ブクマ100記念ストーリー ヒムラの教師生活パート1
すみません、1話で収まりきりませんでした。
パート2は多分出てきます。
今回の話は戦争とかそういうのは一切ありません。
終始平和です。
キャラが好きな人は楽しめるんじゃないかと思います。
本編は22時あたりに投稿します。
日差しが差し込む時間を朝と決めた人物は相当性悪だろうな。
二度寝をしようとしても暴力的な日差しが無理やりにも瞼をこじ開ける。
視界が赤く点滅し、気がついた頃には視界が冴えてしまうのだ。
「…ぅあ。」
どうやらもう朝らしい。
俺はぐちゃぐちゃになったベットをメイキングし直し、朦朧とした意識の中でドアを開けて、階段を降りていく。
少し目線が低いだとか、階段を下りづらいなどと違和感を感じるが、全て朝特有の眠気のせいだと振り切った。
そして、階段を降りた先のドアを開けるといつもの光景が広がる。
「よっしゃ!今日はユーバに勝てたな!」
「ええアカマル兄ちゃん!それズルだよ!」
二台のゲーム機を前に雌雄を決しようと燃える大学生のアカマルと小学生のユーバ。
そして、
「……。」
黙ったままスマホをいじる中学生のテルル。
「卵焼きできたわよ!みんな早く手を洗って席について!」
フライパンを片手に皆に朝食を食べるように促す妻のユソリナ。
「姉様今日の目玉焼きは格別においしモグモグモグ。」
「そうねレイ。この塩見が卵焼きと合ってモグモグモグ。」
キリッとした顔を台無しにする様に口を開けて大食いをするレイロイ。
そして、
「ワンワンワン!」
最近は散歩に行くのを嫌がってきた老犬のメッカル。
皆俺の大切な家族だ。
そして今年で26歳を迎える歴史教師の俺。
そして妻のユソリナが今年24歳である。
大学生のはずのアカマルをいつ産んだのかとかそういう細かいことは置いといて、アカマル、テルル、ユーバは俺の大切な子供である。
ちなみにレイロイはある知り合いの女性から頼まれて育てている子供である。
いつも通りといえばいつも通りの光景に俺は安心する。
俺はその様子を見回して満足すると、居間に一歩踏み出し、
「おはよう!今日も一日頑張ろ…?」
言おうとしたところで気がついた。
なんだか俺声高すぎやしないか!?
変成器前の声が出たような…。
そして居間にいた七人と一匹が同時に俺を見る。
アカマルとユーバは、
「お父さん…?」
「親父、まじかよ。」
まるで俺が親であることを疑うような声。
そしてテルルはスマホから目を離してこちらを驚異の目で見つめ、
「は?お父さん?なんか…キモいわ。」
おいおいおい、さすがにお父さん傷つくよ!?
最近反抗気味になってきたテルルにも、面と向かってキモいと言われたのは初めてだ。
その言葉が小さい頃の可愛いテルルを思い出させるが、今はそんなことをしている場合ではない。
テルルは何を見てキモいと言ったのかが重要だ。
ユソリナは口をパクパク開けて、今にも失神しそうだ。
ロイレイはこちらをチラリと見て、また食事に目を戻すと、またこちらにすぐさま目線を戻す。
いわゆる二度見という奴だな。
事実俺はそんなインパクトのある人物になったわけではなく、無関心の鏡であるロイレイに二度見される筋合いはない。
そしてメッカルはいつもと同じように横に寝そべって惰眠を貪っている。
…お前は気楽でいいよな。
さて、皆が驚いたように俺を見つめるわけだが、その理由を突き止めるとしようか。
俺は自分の体を見る。
いつも通りの寝巻きがダボダボになっている。
自分の手が二分の一くらいになっている。
そして目線がいつもの半分である。
んーこれはまさか…。
「子供になっている…。」
青い髪に青い瞳。
大人だった頃の俺とあまり特徴は変わっていない。
まあ当然のことながら、早速家族会議がはじまった。
「親父、なんか昨日変なもん食った?」
とりあえずアカマルが原因を探ろうとしているが、さすがに変なものを食べただけでは幼体化はしないと思う。
大学生なのに思考回路が幼いアカマルなのである。
「コラ!私の料理を変なものって言いましたね!」
「あ、いやそういうつもりじゃ…。」
そしてユソリナの地雷をしっかり踏み抜いていく。
その様子を見て、俺はため息をつくと、
「まあ昨日は普通の角煮だったからな。特に何も入っていないだろ。」
と、慣れない声でアカマルの考えを否定する。
「私の料理を何も入ってないですって?」
「いや、そういうわけじゃ。」
そしてさらに地雷を踏み抜いていく俺。
この家ではユソリナがヒエラルキーのてっぺんにいるのだ。
地雷を踏み抜いたら即座に絡まれる。
それがこの家族の共通認識だった。
まあそんなことはおいといでだな…。
「しかも、昨日の料理は角煮ではありません!」
「ああ、そうだったけ?」
「ええ、私の秘伝のソースを加えた角煮です!」
どうやらユソリナ的には違ったらしい。
秘伝のソースを入れたとか、気づくわけないじゃん。
…ん、待てよ。
もしかしてその秘伝のソースとやらが…?
…いや、さすがにそれはないか!
今までつまんなそうに聞いていたテルルが、
「そんなことよりも、どうやって働きに行くかが重要じゃないの?」
「ああ、そうだな。いい考えだテルル。」
「ふん。」
まあ反抗期の娘との会話もこれくらいにして、俺は最大の懸念事項について頭を回す。
俺の職場は、皆の予想通り学校である。
歴史教師などという地味な仕事を嬉々としてこなす変態だ。
それはいいとして、さすがに子供の姿で教壇に立つわけにはいかない。
どうしたものか。
「僕は子供になってお父さんでもいいと思うよー。」
「おっそうか。やっぱこのままで行こうかな…」
「ダメです。」
ユーバは基本的に俺を全面肯定してくれるのだ。
その流れに乗ろうと思ったのだが、ユソリナに即座に否定される。
まあ確かにダメだわ。
他に案は…
そういえば顔はあんまり変わってないのかな?
皆に聞いてみると、確かに顔はあまり変わっていないらしい。
ならば…。
「俺が誰かに肩車してもらって、それをうまくスーツで隠せば?」
よくあるやつだ。
スーツの中にはもう一人いる!みたいな?
なかなかにいい案だとは思うが、問題は誰が中に入るかだが。
「私は中の人はいやよ。お父さんを肩車するとかないわ。」
「僕は耐え切れるかわからないからなあー。」
「私と姉様も」
「学校だわ。」
まあ学生四人は無理だ。
そして、
「私も家事があります。」
ユソリナにはすげなく断られる。
そして…
「…え!俺かよ!」
特に何の用事もない暇な大学生であるアカマルに、皆の目線が集まる。
…というか、一番の適任がきみだよ。
押しに弱いアカマルは、当然その目線に耐えれるわけがなく…。
「わかったよ。やりますよ。」
ポッキーよりもあっさりと折れてくれた。
メッカルとユソリナに別れを告げ、ユーバテルルロイレイ、そしてアカマルと俺の合体系が家を同時に出る。
なぜ同時に出るのかって?
俺たちが仲良し家族だからと言いたいところだが、まあ行き先が同じだから皆同じ時刻に家を出るのだ。
そう、俺たちの行き先とは
クロノオ小中高学校、別名クロノオ学園
かつて小学校と中学校と高校が合体している学校があっただろうか。
…いやあるにはあると思うけど、公立の何の変哲もない学校でこの特異性はあまり見かけないと思う。
そんな学校の校門を潜ると、早速ジャージを着た一人の人物がこちらを見て、
「おおあの家族きやがったぜ!」
大声でこちらに手を振る。
彼の名はドルトバ。
クロノオ学園の体育教師であり、朝の見回りもしっかりこなす働きものである。
ただ一つの欠点は、声が大きすぎるということか。
「おはようー。」
「おはようございます。」
「おはよう。」
「…。」
「ちわっすドルトバ先生。」
俺たちの挨拶も様々だ。
どれが誰の言葉かを当てられたら、君も生まれ変わることができるだろう!
バラバラの挨拶にドルトバは豪快に笑い、
「ガッハッハ!…おや、ヒムラ先生若返りましたかな?」
「え!?いや、そんなことは…。」
ちっ、妙なことに気づきやがって。
これでもなかなか勘が優れているのがドルトバだ。
隠し事は大抵バレる。
だが、さすがに朝起きたら幼体化したという話を思いつくほど、ドルトバも突飛なやつでは…。
「そうですかな。まるで一晩のうちに子供になってしまったような…。」
さっさとこの場から離れよう。
アカマルの肩を叩き、歩くようにお願いする。
「では、俺たちはこれで…」
俺が皆を先導し、歩き出した。
皆もドルトバにあまり関わりたくないのか、すぐに俺について歩いてくれた。
…あの先生は嫌われているわけではないのだが、話しているうちに不思議と隠し事がバレ、それを大声で話すので、皆に隠し事が筒抜けになるのだ。
不幸な立ち位置になってしまったドルトバ。
君の勇姿は忘れない!
さてと、
学校の昇降口をくぐり抜けて、学校という空間に俺たちは入る。
ここからが正念場である。
どうやって俺の幼体化をバレないように乗り切るかが重要だ。
廊下を歩き、職員室に入る。
そしてその先には
「ヒムラ先生…。」
俺を訝しむように見つめるパラモンド。
「ヒムラか。」
こちらをいつものように睨むザガル校長とその友達のグランベル。
「ほう。」
マーチさんがグランベルの靴を温めながらこちらを睨む。
マルベリーさんはこちらを面白そうに眺める。
俺の教師生活、どうなっちゃうの!?