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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
間章 all side story
135/161

5話 〜風と神速2〜「グランベルの意図」

100000pv突破しました。

ありがとうございます!

「では、今回の議題は「ファントム周辺に現れた盗賊団を軍部に委託するかどうか」です。」


「うむ。」


 デルタの声に鷹揚に頷くグランベル。

 

 盗賊団?

 委託?


 まさか…。


「最近ファントム地方に盗賊団が出没し、少なくない被害を様々な村に出しています。ファントムのペレストレインの圧政から解放されたことで、盗賊団も勢いづいているようです。そしてこの問題の原因となったのは間違いなく領土を広げてしまった軍部にあります!自分が引き起こした罪は自分で拭う。これが道理ではありませんかな?」


 デルタが一気にそう捲し立てると、こちらを睨む。

 そしてそれに合わせてたくさんの人が俺たちを恨みがましい目で見つめてきた。


 …あーこれは俺たち嫌われているな。

 皆の様子は疲れ気味だ。

 おそらく軍部が行った領土拡大のせいで皆の仕事が増えたからだ。

 そしてそのやり場のない苛立ちや疲れを軍部にぶつけたのだろう。


 だが、俺たちは別に勝手に領土を広げたわけではない。

 エレメント城前でグランベルとマーチに認めてもらってから作戦を起こしたのだ。

 俺たちが責められるいわれはない。


 だが、彼ら、他のグランベルの家臣の意見を聞かなかったのは事実だ。

 まあそこで不満を持たれるのは仕方がない。


 グランベルは相変わらず事態を静観し、マーチはグランベルのことしか見ていない。

 マルベリーはこちらを心配そうな目で見つめる。

 そしてそのほかは先ほど言った通りだ。


 …あれ、これ味方少ない?

 まあいい。

 俺たちで弁解はしなければならない。


 軍部の皆の様子を見てみると、ユソリナは何かに気がついたようにグランベルをじっと見つめ、メカルは目を閉じて考え込んでいる。

 そして子供六人はちんぷんかんぷんと言った感じだ。


 この感じだと俺が弁解するしかないな。


 俺は立ち上がって弁明をしようとし、


「ですがデルタど「では、裁決を取る。異議のあるものは手を挙げるが良い。」


 俺の言葉を遮り、グランベルが裁決を取ろうとする。


 ちょっと待って!?

 俺今から弁解しようとしたよ!?

 だが、公の場でグランベルを睨むわけにもいかず、訴えるような目でグランベルをチラッと見つめる。


 するとグランベルは何かをこちらに伝えるようにまっすぐな目で俺を見抜く。


 何のつもりだろうか。

 俺はグランベルの意図を探ろうとするが、


「ヒムラ様…ヒムラ様!」


「…どうした?ユソリナ。」


 ユソリナが小声で俺に呼びかける。

 

「いえ、おそらくこの場は皆の意見に合わせた方がいいかと思います。」


「…なんでだ?」


「それがおそらくグランベル国王様の意図だからです。」


 どういうことだろう。

 グランベルの意図とはなんだろうか。

 分からないことだらけだが、


「…わかった。」


 ユソリナを信じて矛を収めることにしたのだ。

 グランベルもその様子を見て安心したようにため息をつくと、


「では、裁決をとる。異論のある奴はいるか?」


「…」

「…」

「…」


 誰も手をあげない。

 つまり、この議案は可決された。

 何が何やら分からないまま、軍部は盗賊団退治に乗り出すことになったのだ。




「グランベル様。貴方様の意図をお聞かせください。」


「よかろう。」


 場所は変わってグランベルの執務室。

 横にはマーチが控えていて、グランベルの髪を研いでいる。


 俺はグランベルを真正面から見つめる。


「では、率直に聞かせていただきます。なぜ俺の弁明を遮ったのでしょうか。」


「ふっ。何も考えておらんのか。」


 グランベルは俺をみると少し失望したようにため息をつく。

 …どうやらグランベルの意図を当てなければ教えてくれないらしい。

 なら、俺は状況から推察する。

 グランベルがなぜ俺の弁明を止めたのか。

 俺が弁明をすると議論が長引いてしまう。

 つまり、


「グランベル様の自由時間を削られたくなかったから?」


「…貴様は意外とめでたい頭をしておるのか?」


「冗談ですよ。」


 どうやら違ったらしい。

 いやでも普段のグランベル像に当てはめるとその考えもあながち間違いではない気がする。

 

 んーそれが違うとなると、答えはあとひとつだ。


「この議会を賛成に持ち込みたかった。つまり俺たちに盗賊団を討伐させたかったということでしょうか?」


「そういうことだ。」


「なぜでしょうか?一番適任なのは自負しておりますが、軍部にわざわざ押し付ける理由が…。」


「理由はある。」


 俺の言葉を遮り、グランベルが意思を持った行動だと表明した。

 グランベルは一度椅子に深く腰かけると、


「今軍部は様々な部からヘイトを集めている。政治部はなんとかマルベリー・ニュートンが沈めているが、他は軍部に対して苛立ちを抱えているものがほとんどだ。だから俺は軍部にあえて辛い仕事をやらせることで皆のヘイトを晴らそうと考えたのだ。」


「それは…あるがとうございます。」


 そんなことまで考えて色々やってくれていたとは。

 軍部に対する鬱憤を、今回仕事を任せることで解消させる。

 そんなグランベルの作戦なんだとか。


 …いや、こんな賢い作戦をグランベルが考えられるわけがない。

 そう思い俺はじっとマーチを見つめて、


「なんだヒムラ。」


「い、いや。今の作戦はマーチさんが考えたのかなって…。」


「無論その通りだが」


 グランベルがドヤ顔で俺にそう言ってくる。

 まあ、そんなとこだろうとは思ったよ。


 これでグランベルの真意はわかった。

 あとは仕事をやるだけだ。

 俺は今一度グランベルに向き直り、


「では王よ。行ってまいります。」


「おう、もういくのか。達者でな。あ、あとだな…。」


 グランベルが少し迷うようなそぶりを見せる。

 何かあるのだろうか。

 秘密ごとはさせまいと俺はグランベルをジイっと見つめ、


 やがて観念したようにグランベルは項垂れると、


「おそらく盗賊団の中には危険な奴も紛れ込んでいる。十分注意することだな。」


「なるほど。名はおわかりでしょうか。」


「いや、だが通り名は有名だ。」


 グランベルは窓の外を見つめる。

 窓の外では風がひとつ吹いて、花びらがひらりと舞う。

 そして、それを見届けるとグランベルは、


「「風の剣士」だ。」


 そう言ったのだった。

 


7/31に次回です

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