表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/40

第七話

長い廊下を進んで行く。

四人で。

沙羅、青龍、玄武、朱雀。

廊下から見える庭ではかすみがかった中に誰か、居る。

「あれ…」

「ああ…」

青龍は前を歩く沙羅に近づき、話した。

「あれは、これから……そうだな、あと二千年くらいしたら…人によっちゃあ四千年くらいか。俺達が死んだ後に四神となる奴らだ」

「え…?」

「四神は神だが、永遠じゃない。残念ながら寿命もあるんだ」

「そう…なの」

予想外だった。神様は生きて…それでみんなを守っていてくれると思っていた。

それが…

「どうした?黙り込んで」

「ひどい話ね…」

「ん?」

「もう…自分が神様になった時には次が決まっているなんて…」

すると、青龍は他の二人に聞こえないように言った。

「そうでもない…俺達が神になった理由ってのはちゃんとあるんだ」

「理由?」

「ああ」

「それって…」

「また…今度教えてやる」

「意地悪」

沙羅はぷうっと頬を膨らませた。

「何やってる?着いたぞ」

玄武の言葉に、沙羅は身を強張らせた。

一番奥の部屋。

障子の入口の右には龍。左に虎。上に亀。そして、床には鳥が描かれていた。

「きたか」

奥から声だけが響いた。

「入れ」

青龍は何のためらいもなく開けた。

「やっと来たか。随分待ったぞ」

「すまんの。井戸端会議が続いてしまってのう」

「そんなことはどうでもいい。玄武のおうも待ちくたびれているぞ」

「遅せーぞ、沙羅」

中央の一段高い所に座った審神と思われる男性の真下に、純は座っていた。

「純…!」

「いやいや…随分と愛らしい媛だこと…青龍は見る目があるな」

審神はニヤリと笑った。

「それにしても、朱雀、白虎、早く気づいて欲しいものだな」

すると、背後のすだれから一人の少年が現れた。

「どうでしょう。本人は気づかない方が幸せかもしれませんよ」

その少年の年齢は青龍と同じくらいに見えた。

短い髪はぎりぎりで結ってあった。

「何が。本当は気づいて欲しいんだろ」

青龍は白虎を馬鹿にした。

すると、白虎はふふっ…と笑って見せた。

「そうですねぇ…何となく気づいてほしいでくけど…現代にも行きたいし」

「この野郎…」

「いい加減になさい」

落ち着いた声が二人に掛かる。

「ほんっと。見苦しいったら」

朱雀も審神に同意した。

そうして、沙羅に純の隣に座るように促した。

沙羅はゆっくりと座布団に腰を落ち着けた。

それを見計らった後、四神はその正面に腰を下ろした。

「さて…やっと本題に入れるな」

上座にあぐらをかいていた審神は、正座に直した後で言った。

「二人ほど…媛とおうが足りないが…まあいいか」

その言葉にあと二人、人間がいることを悟った。

「そなた達も聞いているな?我々の役目を」

「えっと…この神界と人間界を守れって話ですか?」

沙羅は先ほど青龍から聞いた話を思い出す。

「ああ。その通りだ。さて、ここからが問題…」

審神は考えるように腕を組んだ。

「その神擬かみもどき等をどう処理するかが問題な訳だ」

「処理…」

「そうだ。……これからそいつ等に狙われる可能性が高くなるな」

「なん…?」

純の表情が曇った。

意味の理解できない沙羅は純に訝しそうな顔を向けた。

「どう考えても、俺達は邪魔だって事だろ」

「邪魔?」

神擬かみもどきは分かってるって事だろ?俺達が自分の中の四神に気づいた。と、言うことはその俺達がそいつ等を殺そうとする。だったら、俺達がいなければ四神は霊体でも現代に出てくることができない。じゃあ俺達、四神のあるじを殺しちまえって寸法だろ」

「……っ」

純の読みは当たるだろうと玄武は低い声でうなった。

「もちろんそんな事にはさせない。だが、朱雀と白虎のあるじがまだ気づいていない。二人は夢でも自分の存在を気づかせないからな…」

「え…?」

沙羅は思わす驚いた声を上げた。

「四神って、必ず夢に出てくるものじゃないの?」

「ああ。自分の主に気づいて欲しい奴だけが夢に現れる。こいつらが何で夢に出て行かないのかは明白だけどな」

青龍はそういって二人を指さした。

「どうして夢に出ないんですか?」

純は朱雀と白虎に向かって言った。

すると、朱雀の方が早く口を開いた。

「やっぱり巻き込みたくないのよ。大切な人をね…危ない目に合わせたくないの」

「これ以上人が傷つく所を見たくないんですよ…」

続けて白虎が言った。

「いいですか?神界でも傷つくことがあるんですよ。そして、その傷はそのまま現代に帰ったときに残る…分かりますか?神界こっちで死んだらもう二度と人間界あっちには戻れないってことですよ」

「――――っ」

二人は絶句した。

「これは夢じゃありません。どうします?そこまで危険を犯してでも神界ここ人間界あそこを守るって言えますか?」

二人は黙って俯いた。

予想外な事を強いられてしまった。

沙羅は考えた。

これからのことを。

人間界を救うと言うことは、世界を救うこと。

無理だ…

正直言って無理だ。

それでも…


「やります」


四神と審神、純は沙羅の言葉に顔を上げた。

「私、やります。頼りないかもしれないけど…っ…でも…」

沙羅は恥ずかしそうに自分の長い髪を右手で透いた。

「助けてくれるよね…青龍」

彼女は青龍を真っ直ぐ見つめた。

青龍は優しく微笑んで沙羅を見つめ返した。

「ああ」

「さあ、お前はどうじゃ?純。無理にとは言わんぞ」

すると、純は苦笑いした。

「沙羅がやるって言ってんのに俺だけ逃げられんねーよ…」

そして、自分の髪をくしゃっと掻き上げた。

「有り難う…純」

「おう」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ