表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第一章 転生と軍師
13/161

一章 第十三話 対シネマ軍事会議

 その頃、シネマ国。


「ほう。クロノオ王国が再戦の準備をしているだと?」


「はい、クロノオに忍ばせた間者によると、軍師試験が行われた模様であります。そして、我が国への宣戦布告は、おそらく一ヶ月後。」


「フン!グランベルはクロノオを滅ぼしたいのか?」


 そう言ってワインを飲むのは、シネマ国の王、カスタル。

 大きなお腹が彼の贅沢な暮らしを示している。

 それが重税によって作られたものであり、百姓の肋の見えた腹と比べるのも些か滑稽であるほど。

 

「我が国が徴兵できる数は?」


「王よ、一万二千の歩兵に、二千の騎馬、千の魔法使いでございます。」


「ふはは。あちらの兵力はせいぜい1万。殲滅じゃ。」


「しかし、王よ。少し気がかりなことが…。」


 そう進言する王の側近、パラモンド。

 パラモンドは頭の切れる貴族として有名で、ただただ私服を肥やすだけのカスタルの補佐を引き受けている。

 パラモンドのおかげでなんとかシネマ国は国体を維持している。

 領土の隣には魔人の国家があるので、常に見張りをつけなければなるまい。

 かなりの金をそれで使っているので、いつかは底をつく。

 その金を補填するためにパラモンド、引いては小国シネマがした決断は、クロノオ国からの領土略奪。

 これが見事成功し、とりあえずの危機は回避したのだが…。


 戦争を仕掛けて来られるならば、黙ってはいられない。


「クロノオが軍部を組織したのですが、トップがその…子供、10歳ほどの少年らしいのですが…。」


「はあ!?」


 王が思わずワインを吹き出す。

 そしてそれを奴隷の人が拭く。

 

 奴隷を国境で働かせれば金が少しは浮くのに…と、パラモンドは思うが言わない。


「本当でございます。その少年はヒムラといい、軍師の役職についています。クロノオの目的が掴めませんが…。」


「心配するなパラモンド。人手不足なのだろうよ。そんな子供が指揮できまい。結局はあのグランベルの指揮で動くだろう。お前の指揮の足元にも及ばんよ。」


「それだといいのですが…。」


 パラモンドは一度クロノオに潜入した時に、ヒムラという少年を一目見たことがある。


 パラモンドは戦慄した。

 見た目はただの少年だが、瞳には少年とは思えない、理性、落ち着き、強かさが見られた。

 パラモンドは気付いてしまった。


 あの少年はヤバい。

 直感が悟るが、根拠も乏しいので、王には言わない。

 このようなことは、自分で解決してしまった方がいいのだ。


 パラモンドは、王室を出ると、配下を呼び寄せ、


「クロノオ軍師、ヒムラの過去を探れ。」


 と、言うのであった。


「承知しました。我が主人よ。」


 と言った配下の顔に、パラモンドへの忠義の色はなかった。




「これより、第二回クロノオ軍部会議を始める!!」


 クロノオ軍部の9人が揃った部屋に、メカルの声が響く。


 うんうん、なんか雰囲気出てていいね!

 俺は完全に軍事会議なるものにそわそわしていた。


 だって、戦争ファンタジーなんかでよく見るこの状況。

 地図を広げて、実際に作戦を決める。


 戦術、引いては戦争オタクの俺がどれほどこの時を待ち望んだことか!


 …ゴホン。まあ、そんなことは置いといて始めよう。


「ヒムラ様。嬉しそうですね。」


「ばっ!そんなわけないだろう。」


 ユソリナの指摘に慌てふためく俺。


 ユソリナは、最近会話に入ってきてくれるようになった。

 外交担当は、他の部門より下だと言う勘違いがあったのだろう。

 俺が、外交の重要性をトコトン聞かせると、それを理解してくれたのか、口を開いてくれるようになったのだ。


「…ゴホン。では、今回のシネマ国襲撃だが、まず奇襲するのか、宣戦布告してから攻めるのか、意見のあるものはいるか?」


「はい。」

 

「おっ。ユーバ歩兵隊長。」


 と、俺がいうと、


「…何よその言い方。」

 

 テルルから苦情が入る。

 いいんだよ、なんかぽいだろ。


 それにしてもユーバが真面目にこういうところで意見してくれるようになるなんて、歩兵隊の指導で大人になったのかな。


 うんうん、俺は嬉しいぞ。


「えっと、奇襲とか宣戦布告って何ですか?」


 …ん?

 そこからかよ!

 俺の感動を返してくれ!


 俺はユーバに懇々と、奇襲や宣戦布告について抗議する。


 まあ、確かにまだユーバは10歳ちょい、知らないのも無理はないかもしれない。

 周りを見渡すと、テルルやドルトバ辺りは分かってない様子。


 本当にこの国の戦争って王任せだったんだな、と思い知らされた。


「はい!」


「おっ。なんだアカマル将軍。」


 やはりここで将軍が来たか。

 素晴らしい意見を聞かせてくれ…。


「何で奇襲か宣戦布告かで迷わなければいけないのですか?奇襲の方が絶対有利でしょう。」


「おい!」


 お前も分かってないんかい。


「…つまりだな。クロノオとシネマが戦争をすると、それが周りの国にも知れ渡るだろう。ここで俺たちが奇襲をしたら、俺たちはそういうことをする国、つまりはいつ襲ってくるかわからない国と思われる。これでは今後その国との外交もやり辛い。先のことを考えるのも戦争の醍醐味なのだよ。」


「…なるほど。その考えにこのアカマル、感服いたしました。」


 と言い、他の人も、


「ヒムラ様は物知りだよねー。」「ふん、知識だけは認めてあげるわ。」「戦争の後ね、考えたこともなかった…。」「さすがマスター。」「知見の深いお方。」「ホッホッホッ、私の加護を超えたお考え、感服ですじゃ。」「ヒムラ様なら当然であります。」


 と、言ってくれる。


 とりあえずはこんなふうに俺の知識で信頼を得ていこう。

 というかみんな知らなかったのか?


 本当にこの国の戦争って(略)

 

「で、まあ先ほどの答えだが…ロイ、レイ。」


「ハッ!マスター、こちらでございます。」


 と言って俺に一枚の紙を差し出すロイとレイ。


「それは?」


「ああ、シネマ国内の地形だよ。」


 メカルの問いに答える。

 そう、これはシネマ国が戦場で使っている地図である。

 シネマ国のパラモンドという部屋にあったらしいので、ロイとレイに取らせた。


 それにしても、頼んだのが1日前だっていうのに、驚異的な速さだ。

 どうやらパラモンドの配下になりすまして、騙し取ったらしい。


 なんていう怖さ。

 うまくレイの3つのスキル「空間変形」「虚像」「振動変化」を駆使して、バレないようにしたらしい。


 「空間変形」で雰囲気を、「虚像」で身長を、「振動変化」で声色を変化させる。

 …本当にこの姉妹が味方でよかった。


「それに伴い、一つ重要な情報が…。」


 そういうレイは、皆の前に立って、言う。


「配下として侵入した際に、クロノオ軍師、ヒムラの過去を調べろと言われました。それと、シネマ国王とパラモンドの会話から、クロノオの陰謀に気づいている模様です。」


 そういうと皆驚く。


 俺も最初聞いた時驚いたが、よく考えればそれなりに公の場で言ってたしな。

 

 間者に聞き取られていても不思議ではない。


「と、まあこのように相手国に知られているので、奇襲は意味がない。となると宣戦布告からの戦争がふさわしいだろう。」


 このように俺は締め括ったのだ。




「ってことは、俺らがシネマ国内に侵入し、迎え撃つ敵を倒すってことか。」


「ああ、その通りだ。」


 ドルトバの言葉に、俺はうなずく。


「そのために、ロイとレイにシネマ国内の地図をとってもらったんだよ。」


 そう言って俺は地図を広げる。


 すると、メカルが手をあげる。


「メカル。」


「ハッ!おそらく敵が待ち構えてきそうなのは、ここでしょうか?」


 そう言ってメカルは地図の一点をさす。


 そこはたくさんの山々に囲まれた中にある、広い草原だ。

 クロノオの首都からシネマの首都へと向かう時、必ず通らなければならない場所である。


「ああ、俺もそこになると踏んでいる。」


「…相手は何か仕掛けてこないの?」


 テルルが聞いてくる。


「いい質問だ。相手はおそらくこちらを低く見積もる。前の戦争で国力はシネマの方が上になった。わざわざ奇策を練る必要もなく、ただただ殲滅すれば良い。」


 兵の差は1.5倍。

かなり有利なはずだ。


まあ、相手が俺でなければの話なんだけど。


「つまり、相手は油断してるということだ。この隙につけ込んで勝ちに行こう。」


「ハッ!」


 一斉にみんなが返事をする。


「とりあえず二週間後にシネマ国との交渉を行う。ただし、これは決裂が前提だ。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ