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021 魔剣のデザイン

 翌日。


 レオナルドとレミリアを部屋に招き、作る剣とスタッフのデザインの相談をする。


「剣を造るとしたらどんなのがいいの?」


「私は騎士だからね。長年使い込んだ剣だし基本的には今使っている物を元にしてほしい」


「レオナルドの剣を少し貸して貰えるかな?」


 手にとって確認する千尋。

 重さやバランスを体で判断し、寸法を測って紙にメモしていく。


「騎士の剣てオレが思ってたのとは違うね」


「どう思ってたんだい?」


「もっと良い剣だと思ってた」


「ハッキリ言うね…… 聖騎士の持つ剣は名のある切削職人の手によって作られているんだけどね。私は千尋君の造る武器は別次元の物だと思っている」


 ジッと見つめるレオナルド。


「もしかして……レオナルドは気付いてたの?」


「蒼真君の刀に私の魔力が通らなかったからね。ミスリル内に魔力を溜め込んであるのかと思ったわけさ。普通ミスリルの剣は魔力を通しやすい武器だからね。自分の魔力をそのまま剣に乗せる事が出来るのがミスリル素材の良いところだ。しかし魔力を溜め込む事が出来る武器…… どうなるのかなと思ったんだがミリー君の戦いを見てわかったよ。威力を数倍に跳ね上げられているとね」


 自身あり気に言い切るレオナルド。


「うん、ほぼ正解だよ。ミスリル素材には魔力の流れやすい部分と溜め込む部分、そして方向があるんだ。その三つをうまく組み合わせる事がポイントかなー」


「ふむ、初めて聞いたがそれらは調べ方はあるのかい?」


「うーん、感覚…… 直感に近いかも」


 千尋も最初は何となく違和感があった部分を選び出しただけだ。

 開発室の素材選びをしていてたまたま見つけ、蒼真の許可を得てその部分で兼元を作った。


「だとすれば千尋君にしか造れないのも頷けるね」


「ただ蒼真のと同じ魔力を溜め込み続ける剣は造れないよ?」


「それは残念だね……」


「でもレオナルドには蒼真の刀は必要ないよー。蒼真やオレは魔力が低かったから必要だったんだけどね。研究所の素材から一本分だけ見つけたから造れたけどさぁ」


 魔力の溜め込める部分はミスリル素材の中でも数枚に一部分だけに存在する。

 その大きさも一定ではなく、兼元のように1メートル以上の長さはなかなかない。

 ほとんどが小さなものとなるが、その位置が武器の先端にこない限りは魔力の溜まる武器にはならない。


「蒼真君の刀と私に造ってくれる剣での違いは何かな?」


 蒼真の刀は魔力を溜め続ける事ができる。

 刀の魔力を使って魔法を放ったり、手元を離れても強度が落ちないところが優れている。

 しかし魔力の流れが遅い傾向にある。

 魔法の威力を上げるのに相当な魔力の練度が必要との事。

 レオナルドに造る剣はグリップに魔力の流れやすい部分を使う為魔力の流れが速い。

 刀身に魔力を溜め込んで魔法を出せるから蒼真のよりも扱いやすくなる。

 ミリーやリゼの武器がそれにあたると説明した。


「レオナルドは魔力が高いからね。あとは精霊を宿せば魔力が溜まったままになるから手元を離れても強度は落ちないよ」


「精霊?」


 精霊魔術に関しては聖騎士は縁のないもの。

 レオナルドが疑問に思うのも無理はない。


「うん。魔力が溜まるから精霊の器にもなるんだ。契約すれば精霊魔術士になれるよ」


 千尋の頭の上にリクが姿を現わす。


「私も精霊魔術士になれるのかい!?」


 驚きの表情で千尋に問うレオナルド。


「昨夜私はリゼとミリーさんの精霊を見せてもらいました。私のアリアよりも自由な精霊なのが気になりましたね」


 レミリアも精霊魔術士だ。

 名前に反応して出てきたのはシルフだが、ランとは少し見た目も違う。


「うーん? しかし昨日の戦闘では精霊を使ってるようには見えなかったが?」


「オレ達の実力を見せろって事だから精霊は使わなかったんだ。リゼはさすがにリッカとシズクを使ってたけどさ」


「リゼのあの戦闘速度で精霊を使えるのか? 精霊魔術は時間がかかるから後衛職とされているんだが……」


「ミスリルの器なら魔力の流れが速いから普通の魔法と同じように精霊魔法が使えるよー」


「そうなんだ! 剣を頼んだだけのはずが、まさか精霊魔術士になれるとは思いもしなかったよ!」


 驚きと嬉しさがこみ上げてくるレオナルド。

 まだ何も決めてないのに期待が高まる。




 とりあえずデザインを考える。


 サラサラと絵を描き始める千尋。


 五枚の直剣を描き、レオナルドに見せる。

 もっといろいろ描こうと思えば描けるが、ベースが今の直剣だとすればと自分の好みで描き出してみた。


 どれも選び難いと言いながら見る女性陣だったが、レオナルドは一枚の紙を見つめている。


「私はこれが欲しい。一目で気に入った」


 レオナルドが出してきた絵は天使の翼のような形をしたガードがついた剣。

 ヒルトだけではなく、ブレイドにも装飾がある片手用直剣だった。

 カクカクした騎士の直剣とは違いエッジに丸みがあり、かなりファンタジー色の強い直剣だ。

 模様もそのままでいいというので色を決める。




 ある程度話が煮詰まったところでリゼから一つ提案される。


「千尋、私からもお願いがあるの。ロナウド様にも剣を造ってあげられないかしら……」


「おお、リゼもそう思っていたのか。私やレミリアもそれをお願いしたかったんだが、私達の分を頼んでおいてさらにもう一本とはなかなか言い出しにくくてね」


 苦笑いしながら言うレオナルド。


「別に構わないよ。オレが一人で造るわけじゃないしリゼが手伝ってくれるからねー」


 言うとリゼやレオナルド、レミリアも喜んでくれた。


 ロナウドの剣もレオナルドのとデザインは似せて色や装飾を変える事とし、リゼ好みに作る事にした。




 


 レミリアのスタッフの絵を描く前に千尋から一言。


「ミスリルのスタッフを作る意味ってあるのかな? 精霊魔術は時間がかかるから後衛職だったんだろうけど、ミスリルでの精霊魔術なら近接もできるようにした方が良いよねー」


 確かに千尋の言う通りである。

 魔剣は近接でありながら後衛職を上回る威力の魔法、魔術を発動する事ができる為、レミリアの武器も近接を可能な武器とするべきだろう。


 その事を踏まえてレミリアに作る武器を変更する事にした。

 リゼも以前はスタッフを使用していた後衛職。ルシファーを振るうリゼの戦闘は、レミリアにとっても驚くものだった。

 しかし様々な武器がある中で、今まで愛用し続けたスタッフのような形状の武器が最も魔法がイメージしやすいからと、結局スタッフを作る事にした。

 ただ一つ付け加えたのが刃だ。

 スタッフの先端側に刃を設け、近接での戦闘を可能にする。

 ミリーのように爆破で戦う手段もあるが、あれ程連続した爆裂魔法はレミリアには不可能だ。


 刃のついたスタッフの絵を五枚描いて選ぶ事になったが、やはり女性だからだろうか。

 この五枚だけでも一時間以上悩んでいた。


 ミリーのメイスや千尋の銃を見比べ、装飾過多にしてデザイン性を重視するか、メイスのようにシンプルにして宝石のように仕上げるか。

 悩みに悩んだ末、核となる魔力を溜め込む部分はシンプルに、デザイン性を持たせつつも面の多いようにと五枚の絵を全て混ぜ合わせたような注文をしてきた。


 その内容を全て盛り込んだ絵を描いたがバランスが悪い。


 結局千尋がレミリアの要望を踏まえた上でまた三枚描き、それから選ぶ事になった。


 そこから三十分。

 ようやく決まったようだ。


 ニコニコとその様子を見ていたレオナルドも、最後には外の景色を見ていた。






 蒼真とミリーはしばらく暇がある為、騎士に混ざって訓練する事にしてある。ついでに王国の観光もするそうだ。






 夕方にロナウドが部屋を訪れ、工房が完成したと案内される。

 空き部屋に工具やその他を運び込んだのだろうと思われるが、必要な物は全て揃っている。

 研究所の開発室と遜色ないだけの物が準備されていた。

 部屋の中は作業スペースが半分ほど、残り半分はソファやテーブルが置かれ、休憩もここで取れそうだ。


 明日からは武器作りを始める。




本日二話投稿します。

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