第五話
沙羅が力強く言うと青龍は満足そうに笑った。
「有難う」
すると、それを見かねたように声がかかる。
「やっと来たんじゃな」
「ああ、玄武」
玄武と呼ばれた人は、少年と言うよりは、青年。年齢は二十歳くらいに見える。
身なりは青龍と殆ど同じで、着物の色は黒だった。
髪は銀髪。肩くらいまでで、そのまま放っておいてある。
「あ…えっと…」
沙羅が戸惑っていると、玄武が言った。
「おお。紹介が遅れたな」
玄武は屈託なく笑った。
「私は玄武じゃ。そうじゃの…外見はそんなに変わらんが、生きている年数は千年ぐらい長いんじゃぞ」
そう言って、声を上げて笑った。
見た目の割に言葉遣いが古いので、拍子抜けする。
すると、今まで個人で遊んでいた子供達は玄武に寄ってきた。
「げんぶさまーっ」
「きょーはなんのごよう?」
青龍には見向きもしなかった子供達は、皆、着物にみを包んでいた。
ある子は蝶柄の。また、ある子は花柄の華やかな着物を着ていた。
「皆元気だったか?」
優しく問いかけると子供は嬉しそうに笑った。
「うん!げんぶさまがまもっててくださるから!」
「そうか。よかった。しっかり勉強するんだぞ」
「うん」
その時、一番年上と思われる少年が玄武に寄ってきた。
年は十五くらいに見える。
「玄武様」
「おお、琥珀。久しぶりだな」
「もうすぐ私も出霊です」
「そうか…頑張ったな」
「ありがとうございます」
少年は深々と頭を下げた。
そして、玄武は二人と向き直った。
「そろそろ行くとするかの?」
「行くって…何処にですか?」
「審神様がお待ちじゃ」
そう言って玄武は歩き出した。
「え…っと…審神様って?」
沙羅は青龍に尋ねた。
「この世の全てを決断される方だ。お前が俺の主として相応しいかどうかの審判者だ」
「相応しい…」
沙羅が不安げに俯くと、青龍は沙羅の右手を優しく握った。
「青…龍?」
「大丈夫だ。俺が選んだ人間なんだから」
「うん」