026 武器の魔力量
街への襲撃が片付いたと判断した後、宿屋の千尋達の部屋に集まる四人。
シャワーを浴びて着替えを済ませてから集まった。
紅茶を淹れるのは千尋。
今日何もしてないからー! との事だ。
ソファに腰掛け、ミリーは蒼真の傷をまた回復している。
完全回復させる為だ。
「千尋、オレの刀の付与魔法を解除してくれ」
「その方が良さそうだねー」
薄々蒼真の刀の付与魔法に気付いていた千尋。
「蒼真さんの刀って何をエンチャントしてたんですか?」
三人とも刀の付与魔法の内容を知らない。
「…… 魔石の魔力分までしか出力できない」
「ええ!? そんな事したら…… んん? どうなるんですか!?」
「刀から発する魔法の威力が落ちるわね」
「蒼真に渡した魔石の魔力は300だからねー」
「よくそんな制限付けて魔族と戦えたわね」
心底驚くリゼ。
「ランの風魔法もあって威力が高すぎたからな。まぁ制限付けても魔族とも戦えるくらいには使える。騎士のミスリル剣よりはだいぶ良い」
王国騎士団との訓練でいろいろと試させて貰った蒼真。
聖騎士から借りたミスリル剣での剣術訓練。
刀とはまた違った剣の扱いに、蒼真もいろいろと学ぶ事があったそうだ。
そしてダルクの希望で蒼真の魔法講義が行われ、最初は聖騎士十二名相手の講義だったのだが、レミリアからの進言で魔術師団も参加する事となった。
始めてから一週間後には他の訓練所からも集まった三百人を超える生徒? に講義をしている蒼真だった。
場所も訓練所の一室では足りなくなり、広い会議室で行われるようになった。
蒼真の講義を受けるたびに魔法の威力が上がる為、誰もが真剣に講義を受けていたようだ。
「そうなんですか。初めて持った武器がこれですからね…… 普通の武器というのがわかりません!」
「私が使ってたスタッフは魔木とミスリルを組み合わせた一級品の魔杖だったけど、ルシファーを持ってしまうとあれはただの棒ね」
「一級品…… ピンときませんね。お値段で言うといくらですか?」
「7,500万リラよ」
「高っ! それが棒扱いですか!?」
「それでも精霊の器としては魔杖は必須だし、ミスリルも組んであるから制御もしやすくて良かったのよ」
「騎士の直剣を借りてみたがオレの刀より扱い易かったな。魔力の流れが軽かった」
「蒼真のはちょっと特別だからね…… 少し改良する?」
「改良? どうするんだ?」
「柄を魔力の流れやすい素材に変えるとかー。まぁ精霊居ないと魔力は抜けちゃうけどね!」
「それなら今のままでいい。兼元にも慣れたし問題はないからな」
「それじゃ他の能力をエンチャントする?」
「そうだな。何か考える」
「魔石もこっち使いなよ!」
直径3センチほどの魔石。魔力量2,000ガルドの魔石を蒼真に渡す。
解除用に300ガルドの魔石も渡しておく。
「千尋、ミリーのも別の条件にしてあげたら?」
「そうだね。地属性使えるなら振動も相殺できるだろうしねっ。ミリーのは何にする?」
「急に聞かれてもわかりません!」
「魔力を他属性に変換するとか」
「戦い方変わるね」
「魔力の溜めれる量を増やしてみたらどう?」
「威力は上がりそうよね」
「ど…… どれくらいなるんですか?」
「んー、正確に数値化はできないけどオレの感覚測定で言えばミルニルはだいたい魔力量3,000ガルド程溜めれるね。魔石の大きいの使えば5,000くらいまで溜めれるようになるよ」
「感覚測定…… また妙な事を言いだしましたね。魔力量を上げるかどうかはしばらく考えてみます」
千尋は魔力球を複数作る事ができるうえ、魔力量も一定にコントロールしている。
魔石を作る際には最も作りやすい魔力量が300ガルド。完璧に300ガルドの魔石を作る事が可能だ。
千尋はそこから感覚のみで魔力量を測定する事を可能とする。
「そうだねー。耐震も外すと魔法で補う必要あるし、良いのが思いつくまでそのままでいいかも」
「ところで千尋さん。私のミルニルはわかりましたけど、リゼさんや蒼真さんの武器はどれくらい魔力が溜められるんですか?」
「えーとねぇ、リゼのルシファーは先端のから1,000と500、三つ目からは250くらいかなー。兼元はわからん」
「ほえ? わからないんですか?」
「作ってからしばらく触ってないからね!」
「んー、オレも感覚だが4,000ガルド程溜めれるな」
蒼真は刀のエンチャント、魔石の魔力分までしか出力できない事を感覚でつかみ、兼元内にある魔力の総量から判断した。
「なるほど! なんかリゼさんのが低いですけどあの強さは何なんですかね?」
「あの刃二十個あるんだよ? ルシファーの大きさもあって全部で6,000にもなる」
「そう考えると私のが低いですね……」
「あくまでも溜め込める量だ。常にそんなに放出してるわけないだろう」
「私は刃一つにたぶん100ガルドも乗せてないわよ? 攻撃の瞬間に当たった部分に魔力集めるだけだし」
「オレのベルゼブブはエンチャント外せば0だよ」
「千尋さんは魔剣作らなくて良いんですか?」
「ミスリルの剣はレオナルドから二本貰ったよー。レーヴァテインとケリュケイオンのお礼にって装飾された一級品をね!」
「魔剣は必要ないんですか?」
「エンチャントすればいいじゃん」
「ああ…… もうなんかズルいですよね」
「オレの魔法だからズルじゃない!」
千尋はレオナルドの部屋に飾ってあったミスリルの剣を貰ってきた。
自分の作った剣ではないこの世界の剣。
千尋の施す装飾や切れ味に比べれば質は劣るものの、自分では作る事はないデザインが気に入って魅入っていた。
実は魔剣を渡した日にレオナルドの部屋に遊びに行った。
夕食中にロナウドの屋敷を見学したいと言う千尋。
ロナウドだけでなく、レオナルドやレミリアの部屋も見学させてもらった。
その際に千尋はレオナルドの部屋に飾ってある剣を見て目を輝かせていた。
これほどの魔剣を作れるような技術を持つ彼が何故? そう思うレオナルドだったが、千尋は装飾された剣をマジマジと嬉しそうに見ている。
レオナルドはレーヴァテインのお返しにはならないが、と付け加えて千尋が見ていた二本の剣をプレゼントした。
「貰わなくても作れば良かったんじゃないか?」
「そうですよ! すんごいのを!」
「そのうちねー!」
「私が千尋の魔剣を作るわよ!」
「「「マジ(です)か!? 」」」
いずれリゼに作って貰えると喜ぶ千尋。
だんだん昨夜の疲れもあってか眠くなる四人。
一番魔力を消耗しているミリーと、寝不足なリゼは船を漕いでいる。
ミリーと蒼真は部屋に戻って寝ると言い出て行った。
リゼもソファで寝てしまっていた為、千尋がベットに運んで毛布をかける。
時刻は十九時半。
お腹が空いたので食堂へ向かう千尋。
「レイラー。ごはんまだ大丈夫?」
「あら、千尋さんだけ? 今用意するから待っててね」
「オレだけだよー。ありがとっ」
料理がテーブルに並び、食べ始める千尋。
今日の料理はサラダとクリーム系のスープ、肉のソテーと、中はモチッとした表面がカリカリのパン。
冷たいお茶を出してきたところでレイラが向かいの席に着く。
「千尋さん美味しい?」
「うんっ! すごく美味しいよ!」
「やっぱり君は可愛いわねぇ」
「…… 可愛いは男の褒め言葉じゃないよ?」
抗議の目で訴える千尋。
「ふふふ。お姉さんから見たら千尋さんもリゼも可愛いものよ」
「ふーん。そーいうものなのかなー」
「ところでミリーさんから聞いたんだけどね、千尋さんはリゼの事を好きなんだって?」
「うんっ! そうだよー!」
隠す素振りもなく答える千尋。
「じゃあリゼとお付き合いするのかな?」
「リゼねぇ、好きな人いるみたいなんだ…… 困っちゃったよ」
食べるのをやめて真剣に言う千尋。
「…… 誰だかわからないの? 」
不思議に思うレイラ。
リゼの言動はあんなにわかりやすいのに。
「うん。誰だろ」
鈍い千尋を見てリゼが可哀想になる。
「千尋さんという可能性はないの?」
「…… ハッ!! それは考えてなかった!!」
呆れ顔で千尋を見るレイラ。
「よーくリゼの事を思い返してみて」
「むぅ…… んん…… ぬぅ……」
しばらく考えた後に出した答え。
「オレの可能性もあるねっ! よかった!」
またごはんを食べ始めた千尋。
少し不安を覚えつつもまぁ両想いなら問題ないか、とレイラは仕事に戻った。
その後部屋に戻った千尋はシャワーを浴びて、リゼが同じ部屋に寝ている事を気にすることもなく眠りについた。




