序文
■冠韻定型詩で遊ぼう
●冠韻定型詩について
冠韻とは、詩作において使われる押韻の一種で、ながみゆきとが定義したものす(既にあるものでしたら、ながみの勉強不足です。ごめんなさい)。
完飲の定義は以下の通りです。
「日本語詩の行頭の、連続する2文字の子音または母音を一致させる、頭韻の亜種。2種の子音については逆転しても構わない」
冠韻定型詩を作るにあたってのルールは以下の通りです。
①韻律として、文字数を定形化すること。ただし文字数は問わない。日本の伝統的な韻律である五七五でも、五七五七七でも、七七七五でも、七五七五でもよいし、法則性があるなら例えば六六六六や八八五八というようなものでも構わない。
②押韻には冠韻必ず用いること。その他の押韻については自由に使ってよいが、できるだけ押印構成は意識した方が望ましい。
③押印構成は自由とするが、最低でも一つの連で1回以上韻を反復させること。例えばaabb、abac、aaba、aaaaなどである。
④文語、口語は問わない。
●なぜ冠韻を定義したか
冠韻を定義した理由について、まず英語詩の韻について説明させていただく必要があります。
英語は 子音(c)ー母音(v)ー子音(c) という詩韻閉鎖構造を持つので、韻は以下のように整理されるようです。
(大文字の部分を一致させると韻になります)
頭韻:C v c
類韻(母音韻):c V c
子音韻:c v C
逆韻 (Reverse Rhyme):C V c
Pararhyme:C v C
脚韻:c V C
日本で一般的に韻を踏む、と言った場合、ほとんどが脚韻の事です。
しかし日本語の音は構造上必ず最後に母音で終わりますから、厳密な意味で脚韻を踏むにはかなりの制限があります(不可能ではありません。後述します)
過去、日本でも明治時代に「新しい定型詩を作ろう」ということで、新体詩と呼ばれるものを試行錯誤して作り、脚韻を踏もうとした事もあったようですが、この試みはうまく行かなかったようですぐに廃れていきます。
日本語は脚韻が苦手なのです。
また、近年、ラップの世界で「連続する母音のみを押韻する」という、類員に似た構造の「ライム」が発達しています。
しかしこれは、押韻は存在しているものの、押韻構造や韻律は提携化されておらず、韻を持つ詩としては未完成であるように思われます。
※勿論ウィットに富んだ並々ならぬ技術ではありますし、ラップバトルの世界では非常に画期的であると思っております。
では日本語の詩に韻はないのかというと、万葉集の頃から頭韻は用いられています。
日本語は頭韻とは比較的相性がいいようです。
では日本語で韻を踏む場合は頭韻を使えばいいんだ!
しかしこれも厳密な意味で英語詩に当てはめると、頭韻とは少し違うことがわかります。
日本語詩で頭韻と言った場合、行頭の文字を一致させる事を差す場合が多いようですが、日本語で頭韻を文字単位で使うと、英詩における逆韻にあたります。
英詩における意味で頭韻を使うなら、最初の文字の詩韻が揃っていればいいことになるのですが、それだと韻を踏んでる感じが弱い。
そこで連続する2文字の子音または母音を揃えてみましょうという、のが冠韻という試みです。
●冠韻定型詩の誘い
ルールとして韻を使う詩を作るからには、明治の詩人が頓挫した定型詩……日本語の新体詩の完成を目指してみたくあります。
とは言えそう堅苦しく気負った事がしたいわけではなく、あくまで表現上の実験です。
もし冠韻定型詩を作るのは面白そうだ、やってみようと言う方がいらっしゃいましたら、どしどし作って頂いて、出来ればながみに教えて頂けると幸いです。
是非読みに行かせていただきます。
●参考:日本語で英詩分類の押韻を再現するなら
頭韻:「かわく」「きれい」「こまった」
類韻:「わたし」「なんで」「まよう」
子音韻:「わたす」「おとす」「けなす」(最後の母音を発音しない)
逆韻 :「かたる」「かれた」「かぜ」
パラライム:「かわく」「かさつく」:「さます」「しめす」
脚韻:「きれい」「ちめい」:「こくう」「そつう」:「かわく」「くだく」
冠韻(子音):「さくら」「すきとおる」
冠韻(子音逆転):「さくら」「かさなる」
冠韻(母音):「おかしい」「こがれる」「とばない」
▼子音韻
子音韻は、必ず文字に母音がセットである日本語の音では不可能に思える。ただし、「く、す、つ、ふ」と「ん」に関しては、実際の発音として「ku、su、tu、fu」ではなく、「k、s、t、f」と発音している事も多い。また、「ん」には母音が存在しない。そのため、「く、す、つ、ふ」「ん」で終わる言葉なら子音韻が成立しているとしてもよい。
▼パラライム
子音韻と同様に、単語の頭が「k、s、t、f」の子音で始まり、それぞれ「く、す、つ、ふ」で終わる言葉ならパラライムが成立しているとしてもよい。
▼脚韻
英語の母音構造と、擬似的に同様の構造を持つ単語は厳密な意味でも脚韻が成立する。それは単語の末尾が母音か「ん」で終了する場合、および、さらにそこに「く、す、つ、ふ、ん」が続く場合である。
「kirei」「tikei」、「sunao」「egao」、「goen」「yogen」
ただし、これらのうち「n」「i」で終わるもの以外は厳密な意味では脚韻のうちの「サブトラクティブライム」に当たるので、完全な脚韻より強度は落ちると思われます。
※「i」は擬似的に「y」の代用になる