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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
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一章 第十六話 戦後処理と新たな戦争

 パラモンドは軍部の接待室に通されていた。

 かなり質素な作りであり、それだけクロノオの国力が落ちたということを示唆していて、パラモンドは内心ほくそ笑んだ。


 今回の戦後処理会談、シネマはどっちに転んでも良い。


 もし戦後処理が成功するならば、クロノオにさらなる領土割譲と賠償金が科せられるだろう。

 この世界では、戦争中に進軍したところまでの領土割譲は勿論のこと、さらなる領土割譲を求めるのが普通だ。

 これにより、かつて同等だったクロノオの国力は、どんどん落ちていくだろう。

 そしてそれにより、利益を享受するのはシネマだ。


 そしてもし戦後処理が失敗したとしても、戦争すればいいだけ。

 クロノオが勝てるはずがないとパラモンドは踏んでいた。

 兵の差、そして自分の指揮能力は高いと自負していたことによって、パラモンドはシネマの勝利を確信している。


 懸念事項があるとするのならば、このクロノオ軍部の9名。

 特に危険視しているのがヒムラとかいう軍師だ。

 

 前、ヒムラの過去を調べろと言いつけた部下が戻ってこないことを省みるに、あの部下はクロノオの間者である。

 それに、パラモンドの机の中にあるシネマの地図が盗み出されているのを見つけた。

 地図はすぐに代わりを用意したのだが…。


 どうやってシネマ国の中央部に侵入し、部下になりすまして、おまけに地図を盗み出したのか。

 シネマ国の中央部の警備は最高レベルである。

 

 つまりは、それほどの手練れ。

 それを抱えている軍師ヒムラ。


 ヒムラ自身に関しても噂が絶えない。

 調べさせたところ、兵がヒムラに対してあることないことほざいているということがわかった。

 最上位魔法が使えるだとか、天使だとか、現人神だとか噂されているらしい。


 そんな噂がもっぱら嘘ということはわかっているが。

 そんなことより重要なのが、ヒムラがそれほどまで兵たちの信頼を得ているという点だ。


 おそらく前の戦争で見せた、ただただ兵が突進してくる戦争とは違うのだろう。

 兵の信頼は、命令が届きやすくなることを示し、戦略を練ってくる可能性がある。


 まあ、それでも俺には勝てないさと、パラモンドは優越感に浸っていたが。


「すみません。わざわざそちらから出向いてもらって。」


「ハハハ!いつまでも賠償金を払いにこないから、駆り立てに来ただけだ。」


 ヒムラの言葉を煽りながら返す。


 パラモンドとしてはもう一度戦争したい。

 そうすれば、もしかしたらクロノオ全土を手に入れることができるかもしれないのだ。

 相手が怒って戦争継続の選択肢を選んだら、それでミッションコンプリートだ。


 しかし、ヒムラはそれを軽くいなす。


「ああ、賠償金の相談はまた今度赴こうと思ったのですが。」


「ほう、戦敗国が舐めた真似を。ちなみにいつ来る予定だったんだ?」


「そうですね、およそ500年後くらいにですかね。」


「ふざけるな!!」


 パラモンドは思わず机を叩く。

 

「こんな国とは交渉もできそうもない。戦争だ!」


「ええ、そのようですね。」


 ヒムラは全く動揺していない。


 パラモンドはそこで異変に気づいたのだ。

 クロノオとしては、ここでいかに賠償金を少なくするかで努力をするのが重要だと、パラモンドは思っていたが、ヒムラにはそのような様子が感じられない。

 まさか、戦争を起こしたがっているのか?


 いや、それは無いはずだ。

 クロノオ自体の力ではシネマは押し返せない。

 籠城して援軍を待つのも手だが、生憎クロノオはまだ新興国。同盟を結んでいる国は未だない。

 

 いや、まさかクロノオはシネマに勝つ気でいるのか!?

 馬鹿らしい。


「ほう、貴様はシネマと一戦交えたいようだな。」


「一戦、そうですね、交えてみたい。」


 威圧してみたのだがうまくいかない。

 何を考えているのだこのヒムラは!?


 ヒムラは笑って言う。


「あなた方の首都を燃やし尽くしましょうか?」


「…なんだと?」


「私たちの目標はシネマ国の首都、カスタルの陥落です。一応伝えておきます。」


「カスタルの陥落だと!?舐めてんのかあぁー!」


 パラモンドは今にもこの目の前のガキを殴り倒してしまいたかった。

 実際手を上げたが、護衛に止められた。


「おそらく彼らの狙いはパラモンド様を怒らせることです。乗ってはいけません。」


 と言われて、我にかえる。


 パラモンドは咳払いを一つすると、


「ふん。今の言葉はシネマ国民を侮辱している。貴様のその一言が我が国を怒らせ、クロノオを滅亡に追い込むのだ。」


「ええ、結構。こちらはそれ以上の苦渋を舐めさせられていますので。」


 そういうと、ヒムラはその時だけ目に深い憎悪を滾らせ、


「クロノオを舐めないでいただきたい。」


 と言い放つ。


「覚えておれ!」


 とパラモンドも返し、接待室を出る。


 こうして、シネマ国との交渉は決裂した。

 互いが互いの感情を暴露して終わった、意味のない会談だと思われるが、ヒムラは違った。


「マスター、布石は置きましたか。」


 影から出てくるロイに聞かれて、


「ああ、パラモンドさんには言っといたよ。あとは戦場でうまく騙されてくれれば。」

 

 と返し、不敵に笑うヒムラがいたのだった。




 パラモンドさんが帰ってくれて一段落。

 と言うわけにはいかないのだ。


 つまりは、戦争の準備である。

 軍に関しては、一ヶ月前から徴兵しているので、問題無い。

 農村での働き手がいなくなり、困っていると言うのはあるが…。


 それもおいおい無くしていきたい。

 戦争が起きただけで食料事情が崩壊する国など、脆すぎるからである。


 俺は軍事会議を開き、みんなに戦争開始を伝える。


「アカマルは食料の調達を、各隊長は戦争開始の報告と軍事訓練に、ユソリナ、メカルは国に報告、ロイレイは引き続き国境警備と進軍予定ルートの調査だ。」


 指示を出し、早急に準備をさせる。


 さて、俺は…。


 自身の強化のため、剣術と騎馬と魔法の自主練を行うのであった。




「シネマとクロノオが戦争になったみたいだ。」


「へえ、なんで俺たちがそんな小国の戦争を気にしなくちゃならないんだよ。」


「あら、それはクロノオにヒムラがいるからでしょう。」


「ああ、あの小僧ね。確かシネマって今やクロノオの2倍くらいの国力なんだよね。無謀すぎじゃない。」


「ええ、そうね。しかも、それを決めたのがヒムラ本人という点も不可解だわ。」


「…ん?ヒムラっていつの間にそんな偉くなったの?」


「あなたは北に興味なさすぎよ。ヒムラはクロノオの軍師になったわ。」


「へえ、大出世じゃん。」


「そうよ。もしヒムラが殺されそうになったら…。」


「助けるんだね。」


「ええ、でも未だ救恤の芽は開花しない。もしかしたらヒムラは不適なのかもしれない。」


「まあ、そしたら切り捨てるだけだよ。」


「はあ、また新しい人を探すの?骨が折れるわ。」


「お前ら、ヒムラはまだ負けてないだろう。ヒムラがどれだけ頭の切れる奴か、今回の戦争でわかるってわけだ。」


「そうだよ。もしそんな頭のいい奴だったらコルガもきっとイチコロだよ。」


「そうね。あいつはヒムラに殺させなければならない。」



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