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神速の軍師 ~転生した歴史教師の無双戦記~  作者: ペンシル
第二章 神速と包囲
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二章 第八十六話 開戦間近の話し合い

 そうだな、まずは降伏勧告でも出してみるか。

 エレメント城は今クロノオ軍が囲っている。

 そして出入口には「白竜の剣」の皆も控えている。

 よって兵糧を外から持ち込むのは不可能になったし、強行突破も不可能に近いはずだ。


 このような状況をあちらに伝え、降伏を促す。


 まあそれで諦めてくれれば手っ取り早いのだが。


「テルル。「拡声(Yell)」を使ってくれ。」


「わかったわ。」


 俺の命令に答え、瞬時に魔法陣を用意するテルル。

 そして俺の口の前に緑色の魔法陣が浮かび上がる。

 それに向かって、


「エレメント、ファントム諸君。城は取り囲んだ!今すぐ降伏すれば捕虜としての権利を保障する!」


 とまあ大声で叫ぶわけだ。

 これに答えてくれると嬉しいわけだが、まあそれは無理だろう。

 なぜならエレメント城に今いるであろうペレストレインが降伏を射止めるはずがないからだ。

 

 当然、エレメント城からザンが顔を出し、


「我らは徹底抗戦をする!クロノオに降伏など断じて認めぬ!」


 と魔法でこちらに声を届ける。

 まあそうなるわな。

 まだ相手は危機的状況にないし、降伏する理由もない。


 でも、篭城戦において籠城する側が結論を先延ばしにするのは破滅行為だ。

 日々食料は少なくなり、敵の援軍がどんどん城を取り囲んでいく。

 降伏するにしても突破するにしても、すぐに決断しなければ状況は日に日に悪くなる。


 だが、今三日ほどエレメント城を取り囲んでいるが、未だエレメント側からの行動はない。

 ただ機会を伺っているのか、中で揉め事が起こっているのか。

 …揉め事の可能性が高いな。

 ペレストレインとザンが言い争い議論が進展していない可能性がある。


 そうしてくれるとありがたい。

 ただ城を囲っているだけで勝てそうだからな。

 だが、さすがにそこまであちらも馬鹿ではないことはわかっている。

 ペレストレインなど、ザンがどうとでも押さえつけるだろう。

 立場的にはエレメントの方が優位なのだ。

 

 つまりこの戦争はエレメント主導で動くだろう。

 そこを考慮して攻略方法を考えなければな。


 と…


「皆ご苦労。よくぞ集まってくれた。」


 俺が声をかける先にはクロノオ側の主要メンバーだ。

 ユーバが話し合いに参加するメンバーを集めてくれていたのだ。

 さて、


「作戦会議だ。」




 今回会議に参加する人物は十二人だ。

 いつも通りの軍部メンバーに本国にいるユソリナを抜いた八人。

 彼女は戦後処理の準備や様々な調整をしてもらっている。

 なんだかんだ軍部の中で一番大変なんじゃないかと思う時もあるほどだ。

 そしてグランベルとマーチ。


 そして「白竜の剣」代表のクラリスとシネマ・ルーン代表のパラモンドだ。

 この十二人で今後の方針を決定していく。


 さてと。会議を始めますか。


「少しよろしいだろうか。」


 おっと早速手をあげるクラリス。

 俺はそれに許可を出し、


「…今回のエレメント城攻略戦では、何を目的として攻略するのかを知りたいのだ。」


「…というと?」


「つまり相手の降伏を目的とするのか。それか相手国を完全に支配するのを目的とするのかということだ。降伏を目的とするならば最悪囲うだけで大丈夫だが、支配を目的とするならば他にも様々なことを考えなければならない。」


「確かにそうだな。」


 クラリスの言うことはもっともだ。

 何を目指して籠城しているのかを見失えば、たちまち泥試合に変わってしまうだろう。

 

 さすが指揮経験があるだけあるな。


「…今回の戦は、エレメントとファントムで対応が異なる。」


「あ、そうだったのね。」


 俺の考えにテルルが驚く。

 確かに同時に攻略しようとしているのに、それぞれ対応を変えるとは思わないだろう。

 だが、今回の戦ではそれが必要だろう。


「では、それぞれ方針などうなっているのだ?」


「ああ、ファントムに関しては国家自体を乗っ取る必要がある。降伏される前にペレストレインを殺す。」


「…!!」


 俺の口から物騒な言葉が出てきて少し驚く一同。

 まあ俺は基本的に殺人とかは好まないからな。

 だが、ペレストレインに対しては別だ。


「殺すかどうかはわからない。だが、レイの気持ちを汲んで、ペレストレインはレイの元に預けるつもりだ。レイがペレストレインの全てを決めてくれ。」


「…皆様、私のわがままではありますが、どうかペレストレインを私の元へお願いします。」


 決して、ペレストレインを受け取っていいのか?と皆に尋ねることはしないレイ。

 彼女の中ではペレストレインを裁くのは自分だと言うのは確定事項なのだろう。

 そして、皆のしっかりと見渡す。


 そういえば、レイは母親と再会できたのだろうか。

 一緒にいたであろうマーチに聞いていても、「答えるのは些か無粋」とすげなく断られた。

 まあ何にせよペレストレインをどうにかしてから答えを出せばいいさ。


 レイの決意。

 それを皆はしっかりと受け止め、


「わかった。ペレストレインはレイちゃんに任せるわ。私もあの人嫌いだから、逃さないでね。」


 とテルル。


「私の妹よ。どんな決断でも私は嬉しいわよ。」


 とロイ。


「まあなんか手伝うことがあったら言ってねー。」


「俺はそう言うドロドロしたのは関わりたくはないけど…。」


「アカマルよ!さてはお前少し女々しいだろ!」


 と、ユーバ、アカマル、ドルトバ。

 

「若さとは危ういものだ。せいぜい暴走せぬように。」


「…グランベル様。素晴らしいお言葉です。」


「ザガル様もそのようなことを最近言っておられました。お二人には似通うところがあるのでしょう。」


「…!!」


 これはグランベル、マーチ、クラリス、メカルだ。

 メカルがクラリスの言葉を聞いた途端頬を強張らせた気がするが、気のせいだろう。


「まさかクロノオがファントムをも吸収するとは。属国になっててよかった…。」


 パラモンドが一人頭を抱えている。

 彼はいつもこのような感じなので、ノーコメントでいこう。


 途中全く関係ない会話があったが、皆ペレストレインのことについてはレイに預けるで全会一致みたいだ。

 俺も特に反対はない、と言うか俺から持ちかけた話だしね。


「と言うわけで、どうなるにしろペレストレインは国王ができないし、そうなるとファントム国内が混乱するだろう。そこでうまく俺たちクロノオが介入してファントムを領土として治めることになるだろう。」


「なるほど。」


 納得するクラリス。

 そして、


「では、エレメントに対してはどのような対応を?」


 アカマルが真面目な顔でこちらに聞いてくる。

 その答えは…


「わからない…。」


「…?」


「いや、正直エレメントはどっちでもいいんだよね。特に恨みもないし。相手が手を引いてくれるならそれでいいし。」


 本当にエレメントどうしよう。

 そんな感じだ。

 ファントムのように支配してしまってもいいし、相手を降伏させて賠償金をもらってもいい。

 最悪相手が戦意を失ってくれればそれでいい。


 俺たちの今の状況ではエレメントをどうとでもできてしまう。

 よって、


「だから俺は、エレメントにそれを判断してもらう。」


「どう言うことだそれは?」


 ドルトバが首を傾げる。

 俺はドルトバを指差し「いい質問だね。」と言い、


「こちらが攻撃を仕掛け、エレメントがすぐに降伏してくれたら賠償金だけで終了。でも徹底抗戦をしてザンなんかを殺すしかなくなったら、躊躇いなく殺す。」


「結局相手次第なのね…。」


 俺の作戦の適当さにテルルがため息をつく。

 あやふやにするのは泥試合につながると先ほど思ったばかりだ。

 それなのにエレメントの対応はあやふやにするという体たらく。

 なので、


「判断は全て俺がする。決定が遅れることはないようにするから。」


 せめて俺が全て決定するべきだろう。

 場を混乱させないためには、すぐに決定が下せた方がいい。

 

 その俺の言葉に、皆は頷く。

 俺に任せれば安心とかでも思っているのだろうか。

 もしミスったらどうしようと少し不安になるが、その不安はすぐに消えた。


 まあなんとかなるだろう。

 楽観主義ここに極まれり。

 

 これで、各国の対応についての話し合いは終わった。

 あとはどう相手を落とすかだ。


「じゃあ、次は作戦についてだが…。」


 俺たちは会議を再会する。

 俺が作戦を提示し、メカルが可能であることを証明し、クラリスがアドバイスし、隊長将軍組が意見を述べ、作戦は細かいところまで詰められていく。


 そして、全てが終了し俺たちは各自持ち場に戻る。


 今から始まる。

 クロノオ対ファントム・エレメント。

 歴史に名を残す大戦の最後の戦いが幕を開けた。


 



 


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