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018 聖騎士

 聖騎士長ロナウドが前に立ち、聖騎士は背後に並び、上位騎士は見学席で待機する。


「さて、お主らの事はレオナルドから聞いて知っておる。リゼを研究所から連れて冒険に出たいという事もな。してお主らはレオナルドからはどう話を聞いているんじゃ?」


 腕を組んだロナウドが問いかけてくる。


「リゼを冒険に連れ出すにはロナウドさんの許可が必要だって聞いてるよ。それに力を示せともね」


 同じように腕を組んで答える千尋。


「ふむ、騎士団をも倒してみせるともほざいたくらいだ、それなりの覚悟はできているのだろうな」


「覚悟するのはどっちかな?」


 言い返した千尋に苛立ちを見せる聖騎士達。ロナウドがそれを制止する。


「ちょっと千尋さん! あまり煽らないでくださいよ!」


「聖騎士とやらがそこそこ強い事を期待する」


「蒼真さんまで!?」


 聖騎士を挑発する蒼真。


「威勢がいいな小僧ども。まぁ一人ずつこちらの聖騎士と戦ってもらうとしよう。しかし千尋と言ったか? 貴様の相手は儂じゃ」


「父上!? それはあんまりでは!?」


「ロナウド様!?」


 ロナウドを止めようとするレオナルドとレミリア。

 どよめく聖騎士や上位騎士。


「黙れ! のぅ小僧。儂が相手では不服か?」


「構わないよ。ロナウドさんを倒せば文句はないでしょ?」


「千尋!? ダメよ、相手が悪すぎる! ロナウド様は聖騎士を束ねる聖騎士長なのよ!? 他の騎士達とは実力が違いすぎる!」


 ニヤリとしながら問うロナウドと嬉しそうに答える千尋。

 リゼはロナウドの強さを知っている為止めようとする。


「安心しろ、殺しはしない」


「安心して欲しい。オレも銃は使わない」


「小僧。貴様なめているのか?」


 レオナルドからの報告で千尋の武器の事は聞いている。それを使わないとは生意気な! と睨みを効かせるロナウド。


「いいからオレの相手を用意してくれないか?」


 嘆息しつつ蒼真が挑発する。


「ふん。まぁいい。ではダルク! まずはお前からだ」


 スッと前に出て来た長身の男。

 赤い髪を長く伸ばし、銀色の鎧に赤いマント。直剣を腰に差し、その装いはいかにも聖騎士と言える。


「私でいいのですか? あまり手加減は得意ではないのですが……」


「問題ない。オレが手加減するからな」


「貴様…… 騎士を侮辱する気か!」


 鋭い目を蒼真に向けて怒りを見せる。


「双方闘技場の中央へ行け」


 ロナウドに促されて歩き出す蒼真とダルク。




 向かい合う蒼真とダルク。


 お互いに魔力を練り、まずは小手調べとばかりに踏み出す。

 振りかぶるダルクに対し、蒼真はまだ刀を抜かずに手を添えている。

 振り下ろされるダルクの剣と抜刀する蒼真、交差する剣と刀。

 どちらも打ち負ける事もなく、お互い払い除けて距離を取る。

 再び交錯する刃。

 受け、躱し、互いの隙を窺っている。


「ほほう。なかなかできるようだな」


 ダルクは笑みを浮かべながら斬り込んでいく。

 蒼真は表情を変える事なくダルクの剣を躱し、蒼真の刀をダルクは受ける。


 幾重にも重なる剣戟に見る者も息を飲む。

 切り結ぶ事数分。




「っぐ!!」


 蒼真が押し始めた。

 徐々にスピードを上げていく蒼真の攻撃に、ダルクは受けるのがやっとの状態。

 ダルクの顔からは笑顔が消え、その表情からは必死さが窺える。


「っ舐めるなぁぁあ!!」


 突如ダルクの剣から炎が上がり蒼真を跳ね除ける。

 赤く燃え盛る炎を纏い正眼に構えるダルク。

 ついに本気を出すようだ。


 蒼真も風魔法を発動する。

 ランを呼び出さずに自分の魔法のみで戦うようだ。

 風を纏い、刀を鞘に納める。

 右足を前に、半身になりながら柄に手を添える。


 先に動いたのは蒼真。

 ボッ! という音とともに一瞬で間合いを詰める。

 振り下ろされるダルクの剣と、鞘に収められた刀を抜刀する蒼真の一閃。

 初撃と同様の打ち合い。


 ギィン!! という音とともに何かが舞い、地面に突き刺さる。


 ダルクの剣が中程から折られていた。

 折られていた?

 そうではない。斬り落とされていた。


 ミスリルの剣が斬られた事に驚くダルク。


「まだやるか?」


 その一言に我に返ったダルクは再び魔力を練り始める。

 溜息しつつも刀を振るい、ダルクの首に刀を突き付けると同時に爆風が首元を通り過ぎる。


「わ、私の負けだ…… 」


 蒼真は刀を納めてその場を後にする。






「やるな、あの小僧。ダルク相手に本当に手加減しておるわ……  ふん、まぁいい。次はそこの娘、お前とテイラーだ。行け」


 スッと前に出た長身の女性。

 こちらもダルク同様の装いをし、茶色の髪を頭頂部で結んでいる。


 闘技場中央に向かうミリーは蒼真とのすれ違いざまにハイタッチ。

 力なく項垂れるダルクは、他の騎士によって運ばれていった。






 ミリーが構え、テイラーが魔力を練る。


 そして最初に踏み出したのはテイラー。

 ミリーは基本的に後手に回る事が多いが、狙っているわけではない。

 ただ攻め手がわからないだけだ。

 いつもポーっと相手の出方を伺っている。


 テイラーの横薙ぎの剣をメイスで受け、そこから連撃をひたすら受け続けるミリー。


「うわっわっわっ!! 手加減してくださいよ!」


「それはできない。私がロナウド様から怒られてしまうからな。本気でいかせてもらうぞ!」


 言うとテイラーの剣から炎が放たれる。

 燃え上がる炎が騎士の剣を包み込み、少し離れたミリーにまでその熱を伝える。

 駆け出したテイラーからの右袈裟斬りをメイスで受けるが、先程までとは威力が違う。

 炎とはいえ魔法によって強化された一撃は軽々とミリーを弾き飛ばした。


「痛たたたた……  むぅ。魔獣(モンスター)よりやりにくいですねぇ」


 追い討ちに駆け寄るテイラーの剣に、ミリーはメイスを打ち付ける。

 そのまま爆破でテイラーを剣ごと弾き飛ばした。


 体勢を立て直したテイラーだったが驚きは隠せない。

 剣を見つめるテイラーにミリーは追撃に向かい、テイラーはグッと柄を握りしめてミリーに立ち向かう。

 斬り込むテイラーの剣をミリーは確実に受け止め、炎の剣を爆破で威力を抑え込んでいる。


「爆裂魔法とはな。これ程の使い手を初めて見たぞ」


「そうなんですか? 千尋さんとか普通にできますから何とも思いませんでしたよー」


「あの小僧もできるのか!?」


「種類は違うみたいですけどっねっ!」


 強めの爆破でメイスを打ち込むミリー。

 テイラーはまたも弾き飛ばされ、剣に伝わる振動が手を痺れさせる。


「ぐぅ……  何という威力だ」


「できれば降参してほしいです。ダメですか?」


「ふっ。そう簡単に降参はできないんだ!」


 テイラーは地属性魔法で地面を突き上げる。 が、ミリーが爆破する。


 風魔法でミリーを切り刻もうとしても範囲爆裂魔法で防がれる。


 駆け込んだテイラーの、袈裟に振り下ろされる渾身の一撃。

 飛び込んでの炎と重力魔法での剣戟も、ミリーはメイスに乗せた爆裂魔法でテイラーごと打ち返す。

 弾き飛ばされ転がって行くテイラー。


 起き上がるが力が入らない。

 剣を持つ手が震え、立ち上がろうとする膝がガクガクと笑う。

 すでに立つ事さえままならないテイラーだが、まだ諦めないといった表情をしている。

 まだ挑んでくるならと、ミリーは再び構える。


「もういい。テイラー、お前の負けだ」


 ロナウドを見るテイラー。

 その一言で諦めたのだろう。


「降参だ」


 ミリーは手を差し伸べて回復魔法を使う。

 テイラーの身体が光り、痛みや傷が癒えていく。

 ミリーがヒーラーだという事に気付き、目を見開いて驚く。

 お礼を言い、完敗だと苦笑いするテイラーだった。




「では次は儂の番か。来い、小僧」


「千尋だよー。小僧じゃないし!」


 闘技場の中央へと向かう千尋とロナウド。


 聖騎士長ロナウドはザウス王国最強の騎士。

 楽しみだとばかりに千尋は笑顔を見せる。




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