法適性テストの男子受け入れも始めます。」


 魔法適性テストとは、毎年魔法学校の教師が各村を回り、10歳ほどの少女に魔法のテストを行い、合格した者に魔法学校入学許可を与えるというものである。

 しかし、これからは10歳ほどの少年少女にテストを受ける資格を与えることにする。

 それは、男性の中に埋れていた魔法の才能を持つ者を掘り起こすためだ。

 

 今までは徴兵制があったので、男性は歩兵隊として戦場にいかなければならなかったが、徴兵制がなくなった今ではそんなことは気にする必要がない。

 

 ただ、問題があるとすれば…。


「今までの制度によって男性の魔法使いに対する差別や偏見が起こるかもしれない。」


 俺はそういうと、みんなも気づき始め、納得し出した。


 差別や偏見が根強く問題として残っている世界から来た者だからこその意見だろう。

 

「その偏見によって、才能の芽を潰すのは勿体無い。」


 「男に魔法は似合わない!!」と母から言われたんで僕はやりません、では話にならない。

 クロノオの意識改革は必須事項だ。


「テルル。魔法学校及び魔導隊の男子受け入れを告知する際に、うまく偏見をなくせるようがんばれ。」


「はあ、あんた毎回無茶言うわね。そんなすぐには多分無理だと思う。」


「今すぐじゃなくていい。継続的に偏見を減らす努力をしてくれ。」


「わかったわよ。」


 テルルは渋々頷く。

 今すぐ無くすと言うのは無理だ。

 前世でさえ黒人差別是正なんかはそれこそ何十年ってかかった。

 もしかしたら完治はまだしていなかったのかもしれない。


 それでも、続けることには意味がある。


 アカマルが言う。


「では、これで俺たちの調査結果の報告は終わりだ。」


 よし、これで徴兵制から志願制からの移行についての情報は出揃った。

 さて、早速話し合いに移行したい。


「じゃあ、まず志願兵受け入れに関して今捻出できる額と、今必要な経費のすり合わせだ。」


 俺が皆に議題を提示する。

 

「現在必要な経費は、宿泊棟の改装や武具や鎧、馬の購入とかかな。そして、今ある金は…、ユソリナ。」


「ハッ。」


 ユソリナが立ち上がり、


「先程も申し上げた通り、今現在金貨百五十枚を持っていて、国から軍部に当てられた資金は金貨五十枚ほどです。」


 と言う。

 金貨二千枚、つまり日本円にして二千万円。

 正直少ない気がする。

 馬の調達や武具の調達で精一杯だ。


 みんなもそう感じたのだろう、悩んでいる顔をしている。

 まあ、ないものは仕方がない。


「私が金貨十万枚取っていれば…。」


 ほら、また要らぬ方向に先走る奴もいるからな。

 俺はみんなを見渡して、


「足りないものは仕方ない。ユソリナによればお金はどんどん入ってくるんだ。今必要な事をしよう。」


 と言う。

 それにアカマルが頷き、


「そうだな。馬は購入しなければ始まらないが、宿舎は使おうと思えば使えるし、武具も今すぐ必要って訳じゃない。実戦でないのならば木などで対応できるだろう。」


 その通りだ。

 馬の購入についてだが…。


「馬の相場と致しましては、最低でも銀貨5枚は下りませんぞ。質の良いやつは金貨一枚であります。」


 とメカルが言う。

 なるほど。

 金貨二千枚だと、質が悪くて四百頭。

 だが、質が良いやつだと二百頭しか買えないって訳か。


 というか、騎馬隊の数は合計五百人だった筈だ。

 どっちにしろ足りないじゃないか。


 どうしようか。


「ヒムラ様。質の良い部隊を作ろうっていうのに、馬の質を悪くするのは道理が合わないんじゃないか?」


 と、ドルトバが悩んでいる俺に言う。

 確かに言われてみればそうだ。

 馬の質も良くなければ強い部隊は作れないだろう。

 だが…。


「じゃあ、ドルトバ。馬の不足はどう解消する?」


「おいおい、まさか俺がそれを考えてない訳ないでしょう。もっと評価上げてくれても良いんだぜ。ヒムラ様。」


「考えてきたのは凄いが、毎晩大声で叫んで睡眠妨害をするお前の評価が上がる訳ないだろ。」


 おそらくは地球ががひっくり返ってもドルトバへの評価は上がらないだろう。


 まあ良い、ドルトバの考えを聞こうじゃないか。


「相変わらず手厳しいな、ヒムラ様は。まあ、俺の考えは単純で、即時投入可能な兵には一人一馬を持たせて、教育が必要な兵には五人で1頭を管理する、だぜ。」


 確か前者は139名いて、後者は約300名いた筈だ。

 …確かにそれだと必要な馬は二百頭となる。

 良い案だ。


「じゃあ、それでお金の使い道に関しては異論はないな?」


 みんなを見渡すと、頷き返してくれる。

 決まりだ。


「じゃあ、次は徴兵制度から志願制度への変更の日時だが、いつがいい?」


 俺が聞くと、テルルが手をあげる。


「はい、テルル。」


「今すぐでいいんじゃない?」


 アホか。

 

「これから準備すんだぞ?無理に決まってんだろ。」


「なによ、勿論冗談よ。」


「…一応重要な会議中なんだが。」


 テルルの発言に丁寧に突っ込むアカマル。

 まあ良い。

 特に皆も要望は無さそうだし。


「じゃあ、一ヶ月後なんかがいいだろう。」


「そうですな。」


 メカルが頷く。

 皆も特に異論はないみたいだ。


「じゃあ、取り敢えずこの会議は終了って事で…。」


「マスター!」


 いきなり影から飛び出してきたロイが叫ぶ。

 …というか、途中から発言がないなと思ったら、どっか行ってたのね。


「どうしたロイ。」


「国境に、ある謎の男が現れ、クロノオ国王に会いたいと言っております。」


「はあ、追い返せよ。そんな怪しげなやつとグランベル様を会わせるわけには…。」


「いえ、その男はこう名乗りました。」


 そう言ってロイは動揺を顔に表しながら言う。


「大国ヨルデモンドの国王、ザガル、と。」

序盤に出てきた魔法学校及び魔導隊の人数は変えるかもしれませんので悪しからず。

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