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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第三章 嫉妬と絶望
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三章 九話 天魔大戦対策へ


 天満対戦が示す意味。

 それを軽く捉えていたのは大きな失態だ。


 ノクアシスの口ぶり、求めた条件からすると、相当大きな規模らしい。

 種族争い。

 そしてそれは、


「敵に同情の余地はない…ということか。」


 天人同士の戦争であったら、相手に求めるものは様々だ。

 金の時もあるし、領土の時もあるし、人民の時もある。

 そうそうに降伏すれば、大抵の場合それほど大ごとにならなくてすむ。

 それ以前に、まず交渉や和解といった手段も選べる。


 だが、種族争いにそんな甘いものはない。

 あるのは、種族の生死のみ。

 自分たちの種族が勝ったら、相手は皆殺し。

 負けたらその時は、同情の余地一つもなく殺される。


 一歩でも間違えれば、天人という種族がいなくなるほどの大きな、そして重要な戦争だ。

 

 それを認識できたのが、ノクアシスとの密談の一番の収穫であろう。


 と、そこで、


「ザガル様!!」


「…クラリスか。」


「ご無事ですか?」


「ああ、あいつは終始大人しかったな。」


「…そうですか。なにを話されたのか、お聞きしても?」


 クラリスが生真面目な顔で、それでもとても心配そうな顔でそう聞いてくる。

 ザガルは少しだけ安心すると、


「今度の天魔対戦のことだ。我々は考えを改めないといけない。」


「改めるとは?」


「少しだけ事態を軽くみていた。」


 天魔対戦についての文献から、その大変さを感じていたが、実際にはそれ以上だった。


 クラリスに、天魔対戦の重要さを伝える。

 これは、天人全員に共有されるべきことだ。

 

 それを聞いたクラリスは、


「では、すぐに様々な準備を行わないといけませんね。天人と天使が一致団結をして悪魔や魔人に立ち向かう。今はそんな状況ではないですからね。」


「ああ、様々なところで天人国家同士の戦争が起こっている。それをまずは停止させなければ。」


「では、そのように。」


「頼んだ。」


 そこまで言って、ノクアシスの言葉を思い出す。


 クロノオとユースワルドだけは、対象外に。

 その言葉の真意は分からない。

 そんな言葉を信用していいのか?

 

 そんな信用ならない言葉を、国家命令、そして全天人への命令として出していいわけがない。

 だが、無視するわけにもいかないのだ。


 どうしようか、

 少し悩んで、


「クラリス。」


「はい。」


「全天人へ通達だ。戦争を停止せよと。」


「了解いたしました。」


 そういうと、クラリスはすぐに通達の準備を始める。


 全天人対象に命令を出す。

 やはり、天使の言葉は少し信憑性に欠ける。

 

 ならどうするか。

 聞くべきところはもう一つあるではないか。


「クロノオか、ユースワルドに。」


 直接聞きに行く。

 特に、 ノクアシスが気にしていた軍師ヒムラ。

 彼に聞けば、何かわかるかもしれない。

 

 一ヶ月後ほど。 

 これから追われるであろう天魔対戦の対応が済んだら、クロノオに赴こう。

 

 だが、このザガルの選択は間違いだった。

 これ一つが原因というわけではないが、それが原因の一つであったのは間違いない。

 何気ない決断と命令の内容の齟齬。

 それが軋んで、摩擦を生んで、そのまま地獄に向かっていく。


 その時になれば、誰のどの行動が悪かったのか、分からない。





 ザガルが次に行ったのが、戦力把握だった。

 各国にそれぞれ戦力報告書を提出させて、それを考慮して作戦を立てる。

 ちなみにこの天魔対戦における天人連合軍のトップはヨルデモンド国王ザガルが担当している。

 指揮も基本的にザガルがトップの権力を担っているのだ。


 指揮する時は、ヒムラでも連れて来ようなんて思ったのは本当の話だ。

 あの軍部のメンツは、かなり能力が高い。

 特にヒムラは、軍の指揮能力においては、この世界で無双できるんじゃないか?

 それほどの先見性を持っていると、ザガルは彼を評価している。


 話を戻して、戦力把握だ。

 

 各国のトップに、戦力報告書を書かせるのだが、そこに嘘が含まれてはいけない。

 例えば国の威信を見せつけるために、少し盛って書いてしまったり。

 逆に、秘蔵戦力をカウントしなかったり。

 

 これはあってはならない。

 これは天人の存続を賭けた戦い。

 戦力を隠して負けるなど、笑えない。


 なので、まずは天魔対戦に対する重要性をしっかり各国に認識させないといけない。


 ここで有効なのが、ヨルデモンド自ら秘蔵戦力を解放したりする事だ。

 天人のトップの国家であるヨルデモンドが戦力を開示する。

 その事はきっと、各国に衝撃を与えて、このような認識を植え付ける事だろう。


 ヨルデモンドが戦力を開示しなければならないほど、この戦争はやばい。

 

 または、


 ヨルデモンドが戦力を開示したのだから、自国の戦力を開示しようか。


 このように考えさせられたら、必ず各国は戦力を開示する。

 そして各国が開示し出したら、それに釣られてどんどん他の国も開示していくようになるだろう。


 もちろん、絶対に自国の戦力を明かさない、と決めている国もいるだろう。


 だが、そこの対策も万全だ。

 実はヨルデモンドは、戦力を隠し持っているであろう国をリストアップしているのだ。

 もちろんそれは憶測で、実際は違うのかもしれない。

 だが、戦力開示の手がかりにはなりうる。


 そんな国に対しては、こういうのだ


「貴国の秘蔵戦力があれば、お伝えください。ヨルデモンドが責任をもって、その戦力を隠して見せます。もしそれでも戦力を開示しない場合は、武力的又は経済的威圧を仕掛けて、得た情報を世界に公開いたします。」


 と。

 もし秘蔵戦力を開示してくれたら、それが他の国にバレないようにする。


 もし戦力を公表しないのならば、圧力をかけてなんとしても情報をはかせる。

 

 賢明な国は、前者を選ぶだろう。

 なぜなら、天人国家でヨルデモンドに経済的または武力的に勝てるところはないからだ。


 これで、すべての国家の戦力を開示させる。


 次に第二段階として、全天人国家戦力をヨルデモンドか魔人の国と近い国、ユースワルドやシネマ(現クロノオ)に集めて、合同軍事演習をする。

 これに最低でも半年は掛けたい。

 天人同士の仲間意識もつけなければならないし、各国の戦術形態を打ち壊さないといけないのだ。


 そしてそれが終わったら、最後に戦力配分を決めて戦争する。

 これがいつもの天魔対戦の流れ。


「これを今回も踏襲する予定だ。」


「「「ハハッ!!」」」


 ザガルは様々な部署、役人にそう伝えて、皆快く返事をしてくれる。


 それを感じながら、ザガルは来る対戦に向けて。


「俺も体を鍛え始めるか。」


 全盛期の強さを取り戻そうと野心するのだった。

 



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