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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
間章 all side story
141/161

11話 軍部いろいろ1

「槍を構えろ!次は騎馬隊形に移行だ!」


「「「はい!!」」」


 快晴の下、今日も軍部の前の広場では沢山の命令が飛ぶ。

 主にアカマルのものであり、はたから見ると厳しい教官のようにも思えるだろう。

 だが、全てアカマルの演技だ。

 本来の彼は。温厚で、とても人を指導するような、ましてや英雄なんてものには向いていない、

 それを自覚して、それでもここにいるために彼は演技をする。

 

 少しでも軍部を成長させるために。


 と、


「そろそろ俺たちも混ざっていいかい?」


「…おお、ドルトバね。いいっすよ。」


 素にもどり、気楽な口調でドルトバとアカマルは話す、

 

「しかし、こんな朝から訓練かよ。大変だな歩兵ってもんは。」


「いや、騎馬隊も本来は朝からやる取り決めなんだけど…。」


「クハハ!騎馬隊は馬の調子に合わせにゃならんからな!馬が眠そうだったらそれを気遣って起こさないであげるっつうのが大切っていう…ぐあほ!」


 馬のせいにしてやり過ごそうとしたら、ドルトバの馬が彼に向かって後ろ足を振り下げた。

 「私のせいにしないでよ!」って言ってるみたいだ。


 ちなみに今の言い訳を以前にヒムラにしたことがあるのだが、もちろんヒムラは取り合わなかった。

 起きないのならば無理やり起こす、などと言って、馬小屋に加護を使って突撃しようとまでしたのだ。


 なかなかスパルタな一面もあるとしれたエピソードだ、


「…はあ、取り敢えず混ざっていいっすよ。今日はヒムラ様はいないんだから、奴らの気を俺たちが引き締めないと。」


「確かにそうだな。」


 ドルトバは訓練をしている皆を見てそう呟く。

 すると、不意にドルトバはアカマルの目を覗き込んでくる。

 野生の瞳は、アカマルの演技も何もかも見破られているような気がする。

 

「ちったあいい目になったんじゃないか?」


「…は?」


「なんでもねえよ!いくぜいくぜ!」


 そしてそのままドルトバは馬を扇動して皆のところに混ざる。

 

 なんだったのだろうか。

 やけに彼の緑色の目が気になる。

 

「…まあいいか。」


 大丈夫だ、と彼は自分を鼓舞し、頬をパチンと叩く。

 活を入れ直して、訓練を再開しようと口を開ける。



———これが軍部の歩兵隊、騎馬隊の日常だ。




「はあ、忙しいですね。」


「いやあ、でも驚きましたよ。ユソリナさんが俺たちよりも随分いい給料をもらっているなんて、」


「ここに来てよかったでしょう?」


「ええ、まあ。」


 軍事棟の一室、

 ユソリナの執務室には二人の人物がいた、

 一人はこの部屋の主人のユソリナ、ダンボールを抱えてふうと一息ついた。


 もう一人はミスチレン。

 今はユソリナの助手として軍部で働いている。

 

 ヘラクール商人組合は結局本拠地を軍部に移し、そこで国からの業務と自分たちの商人としての業務を同時に行なっている。

 かなり大変な日常を送っているはずなのだが、彼らの表情は明るい。

 それも全て、


「国から支払われる給料がいいからでしょうね。」


「あとは私の裁量で彼らにある程度の自由を与えているからでしょう。好きな時に商談を入れられますからね。」


 ユソリナはそう言ってため息をつく。

 まあ、前より仕事が減って楽になったのはありがたいことだ。

 ヘラクール商人組合が来てくれる前は、ほぼパンク状態だったのだ。

 それが治ってのがユソリナとしてはそこそこ、いやかなりうれしい。


「そういえば、先ほどラーバン様から連絡がありまして、助手の座を譲れと。」


「無視しといてください。」


 一刀両断。

 無表情でバッサリと切り捨てる。


 父親が不憫だと、ミスチレンはラーバンに哀れみを覚える。

 そして、


「そういえば、そろそろヒムラ様がユソリナさんのお茶を飲みにくるころではないですか?」


「ああ、そうなのですけど、今日はあいにくヒムラ様は出かけていて。」


「あ、そうなんですか。すぐに戻ってくる感じですかね。」


「いや、わからないらしいですよ。相手の出方次第とか。」


 今日は最高級のお茶をお入れできそうだったのに、とユソリナは口を尖らせる。

 

 ヒムラが外出する事は珍しい。

 皆色々な地域の統制でたまに出張することがあるのだが、ヒムラは決まって軍部にいる。

 一番脚力は高いはずなのに。

 

 まあ、部下に仕事をやらせて色々なことを学ばせているのかもしれない。

 そうミスチレンは結論付けた。

 

 実際は面倒くさいからというヒムラの考えはうまく隠蔽されたのだった。




「なかなか快適でしょう?」


「…確かに認めざるを得ませんね。」

「レイ。この無能の言葉を真に受けてはダメよ。」


「無能って、…。僕っちも結構頑張っているとは思うけどさあ。」


 ヨルデモンドとクロノオの国境を眺めながらそんな会話をするのは、一人の青年と二人の少女だった。


 青年、スウェースの体からは風が出ている。

 それらの風は非常に涼しいので、日差しの強い今日のような日には重宝される。

 そして、レイとロイはスウェースに風を出させて、涼んでいる。


「ってかロイ姉様も涼んでるじゃん?僕っちの魅力が伝わったっていうこと?」


「そうね。寒気がするくらい涼しいわ。あなたの口解き文句が。」


「辛辣だねえ。」


 ロイの厳しい言葉にため息をつくと、スウェースは街道を見る。

 もともとクロノオとヨルデモンドの間に整備はされていた街道。

 でも、人の往来が増えている今日では、少し狭い気もする。


「ヒムラ様に報告しますか?」


「そうね。レイ、お願いできる?」


「あ、君たち。今日はヒムラ様軍部にいないらしいから、明日にしといたら?」


 そうスウェースは忠告すると、何故かロイレイは同時にスウェースを睨みつけた。

 何かまずいことでも言ったのだろうか。

 首を傾げるスウェース。


 その仕草が尺に触ったのか、少しロイがムッとしながら、


「何故私たちの知らない情報をあなたが知ってるの?」


「え、知らないの?朝ヒムラ様がこっちまで来て僕っちに報告してきたけど。」


 スウェースたち元盗賊団は、今はヨルデモンドとクロノオの国境を住処としている。

 皆はそこを「基地」と呼んでいる。

 そしてそこにはレイもロイも一緒にいるのだが、


「何故基地にヒムラ様が寄ったはずなのに、私たちになんの報告もされていないのでしょうか?」


「え、いや。僕っちは知らないよ!?あの人に好かれてるとは思えないし、たまたまじゃない?」


「納得できないわ。」

「納得できません。」


 不満顔なロイレイ。

 こちらに八つ当たりしてくる前に、スウェースは彼女たちから距離を取る。


 そして


「ヒムラ様は何考えてるんだよ…。僕っちだけが特別扱いされているとレイちゃんロイちゃん勘違いして絶対怒るに決まってんじゃん。あとで給料二倍請求しよ。」


 そんなことをぼやくのだった。



続きます。

次回は8/19です。

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