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第一話

性懲りもなく勢いで書いております。

プロットを書けとあれほど(ry

「エリカ・ハンヘイム!! 貴様のような悪逆非道の女をこの国の王妃には出来ぬ!! よってこの場を持って貴様との婚約を破棄させてもらう!!」


大多数が集い各々に楽しんでおり、懇談している舞踏会が一人の怒鳴り声で喧噪が鳴り止む。

その原因とも呼べるのが中央のダンスホールで複数人を連れて一人の女性を囲むようにしていた。

その囲まれている女性ことエリカ・ハンヘイムは長い黒髪を纏め、スレンダーな体格と佇まいには気品すら感じるのだが、その瞳は冷ややかで些か人間味があるとは思えないものだった。


「はて、何故でしょうか? 私が何か致しましたでしょうか?」

「とぼけても無駄ですよ姉上!!」

「お前の罪状は既に明白だ!!」


エリカは表情を微動だにさせずに首を傾げたが、後ろに控えていたインテリ風の男が眼鏡を指で押し上げ、スポーツマンのようにガッチリとした体格の軍服姿の男が得意気に糾弾していた。

インテリ風の男はエリカの弟にして宰相の息子、スポーツマン軍服男はこの国一番の騎士団の団長の息子、その他にも様々な貴族の子息達がエリカ一人に対して侮蔑した表情をしており、その筆頭とも呼べるのがエリカの婚約者であるジョン・アルタニア第一王子であった。

ジョンは後ろに赤い髪の儚げな少女を庇うようにして立っており、赤髪の少女はエリカを見ておどおどしており、目には涙を浮かべていた。


「お前はここにいるアリスティアを容赦なく苛め、果てには階段から突き落とし亡き者にしようと企んだ罪がある!! よって法に則り貴様を罪人として捕縛する!!」

「………」


ジョンは隠し持っていた壊れたノートと教科書に鞄、様々な下位貴族の証言をエリカに突き付けた後、周りにいた貴族子息に命令してエリカを捕縛した。

その時は何の抵抗もしなかったので、てっきり罪を認めたものだと確信し、更にざわめきを立たせては明日にはこの噂で持ちきりになるだろうと皆が囁きあっていた。

エリカがこの場から連行される際、ただ一人ほくそ笑んでいた事はこの時誰も知る由はなかった。





この翌日、エリカ・ハンヘイム公爵令嬢は正式に糾弾され、婚約破棄後は離宮にある高い塔の頂上に投獄され、ハンヘイム公爵家は取り潰し、アリスティアの実家であるランカスター男爵家が異例の公爵家へ昇格し、宰相職に就任する事になり、公式にアリスティアとジョンとの婚約が決定した。

この泥沼劇は民にも直ぐに広まり、面白おかしく伝わるのであった。

斯くして不遇の人生を歩んでいた男爵令嬢アリスティア・ランカスターは未来の王妃として幸せな未来が確約されたのであった。




そして数週間経ったある日の真夜中。

王城のもう使われていない裏口の門の前には黒ずくめの服装を身に付けた男達がぞろぞろと集まっていた。

目元まで隠れたそれらに各々が持っていた武器は王国の正式な武器ではないので、到底真っ当な人間には思えない。

さらにその足元には見張りとして配置されていた男達の無惨な骸が転げ落ちており、明らかに不意を突かれて無抵抗のまま殺されたようであった。


「全く骨がねぇなぁ?」

「お頭に掛かれば王国の兵士なんざ一捻りでさぁな!!」


一際大きな男が片手で掴んでいた兵士の首を捻り骨を折り曲げると、そのままゴミのように投げ捨てては退屈そうに首を鳴らしていた。

その姿を見て配下の男達は愉快そうに笑っていたが、相変わらずお頭と呼ばれた男は退屈していた。

と言うよりも本来の目的は殺しではない。

城内を素早く制圧し、見目麗しい貴族の女を犯して金銀財宝を奪い取って夜が明けきらぬ内に王都から逃げ出す算段である。

その内の貴族の女性に自分の自慢の“一物”をたっぷりと味合わせてヒィヒィと鳴かせてやろうと今か今かと扉が内側から開くのを待っていた。


「…お頭」

「おう」


すると数分もしない内に内側からノックが聞こえると、そこの近くに控えていた男がお頭に声を掛けると周りは一気に緊張感で張り詰めた。

扉の前にいた配下の男がノックをし返すと鈍い金属の音が小さく鳴った後、扉が軋む音と共に中から一人の女性が出てきた。

薄汚いローブに身を包んではいるが、華奢で小さな体つきは一目瞭然である。


「“お務め”ご苦労なこったな? アリスティア」


お頭が口を開くとローブのフードを脱いで顔を出したのは未来の王妃としてこの前王子と婚約を果たしたばかりのあのアリスティア・ランカスターであった。

いつもは儚げで優しい笑みを浮かべる彼女であるが、今の表情は誰よりもほの暗く冷たい眼差しをお頭に向けており、あのエリカよりも人間味のなく悪鬼のように憎悪に満ちた表情になっていた。


「早く入りな。 誰が見てるか分からないんだ。 さっさと押し込んで仕事を終わらせるんだよ」

「へっ、一丁前に言いやがる。 流石この国の王妃様になる奴は振る舞い方が違ぇな!!」

扉を開けて周囲を見渡しながらアリスティアは警戒していた。

折角ここまで来て最後の仕上げという時にミスを犯してしまえば全てが水泡に帰すからだ。

しかしお頭は宝物庫と女人へと繋ぐ扉が開いて慢心しているのか手下もろともへらへらと笑っており、アリスティアを軽く弄った。

このお頭こと“猪熊のグリズ”の元で働き始めてからアリスティアは一度もこの男に敬意を持った事はなく、むしろ侮蔑していた。

しかしアリスティアにとってはこのグリズは切っても切れぬ存在なのであった。


「さて冗談もそこまでにして急いで終わらせるぞ」


グリズ率いる盗賊一味はただの盗賊ではない。

山賊上がりの者もいれば様々な事情故に国に追われた兵士や騎士、果てには冒険者崩れなど様々な職種の人間が集まって出来た一味故、異様に戦闘力が高く並大抵の兵隊では勝てない存在になっていた。

それ故に今回の王城への押し込みは何処から来たか分からぬ自信と慢心をアリスティアが焚き付けた計画であった。

闇夜の中をグリズ達盗賊一味が素早い動きで中庭まで移動すると配下の各々が事前に打ち合わせした通りの配置に付いた。


「さぁ…仕事の始まりだ!!」


グリズの号令と共に配下が一斉に扉を開けて仕事を始めようとした、その時である。


「おいおい、ここは蛆虫が入るような場所じゃあねぇぞ?」


扉を開けたと同時に何処から湧いたか騎士達がうじゃうじゃと中から現れた。

その先頭に立つ女にアリスティアは目を疑った。

そこにいたのはついこの間まで自分が罠にかけて次期王妃の座から引き摺り下ろした女エリカ・ハンヘイムの姿であった。

今はあの時来ていた華美なドレスではなく黒く上級軍服の姿をしており、それは隊長格ではないと身に付ける事を許されない代物であった。

しかも更に驚いたのは、あの人間味のない表情をいつもしていたエリカが今では不敵に笑みを浮かべており、まるでグリズとアリスティアを待ち構えていたかのように振る舞った。

否、待ち構えていたのである。

アリスティアがエリカを王太子の婚約者の座から引き摺り下ろそうとして策略を仕掛ける以前よりもエリカはアリスティアの素性を知っており、わざと罠に引っ掛かったのだ。


「お前…何者だ!!」


グリズが敵意と殺意を剥き出しにしながら腰に差していたカトラスを抜き出すと配下がそれに続き、騎士達も次々と抜刀する。

最後の最後まで抜かなかったのは目の前に立ちはだかっていたエリカだけで、表情を変えずに剣の柄に手を掛けた。


「特別機動騎士隊エリカ・ハンヘイム。 お前ら外道を切る地獄の鬼よ」

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