試作集
〈雛鳥の羽〉
雛鳥の 羽の薄きを 日に透かす
花びらのよに ほの明るきや
◇解説
「hn」の子音により押韻し、短歌の韻律で試作しました。
儚い印象の歌になりました。
「n」の音は包み込むような優しい印象ですね。
「薄き」と「透かす」でも「sk」で韻を踏んでいます。
このように行中やに現れる不完全な押韻を勝手に「挿韻」と読んでいます。
〈櫻〉
透けるような
櫻の花
重なり落ち
敷き詰めらる
◇解説
「sk」の子音により韻を踏み、6音の連続で韻律を作っています。
6音だと3連符が2回続いているようで、リズミカルになる気がします。
「s」も「k」も清らかな響きで、詩に透明感のようなものが出る気がします。
三行目は「ks」と逆転させていますが、冠韻定型詩のルールでは許容しています。
「よう【な】」「は【な】」「かさ【な】り」で挿韻を作っています。
〈氷〉
そっと摘んだ
氷がするり
喉の奥まで
通り過ぎてく
◇解説
こちらは「oo」の連続した母音で冠韻を踏んでいます。
韻律は7音で統一しました。
子音より分かりづらい気がしますが……。
子音では印象をコントロール出来る気がしますが、母音ではボリュームというか、感情の開放感をコントロールしている気がします。
「o」はやや抑制気味な感じがしますね。
「こおり」「とおり」「するり」で挿韻と類韻を使っています。
「r」の音の連続がちょっと艶めかしい感じがしませんか?
〈抱えて〉
残り僅かな 儚い刻と
哭き出しそうな 私のこころ
ぬくもりくれた 貴女の聲を
失くさぬように 抱えてゆくの
◇解説
「nk」の子音で冠韻を踏んでいます。
優しく、かつ切ない印象になる気がします。
韻律は七七で統一しました。
行の後半も「aa」の母音で冠韻を踏んでいます。
行末で極めて微弱な脚韻を踏んでいますが、3行目は無視しています。
これは漢詩の七言絶句に倣っています。