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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
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一章 第二十話 対シネマ戦2

今日は二話投稿です。

前回の話も御覧ください。

 敵の動きが一気に変わる。

 パラモンドが総攻撃を仕掛けてきたのだ。


 恐らく小出しに攻撃してもユーバに各個撃破されるだけだと考えたのだろう。

 流石は一国を支えてきたパラモンド。

 こちらが一番嫌がる手を打ってくる。


 しょうがない。

 迎え撃つしかない。


 俺は深呼吸をすると、大きな声で


「総員、防御陣形に移れ!ユーバは指揮を、ドルトバは騎馬隊を率いて側面を狙え!魔導隊はアカマルの指揮で撹乱、全員対魔法結界から一歩も出るな!」


「「「うおー!」」」


 みんなが返事をして、武器を構え始める。

 今回の陣形は、グループ分けしたことにより実現した、細やかな防御陣形である。

 今日のためにユーバに指揮を教え込み、兵たちに訓練させた。

 リアス海岸のように、と例えれば分かりやすいのかもしれない。

 ジグザグに隊を配置して、その谷の部分に突っ込んできた敵兵たちを横から叩く。

 山のところに突っ込んできた敵兵は、徹底防御に出て、横に流すことでうまく谷に誘い込む。

 弱点は柔軟な動きが必要なことだが、ユーバの光の矢印の指揮でうまく動けるだろう。


 そしてうまく対応できていないところはアカマルの指揮で魔導隊が集団魔法を行い錯乱をする。

 集団魔法は赤魔法で「大炎炎円陣(FireCircle)」や緑魔法で「暴風雨地帯(StormArea)」、黄魔法で「大地炸裂(EarthBreak)」などがある。

 集団魔法自体に大人数の殺傷能力はないが、相手が混乱するだろう。

 その混乱に乗って相手を撃破する。


 騎馬隊がその兵力差を埋めるように一撃離脱を繰り返して、歩兵隊の負担を軽くする。


 という作戦だ。


 そして俺も、ユーバの手の回らないところの指揮や、情報収集のために戦場を駆け巡る。


「よし、俺も行くか。」


 ドルトバの指導の元、なんとか乗れるようになった馬を動かし、出陣するのだった。




 その頃テルルたち別働隊は、


「あら、思ったよりも早く着いたわね。」


「もちろんです。姉様の加護は素晴らしいのですよ。」


「あら、もちろんよテルル様。『影の加護』で移動している間は速さ1.5倍になり、しかも地形に左右されず直線距離で移動できるのよ。敬いなさい。」


 テルル達の会話はずっとこの調子だ。

 テルルがなんか話をふればそれを使ってレイがロイを褒め出しそれでロイが調子に乗る。


「敬うって、同僚でしょ。」


 テルルはため息をしながら返す。

 これでもロイとレイはヒムラに絶対の忠誠を誓っているらしく、ヒムラはテルルみたいに苦労しないらしい。

 まあ、確かにヒムラには人を惹きつけるような優しさと明瞭さを持ち合わせているように感じるが…。

 時々、本当に子供なのかと思う時さえあるくらいだ。


 テルルはヒムラの過去をあまり聞いたことがない。

 村が襲われたことは知っているが、それだけでこんなにも精神が成熟するものなのだろうか。


 何にせよ、今重要なのはヒムラの手足となってその任務を完遂することだ。

 そのことに今はあまり不満を感じない。


「見えてきましたわ。首都カスタル。」


 レイが前を睨む。


 そう、テルル達は誰にも見つからないように首都カスタルに来ていた。

 それがヒムラの命令だ。


 ロイは移動手段として。

 レイは戦力としてこのメンバーに入っている。

 レイは意外と対個人ではこの世界でも上位に食い込むほどの戦闘力を有している。

 特筆すべきは小型ナイフの熟練度と圧倒的戦闘センスだ。

 細やかな動きで相手の攻撃を受けながし、死角から急所を狙う。

 本当に少女なのと思うほどに。

 その戦闘力を評価され、姉に同じく首都カスタルを目指した。


 そして、テルルは…

 一人で赤魔法の中級魔法を使いこなせるからだ。

 その魔法を放つ場所は首都カスタル。

 つまり、襲撃だ。


 3人は首都カスタルが見渡せる山の頂上に来ていた。

 夕陽は沈みかけていて、シネマ国の首都は綺麗に輝いている。

 この景色を壊すのはもったいないが、戦争のためだ。


「ならせめて、誰もいないところに。」


 狙うは、カスタル王の屋敷に。

 今、恐らくカスタル王は戦争に出かけている。

 そうヒムラは読んでいたからだ。

 カスタル王の屋敷に向け、テルルが魔法陣を描き始める。

 

 赤い、巨大な魔法陣が屋敷全体を取り囲み、やがてそれは輝き出す。


炎柱(Flame)創造(Create)!」


 瞬間、火の柱が天に向かって伸びてゆく。

 轟音が巻き起こり、カスタルの屋敷は一瞬で灰となった。


「はあ、対魔法結界(AntiMagic)があったらやばかったわね。」


 テルルがそう零すと、ロイが


「いいえ、テルル殿の魔法は素晴らしかったです。」


 と言う。

 なんだ、案外素直じゃん。

 なんか調子狂うなと思いながらも、テルルは笑いながら、


「テルルって呼んでよ。」


 と言うのであった。




 俺は全力で指揮を取った。

 馬に乗って、兵達を誘導し、死者が出ないようにした。

 俺の命令で死者が出ることを、誰かの人生を壊すことをこの後に及んで恐れていた。


 でも、俺の作戦はそんなふうにできてはいない。

 ある程度死者は少なくなるようにしたが、死者の出ない作戦は、死者の出ない戦争はない。


「グハッ!」


 呻き声を上げて、味方の兵が倒れた。

 それだけで目を覆いたくなってしまう。

 

 やはり俺は前世の感覚が抜けきらない。 

 黒澤飛村として生きてきた時間が俺を正気に戻す。

 

「第三部隊後方に下がれ!第一部隊と第二部隊は前進しろ!側面を叩け!」


 俺はまた命令を飛ばす。

 誰かに死ねとまた言うのだろう。

 でも、こうしなければこの世界で生きていけないというのはわかっている。


 この世界は戦争だらけだ。

 天人と魔人を争わせるシステムがある時点でそれは免れない。


「第五部隊下がれ!アカマル、魔導隊に大炎炎円陣(FireCircle)を出させろ!」


「ハッ!」


 アカマルが返事をする。


 それだけで、俺に信頼を寄せていることがわかった。


 こいつらの期待に応えるためにも俺は引き返せない。

 アカマルは、ドルトバは、ユーバは、テルルは、ロイレイは、ユソリナは、メカルは、クロノオ兵達は、俺が死ねと言ったら迷わず死ぬだろう。

 軍師とはそういうものだ。

 それらの命を効率的に使って勝つのがその役職だ。


 まだ俺はこの世界に慣れない。

 人が死ぬことに慣れない。


「でも…。」


 みんなの死の責任を負う覚悟を密かに決めるのだった。




 パラモンドは攻めあぐねていた。

 シネマ軍の大漁の兵で押し通せばいけると思ったが、柔軟な対応力で見事にこちらの攻撃を受け止めている。

 徐々にシネマ軍の兵が減っているのに対し、あまりあちらの兵が減っているように見えない。

 ただ、それはまやかしだ。

 いずれクロノオ兵は疲弊し、柔軟さがどんどん失われていくのだろう。

 圧倒的な物量とは、疲労知らずの軍ということでもある。

 

 パラモンドが叫ぶ。


「前衛と後衛を交代させろ!」


 前衛の疲弊した兵の代わりに、元気いっぱいの後衛が、待ってましたとばかりに攻勢に出る。

 あちらの疲弊を待つだけでこちらは勝てるのだ。

 単純かつ強力な作戦。

 時間を掛ければ勝利など容易い。

 あの少年も大したものではなかったな、と一人笑うパラモンド。


 しかし、パラモンドがいるところに部下の一人が慌ててやってきた。

 彼は確か首都の見張りだった筈だ。


 どうしたのだろうとパラモンドは思いながら、嫌な予感がするのを感じた。

 まさか…。


「申し上げますパラモンド様。首都が…首都が!」


「首都がどうした!」


「首都が、襲撃されました!」


「な、なんだってー!」


 カスタル王が叫ぶ。

 部下は続けた。


「集団魔法と思しき魔法がカスタル王様の屋敷で…。」


「まさか、わしの屋敷は!」


「…燃え尽きました。」


「くそ!」


 カスタル王は拳を地面に突きつけて怒りをあらわにする。

 パラモンドは混乱していた。

 別働隊が首都に向かったのか?

 いやでもあの道は軍が通れるほど大きな道ではない。

 まさか魔導隊の精鋭だけを引き連れて集団魔法を!?

 見張りはどうしたのだ!?

 俺の直近の100人を首都の見張りにつかせたのに!?

 

 実はパラモンドの直近の100人のほとんどはテルル達を発見できず、見つけてもレイによってすぐに殺されていたのだから仕方がない。

 そんなことは露知らず、焦るパラモンドにさらなる地獄が待ち受ける。


 直後、

 風が吹き、大量の紙が空に浮かんでいたのだった。


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