二章 第七十六話 シネマ反乱の収束
ブグマ100達成しました!
喜びとかいろいろあるのですが、全て後書きに書いたので見ていただければ幸いです。
ヒムラが動き出し、それを目で追おうとしたイルマーだが…。
「……あ?」
いない。
ヒムラが一瞬で消えた。
そして、何も考える間もなく、
「…グハアアアアア!」
腹に鈍い激痛が走る。
俺が腹に蹴りを入れると、それだけでコイツは一瞬で吹っ飛ぶ。
数十メートル吹っ飛び、そのまま受け身を取れず背中から落ちた。
そのまま動かなくなる。
死んでないよな?
死なないようにうまく調整して蹴りをいれたので、おそらく大丈夫だと思うが確認はするか。
倒れたコイツに一瞬で近づき、胸に手を当てたり呼吸を確認したり怪我を探してみたり。
まあ異常は見られなかったので、多分生きてる。
俺はパラモンドの方を振り返り、
「勝敗は?」
「…。」
「おい、パラモンド。」
「…はっ!これは…ヒムラ様の勝利でしょう。相手は未だ気絶していて動けませんし、実力差は明白です。いやはや、これほどだったとは、」
パラモンドが慌てて勝敗判定をして、驚きの目でこちらを見つめる。
まあ確かにパラモンドは加護を手に入れてからの俺の戦いを見せてなかった気がする。
驚くのも無理はないわけだ。
まあこれでシネマ兵たちは解放できたわけだ。
そして、今一番解決するべき課題。
怯えた目で俺を見つめるシネマ反乱軍の対処についてだ。
「ああもう、ちょこまかと動くな!」
「これが私の戦い方。文句を言われる筋合いはないわ。」
真夜中のセカン村で激しい戦いが繰り広げられている。
フリルラルによって魔法陣がいくつも生成され、それをロイが影に隠れながら躱す。
素早いロイはフリルラルにとって非常に相性の悪い相手だった。
だが、それはロイにとっても同じである。
フリルラルに対してロイの加護はあまりにも相性が悪い。
なぜだかフリルラルが魔法を発動しようとするとき、影の中が歪むのだ。
それによって見当違いの場所に移動してしまったり、影からはじき出されてしまう。
おそらくは影と魔法には何か深いつながりがあるとロイは考えている。
テルルと軍部大会で戦った時だって、場所を全て言い当てられていたし、あの時も影が歪んでいた。
フリルラルには影の場所を言い当てられてはいないが、それでも影が歪むのは間違いない。
魔法というのは魔法界と呼ばれる場所から魔力を吸い取っていると言われている。
もし、影の中という場所が実は魔法界だとしたら?
影と魔法の関係に説明がつく。
だが、ロイが考えるにこの影の中にはエネルギーが満ちているようには感じられない。
自身に才能がないのか、それとも。
そう考えているうちに、また攻撃が来る。
相手も地面にむかって攻撃を放ってくるので、影に潜っているだけでは魔法は躱せなくなってきた。
さて、どうしたものか。
影から現れてナイフを突き立てるのも良いが、それでは相手を殺してしまう。
回復魔法が使える人物がいないからだ。
じゃあ死なない場所を攻撃したりすればいいじゃないかと思うが、ロイはそれができない。
レイならばできたかもしれないが、ロイは短剣の動かし方以外何も知らないのだ。
これがレイとロイとの差。
圧倒的な知識と技術の身体能力の差が二人の間にはあるのだ。
短剣扱いや加護の利便性に関してはロイに軍配が上がるだろうが、それ以外は全てダメ。
だが、ロイはそれを恥じない。
だってロイはレイの姉だから。
魔法を躱し、躱し、躱し、攻撃は加えない。
うまく殺さずに相手に勝つ方法。
それを模索しながら。
「ええっと。俺が軍師ヒムラだ。」
とりあえずシネマの反乱軍に対して説得を開始する。
だが、
「あいつが…。」
「シネマを属国にしたとかいう…。」
まあ印象は最悪だ。
まあ確かに属国にしたとも取れる条約を結んだしな。
ユソリナに文句を言いたい気持ちを抑え、
「シネマがクロノオの属国になったとも取れる条約を結んだのは事実だ。結んでのはうちの部下だが、それでも責任は俺にある。」
「…なら、さっさと条約を破棄しろ!」
「そうだそうだ!」
「だが、俺はシネマを属国にした覚えはないし、そのつもりもない。事実、シネマとクロノオが結んだのは友好条約だ。」
「なっ…!」
「…。」
俺の言葉に、唖然とする一同。
まあ解釈を変えてうまく誤魔化すのはよく前世の政治家がやることだ。
俺もシネマ側なら不満だっただろう。
もしクロノオがシネマと上部だけの付き合いをするのであれば、ここで言葉を切ってもよかった。
だが、彼らとはしっかりと付き合っていきたい。
だから俺は言葉を紡ぐ。
しっかりと納得してもらえるように。
「だが、君たちはそんな言葉では納得しない筈だ。」
「…っああ、そうだ!」
「誤魔化すな!」
「なら今一度教えてほしい。なぜ俺たちを敵視する。なぜクロノオの属国になることを嫌う。」
理由をきくと、やはり彼らは憤り、
「それは、シネマがクロノオの下につくことになるんだぞ!」
「祖国を属国にされて、嫌がらない奴がいるか!」
「クロノオを第二の祖国とする。これは認められないのか?」
「認められるわけがないだろう!」
「そもそも、クロノオがどんな国かも俺たちは知らない!」
彼らの言うことは最もである。
クロノオとは半年前は戦争をしていた中だ。
認められないのは当たり前だし、得体の知れない国と思われても仕方がない。
だが、だからこそ彼らにはわかってもらいたい。
俺が、軍部が、クロノオがシネマとの共存を望んでいるのだと。
ただシネマにあゆみよろうとしている国なのだと。
「クロノオがどんな国か知らないのなら、知ってもらいたい。クロノオを祖国として認められないのなら、認めてほしい。」
「そんなのは横暴だ!」
「俺たちを無理やり従わせようってのか!」
「違う!俺は君たちに強制をしない!ただ見てほしいだけだ。クロノオが安全で、シネマとの共存を望んでこの条約を結んだのだと!」
そこまで俺は言い切り、
「パラモンド!」
「ハッ!」
「シネマをクロノオの属国とする。異論は?」
「ありませんとも。」
「おい!」
「正式にしやがって!」
「シネマを無理やり従わせるんじゃない!」
「違う!俺はシネマに強制はしない!もちろん属国になりたくないというならばそれを俺たちは甘んじて受け入れよう。だが、それもクロノオについて知ってもらってからだ。シネマがクロノオの属国となることでさらにクロノオの影響が広まる。君達みたいな人たちにも必ず利益が渡るだろう。それで判断をしてほしい。クロノオが邪悪か、そうでないかを!」
「…でもよ、」
「…。」
「もちろん今は受け入れてもらえなくたっていい。だが、純粋な目でクロノオを見てほしい。俺の願いはただそれだけだ。」
強制なんてしない。
ただ、クロノオはシネマの味方だ。
俺はパラモンドやカスタル王を気に入っているし、シネマと貿易をすることで得られる利益は大きい。
今やクロノオにはなくてはならない国なのだ。
それに、
「悪魔の国、デトミノ。」
呟いたその国は、俺が最も興味を持っている国の一つ。
おそらくは浮いた島にたどり着くためには避けては通れない国となるだろうからな。
とりあえず国境だけでも接して警戒をしておきたいのだ。
そして、
「皆の者!ヒムラ様のご考えに異論はあるか!」
パラモンドが反乱軍に問いかける。
彼らは皆一様に考えるようにうなだれて、
「…あります。ですが、今は受け入れます。パラモンド様、シネマに対してまで迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。」
「ふむ。よかろう。」
先ほどから俺にむかってヤジを飛ばしていたシネマ反乱軍の一人が、パラモンドに対して跪く。
まあ、とりあえず今はこれでいいだろう。
うまくシネマ反乱軍を説得し、エレメントの思惑を阻止した。
属国に関しての条約はまた今度ユソリナを連れて話し合うとしよう。
俺はもう夜に差し掛かろうとしている空を見上げて、
「他の皆はうまくやっているかな?」
では、改めて、
『神速の軍師』がブグマ100を達成しました!
どうやらブグマ100が底辺作家かそうでないかのボーダーと言われているらしく、それを超えることができたのは純粋に嬉しいです。
心持ちは今までと変わらず、これからもこの作品を書いていくので、できれば長くお付き合いください。
さて、ブグマ100記念として
①『神速の軍師』のSSを投稿する予定です。おそらく明日には投稿できているでしょう。
②みてみんの登録が終わり次第、ヒムラのイメージ画像を投稿する予定です。画力には期待しないでください。
というのをやろうと思います。
ぜひ楽しんでいただけたら幸いです!
おそらくブクマ100越えた次の目標は、感想をもらうことですかね笑笑
まあおそらくこの物語が本当に盛り上がるのが3章からなので、そこでもらえればなと思っております。
この作品が少しでもいいと思ったら、ブクマと評価と感想とレビューをよろしくお願いします。
追記 一章23、24話の誤字報告をしてくださった方、ありがとうございます!