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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
間章 all side story
144/161

14話 結末

少し短めです。

「うっ…、っ、」


 朦朧とした意識からハッと目覚める。


 周りを見渡してみた。

 一面の壁。

 色からして、どうやら石でできた部屋のようだ。

 

 一面、灰色。

 水が岩と岩の隙間から滴れていて、ここが地下だとわかった。

 

「なんで、…俺はここに、。」


 しゃがれている自分の声を聞いて、さらに驚く。

 

「俺は、何を…。」


 ここにくる前の記憶を辿ろうとして、少し体を動かそうとすると、手のあたりに引っ掛かりを感じた。

 2、3度、手を動かしてみる。

 金属が擦れる音が響いて、手は動かせなかった。


これは…


「拘束されている…。」


 手首のあたりに金属の輪っかがはめられているのに気がついた。

 

 間違いない。

 明らかに自分は拘束されている。

 

 そして、この薄暗い部屋。

 言うなれば地下牢なのだろう。

 

 となれば、


「なんで俺はここにいるんだ?」


 記憶を辿ってみる。

 確か、クロノオとエレメントが戦争をして、

 で、エレメントの勝利はほぼ確定していて、

 相手を誘き出して


「それから…。」


「目覚めたか?」


 考えている途中、横から声が割り込んできた。

 幼い、でもそれ以上に存在感のある声だった。

 

 見上げて、全てを思い出した。

 なんでここにいるのかも、この声の人物に対する下種な感情も。

 赤い激しい感情が身体中を駆け巡る。

 

 それは、怒りだった。


「軍師、ヒムラッ!!」


「よう、久しぶりだな。ザン第一の側近、イルマー」


 イルマーは、ようやく状況を把握した。




「おい!!ここから出せ!!」


「それはできないな。貴様は今クロノオの捕虜だ。」


 喚くイルマーを、言葉で切り捨てる。

 

 彼、イルマーについてなのだが。

 実は俺と戦って気絶した時に、そのままクロノオ城の地下牢に運んでもらったのだ。

 なんかエレメント攻略の一助になるかなと思ったのだが、ついに彼は目覚めないままエレメントは滅亡してしまった。

 

 つまり、イルマーの扱いを今決めかねているのだ。

 本当にどうしよ。

 何か役立ちそうだったら起用したいのだけどね。


「クソ!!手錠を外せ!!」


 …なんとなく察していたが、こいつはあまり頭がいい方じゃない気がする。

 ここから脱出したいならば、もっとこうやることがあるだろうに。

 ただ叫ぶだけっていうのは、獣と同じレベルだ。


 じゃあ、どうするか。

 こちらに反抗しない気でいるのなら、野放しにするのも悪くはない。

 どうせ解放しても、クロノオに反抗してはこないだろうけど。

 なぜなら反抗を共にする仲間がいないから。


 エレメントの住民のほぼ全てはクリスの言葉に従った。

 つまりは、クロノオに従うという方針に。

 ファントムの住民にとって俺たちはどっちかっていうと恩人だ。

 それは長く続いたペレストレインの圧政から彼らを解放したからだろう。


 そしてシネマ・ルーンでのクロノオ反対勢力は、そもそもイルマーも嫌っている。

 それに彼らも一応クロノオに従うと誓ってくれたのだ。


 つまり、イルマーの味方などゼロ。

 今更解放しても何も痛くはない。

 

 いや、待てよ。


「ふざけるな!ヒムラあああ!!ぶっ殺してやる!!」


 こいつは脳筋だから、もしかしたら単身で乗り込んでくるかもしれない。

 地味にそれが一番嫌だ。

 こいつは一般人よりかは強いから、街中で騒ぎを起こされたらイルマーが優勢となるだろう。 

 もしそこで人質を取られたら、こっちもうかつに動けない。

 

 うーんどうするべきか。

 …まあ、初めから最善はわかってはいたんだけどね。


「イルマー。聞くが、俺に対して憎みはあるか?」


「ああ!あるに決まっている!」


 腕をガチャガチャと揺らし、いきり立ちながら答える。

 

 だめだ。

 救いようがない。


 なら仕方ないな。

 

「レイ。」


「ハッ。」


 影からニュッと顔を出すのは、藍色の髪を束ねたレイだ。


「こいつの始末を頼む。」


「了解」


 それだけいって、俺は地下牢を出る。

 レイは俺に配慮して、地下牢を出るまでイルマーを殺さないでおいてくれた。 

 

 それほどまでに、俺は自分の手を汚すのを嫌っていたのだった。


「おい!待ちやがれ!!おい!」


 イルマーの声だけが悲しく響いて、俺が地下牢を出た瞬間にそれは消えた。



次回は8/31です。

三章につながる間話を入れる予定です。

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