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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
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一章 第十四話 自己強化

 さて、兵の強化もするべきなのだが、俺の戦闘力の強化もすべきだ。

 まだ馬にも乗ってないし、魔法も使ってない。

 剣の腕もまだまだ駆け出しだし。


 何より、人を殺すということに対して免疫をつけなければならない。


 シネマ国への戦争は、国の方針というのもあるが、俺の復讐のためでもある。

 つまり、俺の復讐のために徴兵された兵を巻き込んで、時には殺してまで戦争をしなけなければならない。


 その覚悟をいつかは決めなければならない。


 そのために、中断していた剣の練習も再開する。

 師は…。


「ほう、よくきたな小僧よ。いや、今は軍師ヒムラ殿というべきか。」


「いや、今まで通り小僧でもいいよ、マルベリーさん。」


 そう、道端で偶然あったマルベリー・ニュートンである。


 実はこの人、この国の政治顧問をしていて、かなりのお偉いさんらしい。

 政治部のトップ、つまり今では軍部のトップである俺と立場は同じとなる。


「…で、小僧よ。今回は剣を教えてほしいのだな。」


「ああ、そうだよ。」


 そう、俺はこのマルベリーさんに剣を教えてもらうことになったのだ。


 ことの起こりが2日前。


 俺とアカマルが話をしていた時、


「ヒムラ様、軍師の仕事は順調ですか。」


「ああ、まだこれといって大きな仕事はないからな。」


 今は、シネマ国の地図とひたすらにらめっこしている。

 戦闘場所はあらかた検討はついたのだが。

 1.5倍差の兵力をどう覆そうか色々と奇策を練っているのだ。

 そのせいでロイやレイをこき使っている。

 …今度何か奢ろうかな。


「…そういえばヒムラ様は、剣の腕は如何程なのですか。」


「…ん?まあ、セキじいから教えてもらって、それなりには。」


「えっ!セキじいって、あの剣士十傑のセキ剣士様ですか?」


「ああ、そうだよ。」


 どうやらセキじい、有名人だったらしい。


「それは羨ましいですね。ヒムラ様、俺と打ち合ってみませんか。」


「おう、…ってどうしてそういう話になる?」


 そういうと、アカマルは頭を掻いて、


「…俺、セキ様と一度打ち合ってみたいっていうのが子供の頃からの夢でして、ですけどセキ様は死んでしまったので。」


 セキじいが死んだというニュースは、それなりにクロノオでは話題になった。

 

「それで弟子の俺と打ち合ってみたいということか。」


「はい。」


 なるほどね。


「じゃあ、さっそく闘技場に行こう!」


 と俺は言いながら、内心でワクワクしていた。

 まだ基本的なことしか教えてもらってないが、剣の腕はそれなりだと自負している。

 この世界基準で俺の剣は通用するのか試してみたかったのもある。


 まあ、そうやって調子に乗ったのが俺の敗因であろう。

 え、打ち合いだって?

 そんな雰囲気はなかった。

 完全にアカマルの土壇場だ。

 

「…ヒムラ様、剣の腕的には駆け出し剣士と言わざるを得ません。」


「…ったく、まあそんなことはわかってるよ」


 剣士と名がついてるだけマシなもんだ。


 アカマルがニコッと笑って手を差し出してくる。

 こういう仕草が似合うイケメンなんだよな、アカマルって。


 俺はありがたくその手を掴み、立ち上がって埃を払う。


「ヒムラ様を守るのも俺の役目ですが、どうか自分で自分の身も守れるようにして欲しいのです。」


「…ああ、そうだな」


 アカマルに言われたように、俺は弱い。

 部下として不安なのだろう。

 

 となると、誰かに剣を教わりたいのだが、良さそうな人はいるのだろうか。


 アカマルに聞いてみると…


「ああ、確か一人いますね。政治部のトップで、かつてセキ様に認められるほどの才能があったとされる剣士が。」


「おっ、誰だそいつは。」


「マルベリー・ニュートン様です。」


 ん?

 まさか、あいつか?


 と思って政治部に連絡したところ、政治部のトップがかつて俺を助けてくれたあのマルベリー・ニュートンであることが判明。

 剣を教えてほしいと伝えると、喜んで引き受けてくれた。


「まあ、弟弟子だしな。」


 というのが、マルベリーが引き受けてくれら理由である。


 なんていいおっさんなんだ。

 俺は人脈に恵まれていることに感謝しながら、剣の腕を上げるため、マルベリーのもとへ向かうのであった。




「剣とは、イメージだ。神経を剣にまで張り巡らせるつもりで行け。」


「はい!」


 そうして行われた素振り。

 セキじいの時よりも格段に回数が多い。

 何とか素振りを終えて息も絶え絶え座り込もうとすると、マルベリーは笑いながら


「何してるんだ。これから稽古が始まるぞ。」


 と言われて、絶望した。

 このマルベリー、鬼教官すぎる。

 そのあとはマルベリーとひたすら打ち合い。

 さすがはセキじいに認められただけのことはある。

 見た感じでは剣術はセキじい並み、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。

 俺は死に物狂いで剣を振り続けたのだった…。


 その日の稽古が終わった時、テルルを呼んで回復魔法をかけてもらったのは秘密である。

 テルルは渋々という感じであったが、魔法をかけてくれた。

 案外素直なのかもな。


 そのあとアカマルに詰め寄ったり、

 ユソリナにめっちゃ心配されたり、

 ロイに「無様なところも素敵ですわ。」や、

 レイに「あ…とても危険な仕事をされていたのですね。」と言われたり。

 おい姉妹、その言葉はフォローになってないぞ。


 まあ、とりあえず剣術はマルベリーのもと鍛えるしかない。


 さて、次は…


 俺はドルトバのいるクロノオ広場に向かうのであった。




「ちげーよお前ら!ただ敵に向かうだけじゃダメなんだって。」


 ドルトバの怒鳴り声が聞こえる。

 騎馬隊の訓練は頑張っているらしい。


 騎馬隊は、もともと国中の男の中から馬に乗れる奴を選んで徴兵している。

 つまり、馬が買えるほど裕福な家の者しか徴兵されないのだ。

最近、騎馬隊の重要度が増してきたこともあって、それなりに才能がありそうな奴に国が馬を教えているらしいが…。

 つまり、それなりにプライドの高いものが集まっている者が多くて、うまくまとめるのは難しいらしい。

 しかし、ドルトバは頑張っていた。

 おそらく初めに自分の流鏑馬を見せたのは、舐められないようにするため。

 意外と計算高いのだ、このおっさんは。


「よくやっているな、ドルトバ。」


 俺が姿を見せると、兵は一斉に跪く。


「ああ、ヒムラ様、何とかやってるぜ。その…軍を一つの生き物とするっていう考え方も、最近は理解できるようになってる。」


「ああ、それはよかった。」


 俺が褒めると、ドルトバは恭しく一礼をする。


「ところでドルトバ君。」


「何だいヒムラ様。」


「俺に馬を教えてくれないか。」


「…っええええー!」


 ドルトバは何故かとてつもなく驚いた顔をすると、


「ヒムラ様って馬乗れないのですか?」


 と、聞いてくるので、


「バカにしてんのか。」


 と、返してやった。


「あ、いやいやそういうことじゃなくて…。何故かここ最近ヒムラ様が人気で。」


「…唐突だな。どういうことだ?」


「その、軍事訓練の演説以来、ヒムラ様が兵の間で人気という話を聞いて、なんかどんどんヒムラ様が美化されているらしいんだとが…。」


 ふむふむ、つまりはまとめるとこういうことらしい。

 10歳の美少年という外見が、兵の間で俺をどんどん美化させ、終いには最上位魔法が使えるだとか、天使だとか、現人神だとか噂されているらしい。

 その噂の中に、白馬を優雅に乗りこなすっていうのがあったらしくて、それをドルトバは信じてしまったらしい。

 というか、兵は俺をなんだと思っている。

 命令に従ってくれれば俺はそれでいいのだが…。


 まあ、今はそんなことより馬だ。


 ドルトバに頼むと、後で闘技場で教えてくれるらしい。

 ほんといい部下を持ったなあ、俺。

 そんな脳的気なことを考えていたが、馬とはそのような生半可な者ではない。


 闘技場では、本来共闘するはずの馬と俺の死闘が行われていた。


「っおい、乗らしてくれよ!」


 と言っても、馬はどんどん逃げていく。

 これほどまでとは。


 ドルトバのスキル「愛馬」が欲しくなった。

 馬に好かれる体質になりたい。


「あーあ、おそらくヒムラ様は馬を道具と思ってるんっすよ。馬とはパートナーと考えることが上達の近道っす。」


「おそらくその過程をスキルで飛ばしてきたであろうお前には言われたくねーよ!」


 ああ、こんな難しいものなのか、馬に乗るというのは。

 前世では動物園でゾウに乗ったことがあったが、あれはゾウだったから成功したのだ。

 おそらく馬と俺は馬が合わない…ん?今俺上手いこと言ったか。


 というかそんなこと考えてる暇はない!

 何とかこの馬に乗りたい。

 俺はなんとしても乗るんだ!




 まあ、勿論乗ることは出来なかったが、馬が観念したのか大人しくなってくれた。

 大きな一歩であろう。


 勿論そのあと、またテルルに回復魔法をかけてもらった。


「あんたは怪我をし過ぎなのよ。12歳でしょ。大人しくしなさい。」


 と、何故か上から目線で叱られているが、俺はお前の上司だぞ。

 年齢的には俺が下だけど。


治癒再(Regenera)(tion)


 回復魔法をかけてもらうと、身体中の痛みがどんどん引いていき、傷跡が癒えていく。


「この魔法は下級青魔法のA級魔法なんだからね、もう怪我しないで頂戴。」


「へいへい、わかったよ。」


 青魔法とは、回復に特化した魔法だ。

 そしてA級魔法とは、下位魔法の中では最高級の魔法。

 なんだかんだ言っていい奴なのだ、テルルは。


 ん?魔法。

 そうだ、テルルに言わなければならないことがある。


 俺は立ち上がると、テルルに向けて直角のお辞儀をする。

 そして言う。


「テルル、いやテルル師匠!俺に魔法を教えてください!」




 




 


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