二章 第八十八話 エレメント城戦2
完全に投稿忘れてました
すみません
2回目に開いた会議は、一回目とは変わって皆戦勝ムードだった。
エレメント城戦でこちらに損害はほぼなし。
死者は一人も出ていないほどだ。
皆笑顔で会議に参加するのは当たり前と言える。
「もうこのまま嫌がらせしていけば勝てるんじゃないか?」
「そうだねー!ちょっともう疲れたからこのままで行こうよ。」
「ユーバ。お前とは気が合うな!」
アカマルとユーバが意気投合しているが…。
「さすがに相手も反撃してくるだろ。第二作戦を考えるぞ。」
「「…はあ。」」
俺が叱ると二人ともしゅんとなる。
そんな反応されるとなんか俺が悪いみたいじゃないか。
そんな平和な言い争いを続けていると、パラモンドが手をあげる。
「どうした?」
「ハッ!それが、報告したいことが…。」
こちらに頭を下げながら報告しようとするパラモンド。
シネマ代表だというのにこちらに頭を下げていることから試みるに、完全にシネマはクロノオ属国化を受け入れているようだ。
属国化というのはその場のノリで言った部分もあるから、そんなにしっかり受け止められると逆に困る。
…いけないいけない、今はパラモンドの報告を受けなければ。
「どうした?」
「ハッ。あまり大したことではないのかもしれませんが、エレメントの民衆に不穏な動きが感じられます。」
不穏な動き。
今エレメントの民衆、城下町に住んでいる人たちは城に逃げ込んでいるか家に残って俺たちの監視下に晒されているかだ。
家に残っている人は普通に生活を送らせている。
戦争だから略奪したり捕虜としたりするのも、良心が痛むのでやめにしている。
そしてそんな彼らを監視しているのがシネマ・ルーン兵たちだ。
よって、それらの軍を統率しているパラモンドが第一にエレメント民衆の異常に気付くのは当然である。
「具体的にどんな動きだ?」
「…なんと言いますか、人の動きが一点に集中しているような、そんな印象を受けます。それぞれの人の動きを見れば、それほど違和感はないのですが、人の流れ全体を見ると、一点に人が集まっているように見えます。」
「ふむ…。」
人が一点に集まっている。
エレメントにとって国の危機とも言える事態で人が集まっているということは…。
「明らかに何か行動を起こすつもりだな。」
「おそらくは…。」
「最悪こちらに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。ルーン・シネマ軍は警戒態勢に入れ。そしてその一点に集まっているというところを突き止めろ。なんとしてもだ。」
「ハッ!!」
パラモンドが頭を垂れる。
その様子を見てテルルが小声で、
「あのおじさん。妙にあんたに従順なんだけど、どういうこと?」
「ああ、あれは俺がシネマをクロノオの属国としたからな。それを考えると当然じゃない?」
「へえー…って属国化したの!?!?」
テルルが何やら驚いているが、きっと大したことではない。
俺はそのことについて頭から追い出すと、また会議を再開しよとするが…。
脇からドルトバが話しかけてくる。
「なあ、なんでそのエレメントの皆が集まっている場所を攻撃しないのですかい?俺は今すぐ反乱分子を潰したほうがいいと思いますぜ。」
「ああ、まあ簡単にいうとエレメント市民の不満を溜め込ませないためかな。」
俺の言葉にドルトバは頭からクエスチョンマークを浮かべる。
お前頭いい設定じゃなかったのかよ。
「反乱分子を潰していくのは、さらに巨大な反乱分子を生むのと同義だ。俺たちがエレメントを支配する気がないのならばその選択肢はありだが、もしかしたら俺たちはこの戦争でエレメントを支配下に入れるかもしれない。そうなった時に反乱分子が邪魔になるだろ。ならできるだけ反乱分子を小さく留めておかなければならないんだ。」
長い文を一気に喋り、少し疲れた。
だが、ドルトバはその説明を聞いて、
「なるほど。」
一瞬で理解したらしい。
まあ、なら俺からいうことは何もないよ。
あと、反乱分子を始末しない理由だが、俺自身の心の甘えというのもある。
自分の国が支配される、そうなると反乱分子が生まれるのは当然で、その反乱分子が悪というわけではない。
彼らは自分の国を守りたいから反乱しようとしているだけだ。
そんな人たちを押さえつけて、殺害しようとするのはあまりにも忍びない。
前世でもそんなことがあったはずだ。
スターリンの恐怖政治や、ナチ党のユダヤ人迫害なんかがいい例だろう。
ある一つの正義を決めて、それから外れるものは排除。
それをして歴史的に失敗した例はいくつもあるのだ。
だから俺は、彼らを放置する。
ある程度威圧をかけながら、基本的には泳がせる。
「…というわけだ。」
理解してなさそうな皆にそう説明する。
もちろんクラリス、ドルトバ、パラモンド、マーチあたりは理解していると思うけど。
というわけで、反乱分子に対しての対処は決まり、次の議題はエレメント城攻略についてだ。
「今すぐ突撃して、「降伏か従属か」って聞けばいいんじゃない?」
「損害が大きい。」
ユーバの意見、却下。
「そうだな、一番強そうなやつとヒムラ様が一騎討ちして、勝った方の命令に従うというのは…。」
「俺が負けたらどうすんの?」
「ヒムラ様が負けるわけないでしょう?」
アカマルの信頼は素直に嬉しいが、エレメントにもしかしたら隠し球的な強敵がいるかもしれない。
それに俺が負けたら、取り返しのつかないことになる。
「いやがらせ続けるだけじゃダメなの?相手が攻撃してきたら、こう…臨機応変に頑張るみたいな。」
「その臨機応変の部分を決めるための会議なんだけど。」
テルルの考えも却下。
「我が今からザガルを脅して残りの「白竜の剣」を連れ出すか…。」
「名案でございますな。グランベル様。」
「あなたは少し黙っててください!」
グランベルが馬鹿な意見を言い出したので、それを俺が一喝する。
これ以上ヨルデモンドに世話になるわけにはいかない。
「…相手の城の中の兵をおびき出し、それを叩いて相手の兵を地道に減らしていくとかはどうだろうか。」
「嫌がらせの際に兵糧や武器も持ち帰り、相手を戦闘不能状態にするのは。」
「突撃してザンとやらを人質にとればいいんじゃないか?」
上から、クラリス、パラモンド、ドルトバの意見だ。
まあこの三人が建設的な意見を出してくれるので、俺としてもやりやすい。
だが、
「ドルトバの作戦は少し難しいかもな。」
「…それはなぜですかい?」
「ザンを人質にとれば、エレメント側は動きを止めるだろう。だが、ファントム側はどうだ?ペレストレインはそれだけで降伏する筈がない。」
「なら、ペレストレインを人質にとれば…。」
「それはおそらく無理であるようだ。」
ドルトバの反論に水をさしたのはクラリスである。
クラリスは思い出すように目を閉じ、
「ファントムには、カテールと呼ばれる奴がいる。そいつを止めれなければペレストレインに指一本触れることすら厳しいだろう。」
「カテールか。そいつは強いのか?」
「ああ。俺はそいつに勝ったが、その時あちら側も本気を出していなかったようだ。」
「となると、カテールとやらが本気を出せば、」
「最悪、俺たちでは対処できない化け物として現れるかもしれない。」
そんな危なっかしい奴がいたのかよ。
それならば、まだ勝ったと考えるのは早い。
もっと用意周到な作戦を練るべきだ。
そこで…。
「なあ、一つ提案があるんだけど…。」
いろいろ考え、導き出した答えを皆に話した。