表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
122/161

二章 第九十二話 エレメント城戦6

今日は短めです。

 四人の少年少女。


 そのうち先ほどナイフを投げた藍色の少女が、さらにこちらに向かって3、4本のナイフを放った。


「おい、!ナイフを止めろ!」


 ペレストレインがエレメント傭兵たちに命令するが、彼らは誰一人として反応できていない。

 いや、反応できていないのではない。

 反応していないのだ。


 彼らはなぜかいきなり床に膝をつき、荒い息を吐き出している。

 何が起こったというのだ。


 そして、さらにカテールとペレストレインの間にナイフが突き刺さる。


「クソっ!」


 カテールは舌打ちしながらそのナイフを避ける。

 そして、


「どうしたか、カテール殿。」


 異変に気がついたテーラードがザンを引き連れてこちらに来た。

 テーラードの紳士然とした振る舞いに顔をしかめながら、


「侵入者だ。速やかに排除する。」


「わかった。兵たちは使い物にならないし、我らだけで食い止めよう。」


「了承した。」


 そして、


「私はどうすればいい?」


「俺は…?」


 ペレストレインとザン、どちらもカテールとテーラードの支配下に置かれてしまった人たちだ。

 哀れな天人だ、と二人は思い、


「今からあの四人を排除する。あなた様方にもご協力願いたい。」


「侵入者。この偉大なエレメント城に侵入するなど…!」

「俺たちの平穏を脅かしやがって…!」


 テーラードの支配能力と己の欲望が掛け合わされ、二人は支離滅裂な狂人へと変貌した。

 まあ、支配する前から狂人なのは変わらないか、とカテールはどうでもいいことを考え、


 四人の少年少女に向き直る。


「作戦会議は終わったか?」


 その中の青髪の少年がこちらにそう尋ねる。

 

 はっきり言って、見惚れてしまいそうになるほどの美形だった。

 目鼻立ちはくっきりしていて、全ての顔のパーツが美しく揃っている。


 だが、相手は敵。

 それに、以前調べた情報と重ね合わせると、


「貴様が軍師ヒムラか。」


「ああ、すまないな。貴殿の名前は聞き及んでいない。」


「そうかい。まあ聞いてもつまらないだけだ。」


 自身の推測が正しくて、カテールは目の前の少年に最大限の警戒をする。

 その様子を見て、ヒムラは嘆息し、


「その様子だと、貴殿がカテールとやらみたいだな。」


「ほう、わかるか。」


「貴殿の情報は仲間から聞いている。」


「はっ!あの出鱈目に強い奴か。」


 カテールは左手を失った時の痛みを思い出し、少し顔をしかめる。

 ちなみにあの傷はエレメントの魔法使いになおしてもらった。


 するとヒムラは腰から刀を抜くと、


「カテール殿と、そこの…テーラードと聞いている。二人相手取ってやろう。」


「はっ、余裕なもんだね。」

「愚民が。だから愚かだ。」


 完全にカテールたちを見下した発言に、二人は殺気立つ。

 カテールは床に置いてあった槍を拾い、テーラードは肩から弓を引き抜いた。


 どちらも強者の風格を感じさせる。

 だが、抑えるしかない。


 そして、ほかに押さえなければいけないコマは三つ。

 そのためにユーバとレイ、ロイを連れてきたのだ。


 一つはペレストレイン。

 一つはザン。

 そしてもう一つは、


「ユーバ、お前はあの人の下に向かってくれ。」


「わかったよー!」


 打ち合わせ通りに皆を動かす。

 そして、


「レイ、ペレストレインを抑えろ。ロイはザンだ。」


「「了解。」」


 さて、準備は整った。

 この戦争を終わらせる決戦といこうか。




 エレメント城下でも、戦争は繰り広げられていた。

 しかも、こちらはかなり厳しい戦いを強いられている。


「やはり二正面を相手取るのは厳しいな…っく!」


 アカマルがそう愚痴るが、落ち着く暇もなく敵からの攻撃が降り注ぐ。

 

 今クロノオは、厳しい二正面作戦を強いられていた。

 城の内側からはファントム兵一万が、外側からはエレメント兵四千。

 一つに固まったクロノオ軍を上下から攻める彼ら。


 不幸中の幸か、場所が狭すぎて包囲はされていない。

 

「どうするの!アカマルさん!」


「っく、テルルか!」


 背中合わせで指揮をとっているテルルに決断を迫られる。

 この状況を打開しなければジリ貧だ。

 徐々にこちらが押されてしまい、押し潰されてしまう。


 決断をしなければならない。

 身を切る決断を。


 アカマルは少しだけ目を閉じる。

 こんな時はどうすればいいのか。

 ヒムラの言葉を思い出して。


 それを不安げに見つめるテルル。


 そして、


「…少し危険な作戦だ。最悪全滅もあり得る。」


「…わかったわ。大丈夫。」


 テルルは迷いなくそれに頷く。

 その決意に満ちた表情にアカマルは少し不安になる。

 この作戦は幼い少女の身が危うくなる可能性がある。

 それを伝えないのは、不誠実だ。


「この作戦は、テルルが限界まで魔法を使わなければならない。それでも、」


「やるわ。」


 テルルはアカマルの不安をよそに、そう固く決意する。


「私は指揮官よ。今も押されてく兵の命を背負う指揮官よ。兵が命を預ける指揮官よ。このエレメント城前を死に場所にする覚悟は、とっくにできている。」


 その強く気高い決意表明に、アカマルは思わず息を飲む。

 ここまで心を強く保てる少女なんているだろうか。

 

 いや、とアカマルは考えを否定する。

 彼女は指揮官なのだ。

 その自覚があるのならば、少女かどうかなどは関係なしに指揮官なのだ。


 それを否定するのはアカマルの役割ではない。


「…わかった。では、…。」


「…。」


 作戦をテルルに伝え、それに了承するテルル。

 

「では、作戦開始!まず全体進め!!」


 アカマルの指示により、兵は進む。

 名付けて「囲い込み作戦」が始まったのだった。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ