招待状が届く
シリーズとしては、2作目です!
異世界で恋愛ものとなっています(。・ω・)ノ
ただし、転移・転生とかではないのでご注意を。
ある国の牧場での出来事・・・
「ちょ、あの、私に近づかないで-----!!!」
茶髪に髪と同じ色の目をした女の子が絶叫しながら走っていた。
青ざめながら走って逃げる私を追う一人の王子。
このお方は、この国の第一王子であるレオン・ライナーツ。
「待ってくれ。私の可愛い子羊」
馬で颯爽とかける金髪碧眼の王子様。
金髪は、風に吹かれてサラリとなびき、碧い目は、宝石のようといわれている。この姿を見ると誰もがほぅと息をつくことだろう。
「子羊じゃないですしぃ!!なんで、なんでここにいるんですかっ!?」
はあはあ、息がっっ。あっちは、馬なのでもうあいつは、追いついてきた。
「何故って・・・君のことを愛しているからさっ!」
キメキメにいう。
あ-本当にもうっ!!
この人は、私のことを愛してるんじゃない。
自分のことしか愛せない人間なのだから。
遡ること2週間前。
一通の招待状が届いたのが全ての始まり。
我がクロウド家の家事を請け負ってくれている、メイドのメアリが受け取ったところ、差出人はこの国の国王。
メアリは大層驚き、急いで、私の父様と母様に知らせに行ったそうな。
「この国の国王だと・・・!それは、本当かメアリ・スミス」
メアリは、勤めて冷静に事実を述べ、封筒を差し出す。
「本当でございます。当主様、これを」
私の父で、現当主であるアルバートが封筒を受け取ると、差出人は国王。隣で見ていた母が「まぁ!」と声を上げる。
メアリからナイフを受け取ると、丁寧に封筒の側面を切っていく。
中身の手紙を取りだすと、そこに書かれていたのは・・・
夕食の時間。父様と母様はもう席に着いていた。
「いつもよりはやいのね、父様」
当主である父は、領地の経営のため、目まぐるしい日々を送っている。
なので、皆揃っての食事は久しぶりのことだ。
「ああ、大事な話があるんだ」
「大事な話・・・ですか?」
「そうよ。さぁ、座ってちょうだい」
母様がそう言うと、側で控えていたメイドのメアリが、椅子を引いてくれる。
何の話だろうと疑問を感じていると、メアリがにこやかに笑いかけてくれたので良い話だと予想がつく。
う-ん、良いこと、かぁ。
ここの領地は、牧場だらけ。
領民のほとんどが、牧場を営んでいる。
中でも私の家は、特段広い牧場を持っていることで有名だ。
羊50頭、馬30頭、牛70頭が私の家の牧場には住んでいて、羊の世話は私の役目。
今までは、手伝うことしかできなかったのだが、やっと1ヵ月前、役目を任せてもらえるようになったのだ。
馬と牛は、プロの使用人が世話をしてくれている。
あ、そういえば、馬のリリ-が子馬をうむとかいっていたわね。
その事かしら?
「大事な話は、食事が終わってからにしよう。驚いて食事が喉を通らなかったら困るからね」
そう言って、はははと笑う。
父様、今日はなんだか上機嫌ね-。
つまらないジョ-クを言うくらいには。
「今日は、何をしていたの?」
母様がいつもどおりのことを聞く。
「え-と、朝から羊の世話をしていたわ。昼には、ほら、母様の作ってくれたサンドウィッチを夢の丘で食べたわ。イルとアルドとで」
イルとアルドは、私の友達。イルは白髪に赤い目の美人さんで優しいのよ。
女の私でもドキッとする時がある素敵な女の子。
アルドは、燃えるような赤髪に赤目でリ-ダ-シップの強い元気な男の子。
イルとアルドは、幼馴染でとても仲が良い。
アルドに振り回されがちな優しいイル。
最初に知りあったのは、イルとだけど、アルドも混じって遊ぶようになったんだっけ。
「あら、素敵ね-」
「夢の丘?」
父様が不思議に呟く。
「あぁ、父様は知らなかったわね」
私は、窓の外を指さして
「あそこに羊小屋があるでしょ。その裏手に小さな丘があったから、そこを夢の丘と呼んで、よく行っているの」
登って、見下ろすと、見渡す限りの緑の草原がさぁぁぁと広がって幻想的な雰囲気と思ったから、イルと相談して「夢の丘」と名付けたの。
アルドは興味がないみたいで、丘は丘だろ?と普通に丘と言っている。
「ほう、そんな所に丘があったとは」
はい、お父さんもアルド派決定~!
丘のあるなしにしか興味ないみたい。
どんな景色?とかあるでしょ、まぁいいや。
多分興味がないから聞かないんだろうなって分かるし。
「そうそう、母様、サンドウィッチ美味しかったわ!イルとアルドも美味しいって言っていたわ」
「そう?嬉しいわぁー、また張り切って作ろうかしら」
嬉しそうに次のことを考えている。
私は、最後の一口を飲むと「ごちそうさまでした」と言って、食事を終わらせる。
父様と母様も私より先に食べ終わっていたので、もう聞いていいかな?
「ずっと気になっていたんだけど、大事な話って、何?」
ドキドキしながら、父様と母様に尋ねる。
待ち切れずに、母様がいう。
「招待状がとどいたのよ~」
「招待状?」
え、馬のリリ-のことじゃないの?
「そうだ。だから、明日王都へ向かわなければならない」
明日?急に王都へ向かわなければなんて、どういうこと?
明日って確か・・・王都で王子の誕生祭が盛大に行われるとか何とかって噂になってた気がするけど、そのことが関係しているのだろうか。
「第一王子の誕生祭が明日、行われるのは知っているな」
私が軽く頷くと、父様は話を続ける。
「誕生祭は毎年行われるのだが、今年は例外なことが1つある」
国王のときは、確か、15歳の成人式と誕生祭をまとめて行っていたと家庭教師が言っていた。
「15歳の成人式と誕生祭をまとめて執り行うのだったかしら」
「そうだ。さすが私の娘だ」
親バカはいいです!
「その誕生祭に各地から様々な貴族が集まる。欠席は出来ない。国王陛下直々のご命令だからな。背いたとすれば・・・」
ゴクリ
「要すれば参加すればいいってことよ、いい男捕まえて来なさい!」
「いい男・・・?」
どういうこと?
「このパ-ティ-をする目的は、王子の婚約者探しなのよ。だから、あなたも見つけて来なさい。運命の人を!」
母様、迫力がすごいです。圧を感じる。
ほら、父様の方を見てください。若干、引いていますよ?
「ま、まだいいんじゃないか?成人したと言っても、まだ15歳だぞ」
「何言っているんですか!?男のあなたには理解できないと思うけれど、女の命は花のように短いんですよ」
とか何とか。
私のことで、言い争うのは止めてください。
もう、夜遅いんですから、明日に備えて寝ようよ-。
女の命も大切だけど、夜更かしも美容の大敵とか言ってたじゃないですか。
まぁ、ただ私がはやく寝たいだけなのだけれど。
そうして、クロウド家の夜は更けていった。
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読んでくれてありがとうございました!